日本バスケの方向性が見えてきた。Bリーグ2季目に向けた選手と指揮官の声
2シーズン目のBリーグが、9月29日(金)に開幕する。昨季は栃木ブレックスが守備、リバウンドを強みにする『粘りのバスケ』でチャンピオンシップを制した。ただ今オフは移籍市場も活発で、人とスタイルの両面で変化が見て取れる。
11日に東京都内で2017-18シーズンの開幕に向けた『ティップオフカンファレンス』が開催された。これはB1の18チームから注目選手が集まり、メディアの撮影やインタビューに応じるという場。筆者は9月上旬のアーリーカップ関西で西日本の6チームを取材していたが、大阪で感じた『日本バスケの流れ』を東京でも強く感じることになった。
カンファレンスでまず少し驚いたのが比江島慎選手(シーホース三河)の「今年は速い展開のバスケットを目指そうとしている」というコメントだった。
バスケの試合時間は40分間。時計が止まる時間があるので『実働』はサッカーやラグビーとおおよそ同じで、常にフルパワーで動き続けることは難しい。またBリーグは土日の連戦が多く、中0日で戦う体力的な厳しさもある。
三河は試合のテンポを無理に上げず、しっかり「24秒を使う」チームだった。どんなスポーツでも強いチームほど、試合運びに余裕を残す『横綱相撲』に持ち込むことが多い。しかしその三河がスタイルを変えるというのだ。
確かに今季の三河は京都から高速ガード村上直を獲得した。それは高速化に向けた意欲の現れだろう。また三河は196センチの長身と機動力を兼備する西川貴之も加入した。昨季の三河は比江島が29.1分、金丸晃輔は29.4分という1試合平均の出場時間だったが、これはB1の中でもかなり長い。速くて消耗する展開を目指すとなれば、両エースのプレータイムを抑える必要があった。
他にもかなり多くの選手が「守備」「トランジッション(切り替え)」「速い展開」というキーワードを口にしていた。
昨季は4強で敗れたアルバルク東京の田中大貴は「ヘッドコーチが変わって、今年は激しいDFがアルバルクのカラーになる」と口にしていた。大阪エヴェッサは選手7名を入れ替えたが、栃木から加入した熊谷尚也は「DFから走るバスケットを大阪は目指している」と説明していた。他のチームからも同じようなコメントがあった。
滋賀レイクスターズはB1西地区の最下位から、よりハードで速いスタイルを浸透させることで浮上を狙っている。ショーン・デニスヘッドコーチ(HC)は昨季、アシスタントコーチとして栃木のチャンピオンシップ制覇に貢献した人物だ。そんな滋賀もかなり極端なほどに「フルコートのプレス」「速いオフェンス」に舵を切っている。
デニスHCは3日のアーリーカップ関西決勝戦後にこのようなことを述べていた。「日本バスケのスタイルがだんだんとフルコートのプレッシャーをかけ、オフェンスも含めてフルコートでプレーするスタイルに変わっていけば、素晴らしいものが得られると思っている。日本人選手はスピード、アジリティにアドバンテージがある場合が多い。だからこそ速いスタイル、プレッシャーというスタイルが、国際的に日本がやっていくものになると思う」
司令塔にして得点源でもあるポイントガードの並里成は「きついですね」と苦笑しながら、こう続けていた。「でもこれを40分できるようになったら最強になれるなと思います」。
もちろん『激しいDF』『速い攻撃』という意識付けだけで結果が出るわけではない。意図せぬ無駄なファウルが増えれば、速さを求めてミスが増えれば逆に自分たちが損をする。となればスタイルの先に質を求めていかねばならない。
またテンポを高く保ち続ける、攻守に足を動かすスタイルは消耗度も高い。そのためには先発5名以外も含めた総力戦でプレータイムを分け合う必要がある。
ただ各クラブが上を目指すなら、負荷の強いスタイルに取り込むべきなのだろう。また仮に「高さを生かす落ち着いたバスケ」でBリーグを制したとしても、それは国際試合で生きない。現時点では日本はサイズ的に見ればアジアの中でも分が悪い。となれば各クラブが取り入れようとしているスタイルは世界につながる方向性だ。
男子日本代表は今年7月にアルゼンチンの名将フリオ・ラマス氏を招き、8月にレバノンでFIBAアジアカップを戦った。そして11月24日には2019年のワールドカップ(W杯)に向けた長い予選がスタートする。バスケは他競技のように自国開催の五輪出場権を自動的に得られる保証がない。日本は2020年の東京大会に向けて、W杯出場で実力を証明する必要がある。
Bリーグの発足はそもそも日本バスケの強化が最大の目的だった。国内の争いだけでなく、代表の躍進を考えたときに、速くて激しい『堅守速攻スタイル』の追求は妥当。それはタフで険しいプロセスだが、日本バスケが最短距離で世界に進む道だ。