中国国内でもお花見? 自然を愛でるようになってきた中国人
今週、桜が満開となった東京。上野公園や新宿御苑、千鳥ヶ淵などの桜の名所は連日連夜、お花見客で賑わっている。海外、とくに中国からの観光客も多く、「美しい日本の桜」を楽しんでいる。
彼らの目から見ると、日本といえば、やはり桜と富士山。そのイメージが強く、日本へのあこがれもあって、わざわざ桜が満開になるこの時期をめがけて日本旅行にやってくる人が多いのだ。
だが、この1~2年、ちょっとした“異変”が起こっている。桜といえば日本、のはずだが、中国国内でもお花見をする人が急増し、ちょっとしたお花見ブームになっているようなのだ。
中国のSNS上でも桜の写真だらけ
中国人がよく使うSNS、ウィーチャットをのぞいてみるとよくわかる。日本のフェイスブックでここ数日、多くの友人がお花見の写真を次から次へと投稿しているのと同じように、ウィーチャットでもお花見の写真が大量に投稿されているからだ。
よく見てみると、中には在日中国人が上野公園などに出掛けた際の写真、つまり日本の桜の写真もある。だが、それだけでなく、中国に住む友だちの投稿にも、中国で撮影した桜の写真が増えているのだ。
上海からクルマで約2時間の距離にある江蘇省の都市に出張中の友人は、「ちょうど今、桜が満開です!」というメッセージとともに夜桜を一生懸命撮影している写真を投稿していた。上海市内に住む別の友人も、日曜日に公園でお花見を楽しんだ写真を掲載。桜だけではなく、この時期に咲いている花の写真をペットとともに載せて上機嫌だった。
私のウィーチャット上には中国人だけでなく日本人もいるが、比率としては中国人のほうが多い。だが、投稿内容をよく見てみないと、どちらに住んでいる人が書いたのかよくわからない。それくらい、最近では「お花見」の話題が多く“時差”や“情報格差”がほとんどないのだ。
中国のネットニュースサイトでも、東京・目黒川沿いのお花見の混雑ぶりや、中国国内の新しいお花見スポットの情報が連日のように報道されている。
そうした情報を目にしているせいか、コメントの書き方や写真の撮り方も凝っていて、日中の間に大差はなく(もちろん、中国語で書くか、日本語で書くかという違いはあるが)、中国人も身近に咲くお花を愛でたり、それらの写真を撮ったりする繊細さと余裕を持つようになってきている、と感じられる。
スマホでの撮影とSNSの発信がきっかけ
上海に住む友人はいう。
「SNSで見た日本の桜の写真に感化されたり、日本旅行の際に実際に桜を見て感動したことなどが影響して、地元(中国)にいても、公園に咲いている桜や花々など、自然の風景に目がいくようになったのではないでしょうか。だって、上海にはずっと以前から桜の木があったけれど、わざわざ写真を撮っている人なんて、あまり見かけなかったから。それだけ、中国人の視野が広くなったということではないでしょうか」
確かにそうだ。
中国国内には上海、北京、そして内陸部の武漢など、各地に桜が植えられており、名所といわれるお花見スポットは少なくない。中国人も以前から、それらの場所でお花見をする習慣はあったものの(日本人のようにシートを敷いて、木の下でお弁当を食べる習慣はないが)、現在のように花びらのアップの写真を撮ったり、桜以外の小さな花々の存在にまで気がつくことはあまりなかった。
だが、スマホを持つようになって、いつでもどこでも、何でもすぐに撮影できることが中国人にとっても日常になった。そして、それをSNSに投稿すれば、友だちからのリアルな反応がある。日本旅行でのお花見体験や、経済的、精神的余裕なども加わり、「中国国内でもお花見」をするようになってきたのではないだろうか。
もちろん、そこにはSNSを利用する人なら誰でもある「他の人よりも、もっといい写真を投稿して目立ちたい」「おもしろい写真を撮って、注目を集めたい」という自己顕示欲も隠されているのだが。中国のメディアでも、お花見の話題はニュースのひとつになっている。何だか日本人と中国人……少しずつ似てきた、ような気がする。