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下宿中で住民票を移動していない学生有権者の皆さん、投票は今からでもできます。

伊藤伸構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与

昨年、私が教えている法政大学の講義の中で選挙に関するアンケートをとった(有効回答数180)。

これまでの選挙(国政、地方)で投票に行ったことがあるかとの問いには、「欠かさず投票に行く」人は約2割、一度も投票に行ったことがない人は、選挙権のない(なかった)人を除くと42%という結果となった。

法政大学「NPO論」受講者アンケート(総数180)
法政大学「NPO論」受講者アンケート(総数180)

次に、投票に行かなかった理由を聞くと下図の通りとなった。

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上記理由のうち、「投票日に用事があった」(26%)は、期日前投票が簡単であることを知っていれば減少していただろう。もう一つ、「住民票が実家にある」(38%)と答えた学生の大部分は、そもそも投票ができないと考えていた。

下宿していて住民票が実家にあると不在者投票はできないのか?

下宿している学生の大半は、住民票を実家に残しているだろう。そうなると、わざわざ実家に帰省しなければ投票はできないのか? 回答は「できる」である。

では、どのようにするのか? ざっと以下のような流れになる。

1.住民票(実家)のある市町村の選管に連絡し「不在者投票宣誓書兼請求書」を送ってもらう。最近はHPからダウンロードできるところが大部分なのですぐにもできる。

2.「不在者投票宣誓書兼請求書」を記入して住民票のある市町村の選管に送る。なお、両親などが住民票のある市町村選管に行って手続きをすることで請求書の送付を省略することが可能。

3.住民票のある市町村選管から投票用紙が届く。

4.実家の選挙区の候補者をチェックした上で、現住所のある市町村の選挙管理委員会で投票を行う。

5.投票後は投票した選管から住民票のある選管へ送付される。

投票用紙が住民票のある選管に届く締切が投票日の20時「必着」となる(消印はダメ)。今回の統一地方選前半戦であれば12日の20時までとなる。

他の人の投票に比べれば手間がかかることになるが、離れている選挙区の投票をするのだからある意味では当然。逆に、今からでも投票はできると言える(今から申請書をダウンロードして送付⇒木曜日に選管が確認、投票用紙を送付⇒金曜日に投票用紙到着、現住所選管にて投票⇒その日中に現住所選管から住民票選管へ送付⇒土曜日到着)。

大学の講義でアンケートを取ったのは昨年末の衆院選のタイミングだった。上記不在者投票制度のことを話し、実際に数名の学生が選管に連絡を取った。すると、地域によって対応が異なる結果となった。投票ができないと言われた選管もあったのだ。

下宿中は住民票を移さなければならないのか?

不在者投票が断られた理由は、「そもそも下宿しているなら住民票を移さなければならない。不在者投票制度は長期の出張や旅行によって期日前投票、投票日の投票ができない人を対象にしている」とのこと。この根拠は、「住所が変わった場合に住民票の移動は14日以内に行わなければならない」という住民基本台帳法によるものと考えられる。

住民票を移すべきかどうかの判断は「生活の本拠」がどこにあるかによると解されている。例えば国会議員の多くは、地元には週末程度しか帰らず東京の議員宿舎に泊まることが多いが、住民票は地元にある。これは、長く滞在するのは東京であったとしても定期的に帰るなど本拠は地元にあるから。同じように考えれば、下宿をしていても夏休みや冬休みなど季節ごとに帰る学生や、今住んでいる場所に卒業後も継続して住むと決めているわけではない学生は実家が本拠ということになろう。よって住民票を移さなくても良いことになる(逆に、ほとんど実家に帰らず、卒業後などその先も帰らないと決めている学生は移す必要が出てくる)。

色々調べてみたがこの辺りの統一見解は出ていないようだ。少なくともこのことで投票に行かなくなった学生(有権者)がいるのだから、総務省が明確な基準を設けるなど見直し検討の余地はあるのではないか。

5万人弱のある市では選挙ごとに数十件の不在者投票があるとのこと(海上自衛隊の基地を持つ自治体になると多数の自衛官が哨戒(パトロール)など長期の出張があるため数千に及ぶ)。

「投票率が上がらない」「特に若者の関心が低い」と評論ばかりしていても始まらない。それぞれが動くことも必要ではないか。私が今できること、それはこのように仕組みを伝え発信することで1人でも投票に行ってもらうことだと感じている。

構想日本総括ディレクター/デジタル庁参与

1978年北海道生まれ。同志社大学法学部卒。国会議員秘書を経て、05年4月より構想日本政策スタッフ。08年7月より政策担当ディレクター。09年10月、内閣府行政刷新会議事務局参事官(任期付の常勤国家公務員)。行政刷新会議事務局のとりまとめや行政改革全般、事業仕分けのコーディネーター等を担当。13年2月、内閣府を退職し構想日本に帰任(総括ディレクター)。2020年10月から内閣府政策参与。2021年9月までは河野太郎大臣のサポート役として、ワクチン接種、規制改革、行政改革を担当。2022年10月からデジタル庁参与となり、再び河野太郎大臣のサポート役に就任。法政大学大学院非常勤講師兼務。

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