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冬季五輪を控えコロナ対策、北京で身柄拘束など19人

宮崎紀秀ジャーナリスト
冬季五輪が迫り北京ではコロナ対策が喫緊の課題(2021年10月25日北京)(写真:ロイター/アフロ)

 冬季オリンピックの開催まで、すでに100日を切った北京では、コロナ感染のリバウンドに直面し、抑え込みのためなら強権的な手段も辞さない姿勢を見せている。警察は、最近の事例として、コロナ対策破りの犯罪として24件を扱い、うち19人について刑事事件として立件したという。

北京で市内感染が21人

 北京市政府は、27日の午後に開いた記者会見で、北京市内で前日から同日14時までに新たに3人の市中感染者が確認され、今回のリバウンドにかかわる感染者の累計が21人に達したと発表した。この会見に参加した警察幹部は、市内におけるコロナ対策破りに絡み24のケースを扱い、19人を刑事事件として立件したと明かした。その上で、防疫破りの典型的なパターンを紹介したのは、見せしめ効果を狙ったものだろう。

 中国では、感染者が確認されると、その団地などで住民の出入りを基本的に禁じる措置を採る。

 北京市内のある団地では、高リスクと指定されて住民の出入りが厳しい管理下に置かれたが、31歳の男は、地下のガレージを通って外出しようとした。男は、外出を阻止しようとする監視員を殴りつけたという。

検査逃れやマスク不着用も

 検査逃れのケースもあった。中国では、コロナが蔓延してほどなく、防疫対策の一環として、携帯のアプリで訪問先などの本人の行動履歴が明示される仕組みが採用された。PCR検査の結果なども反映され、都市間を移動する際には、この行動履歴によって自分が感染の危険がなく「安全」と証明する必要がある。

 ところが、中高リスク地域への訪問歴があった39歳の男は、車で検問を通過しようとした際に、他人の行動履歴を提示して、北京への進入を試みようとした。別の29歳の女は、PCR検査の陰性証明を偽造していた。いずれも警察が身柄拘束して調べているという。

 公共の場所での防疫規則を守らなかったケースもある。

 42歳の男は、バス停付近でマスクをつけておらず、それを咎めた係員を殴り、怪我をさせた。65歳の男は、ある会社を訪れた際に、健康コードという、やはり携帯のアプリ上で示される「安全」の証明を示さず、係員を殴った。人を殴れば、コロナの防疫対策に関係なく立派な刑事事件だが、いずれの男もすでに身柄を拘束された。

冬季五輪を前に

 また、密を避けるための措置に従わず、営業を続けた雀荘の経営者や、省をまたぐ移動を伴う「1日ツアー」を企画した男も、警察が事件として調べているという。

 来年2月に冬季オリンピックを控える中、世界初の夏と冬の両方のオリンピックを成功させた都市として賞賛を浴びたい北京としては、まずいタイミングでリバウンドを許してしまった。北京当局が、防疫破りの事件をわざわざ紹介したのは、警察力を駆使してでも「感染を絶対に抑えこむぞ」と、市民へ睨みを効かせるためだろう。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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