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日本代表・児玉健太郎、「ハイボール」を長所に…。ベン・スミスとも特訓。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
大きなストライド。この春はファッション誌にも登場。(写真:アフロスポーツ)

ラグビー日本代表は5月28日、東京・秩父宮ラグビー場で香港代表とのアジアラグビーチャンピオンシップ最終戦をおこなう。ここまで全勝した3試合で7トライを決めた児玉健太郎が、27日、前日練習を終えた試合会場で取材対応。「ハイボールキャッチを強みに」と、今後の指針を明かした。

今回のチームには、昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げたメンバーは含まれていない。若手中心のチームを引っ張る中竹竜二ヘッドコーチ代行は、今回初選出の児玉を「試合ごとに新しいスキルを見せている。リーダーではないなかで、自分の世界を持って発言してくれている」と高く評価する。

国内最高峰のトップリーグで3連覇中のパナソニックにあっては入部2年目の昨季、イングランド組の山田章仁の故障をきっかけにデビュー。堅守速攻型のシステムにあって「チームの歯車」となるよう意識し、今春の代表入りに至った。

慶應義塾大学出身で、身長183センチ、体重85キロの24歳。

昨季オフには、国際リーグのスーパーラグビー王者だったハイランダーズへ留学した。所属するニュージーランド代表フルバックのベン・スミスと個人トレーニングを重ねた。

今季は、山田と同じくイングランド組だった福岡堅樹、藤田慶和ら新加入選手とのウイングの定位置争いにも注目が集まる。

日本代表は、今度のゲームを最後に一時解散する。カナダ代表やスコットランド代表と試合をおこなう6月のツアーに備えては、今回選ばれた32名(追加招集、途中離脱などを含む)のうち14名にイングランド組19名などが加わった43名のスコッドが発表されている(5月30日以降、30名程度に絞り込まれる予定)。児玉はこのグループにも加わっている。

ここでは、スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチが代行を務める。

以下、27日の一問一答の一部(編集済み。※は当方質問)。

――トライを取る場面以外での仕事量、意識しますか。

「ボールを持ってめちゃめちゃ行けるというだけではダメだと思うので。ボールを持っていない時に一生懸命、動かないといけない」

――自分のウイングとしての長所を挙げるとしたら(※)。

「あんま弱点がないところは、悪くないんじゃないかなと思います。苦手なプレーはないつもりです。あと、これからはハイボール(空中で相手と競り合い、高く蹴り上げられたボールを確保する動き)。児玉と言えばハイボールと言えるくらい、極めていきたいなと」

――あぁ、夏ですしね。ハイボール。

「…飲む時も、カロリーを考えてハイボールを飲んでますよ」

――改めて、ハイボールへこだわりを持った理由は。

「パナソニックに入って、大学では教わらなかったスキルを教えてもらったんですけど…。ハイボールに関しては、センスがあるのかなと。磨けば…という手応えがあります。田邉(淳バックスコーチ)さんには実戦で回数を重ねるように指導してもらって(反復練習)、ロビー(ディーンズ監督)さんにはその前提のスキルを習いました。ならったスキルで100球以上、捕る。それが活きています」

――スキル。具体的に。

「(ボールを獲る際は)脇を締める。その時、手を交差しない。交差したら、(脇が開いて)ボールを落とすから、と。手をくっつけるくらいなら、肘をくっつけろと。で、肘を上げる。ボールを前に落とす理由は、肘が下がっているから。肘を上げていれば、ボールを弾いちゃっても(力学上)落ちずに上に行く、と。

あと、落とすことを考えて(ボールを前に落とせばノックオンの反則を取られるため)、取る瞬間は半身で飛んでいたんですけど、(正面を向いて)膝を立てて、それを(相手に)思い切り食らわせに行くようにしました。競り合いは怖いですけど、高く飛べば飛ぶほど、膝の位置が高くなるので安全だ(相手との距離ができて)、と。怖いと思うのなら、余計にアグレッシブに高く飛んで、膝を食らわしに行け、と。

ベン・スミスは、ワールドカップでもいいハイボールキャッチをしていた。お手本にしたいですね。ハイランダーズへ行った時、一緒に練習をしてくださいと言ったら、いいよ、と。結構、仲良くさせてもらって、最後はポロシャツももらって。いい人でした」

――いくら相手がいい人でも、大物に臆せず個人練習を申し込む。さすがです(※)。

「僕、そういうのは行ける方です」

――21日に相手国であった韓国代表戦(60―3で勝利)。22分にあった谷田部洸太郎選手のトライのきっかけは、児玉選手のハイボールキャッチでした。スクラムハーフの内田啓太キャプテンが自陣深い位置から蹴り上げると、児玉選手が敵陣中盤左タッチライン際へジャンプ…(※)。

「ウッチー(児玉と同じパナソニックに所属の内田キャプテン)のキックがどこに落ちるかは、ずっと練習しているので何となくわかる。ウッチーのハイパントは、距離を稼げて高く上がる。相手にとっては捕りにくいので、僕のキャッチのスキルさえあればいい武器になる。磨いていきたいですね。

最初に落下地点に入ってしまうと、(動作のバリエーションが)真上に飛ぶしかなくなってしまう。だから、最初はダッシュして、射程圏内に入ったらスピードを緩める。最後の最後で落下地点へ飛ぶ…。こういうイメージでした。相手よりも強い体勢を作れたのが良かった」

――6月のツアーでは、スコッドランド代表と戦います。

「ワールドカップを観ていても、(相手は)ハイボールを落としていたりもする(日本代表とスコットランド代表の直接対決。9月23日にグロスター・キングスホルムスタジアムでぶつかり、10-45で敗戦)。チャンスかな、と思っています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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