決勝トーナメント進出!U-20カナダ代表を圧倒したヤングなでしこ(1)
5−0。完勝だった。
パプアニューギニア(以下:PNG)で行われているU-20女子ワールドカップのグループリーグ第3戦で、ヤングなでしこがU-20カナダ代表を圧倒。
同グループのもう1試合で、ナイジェリアがスペインを2−1で下したため、2勝1敗の勝ち点6で3チームが並び、得失点差で日本がグループ首位で決勝トーナメント進出を決めた。
【風下で圧倒した前半】
日本は第2戦のスペイン戦から、先発メンバー5人を入れ替えて臨んだ。GKは松本真未子、DFラインは左から北川ひかる、市瀬菜々、乗松瑠華、宮川麻都。MFは左から長谷川唯、隅田凜、林穂之香、水谷有希。FWは籾木結花と上野真実が2トップに入った。
この試合で両チームの前に立ちはだかったのは、暑さよりも「風」だった。コーナーフラッグが風で煽られるほどの強風だったが、そんな中でもコイントスに勝ち、ピッチの選択権を得た日本は前半、あえて風下を選択した。
「カナダの速攻が怖く、後半にそのパワーをまともに受けてしまうのが嫌だったので、最初に風下をとって、しっかり様子を見ながらゲームを進めようという判断でした。」(高倉監督)
その狙いは、共通意識としてしっかりとピッチ上に表現されていた。日本は相手がボールを持つと、パスコースを限定し、ジワジワと追い込んでいく。そして、ボールを奪うと選手同士が良い距離感でパスをつなぐ。スペイン戦では思うようにうまく機能しなかった日本のパスワークが、見事に復活した。
カナダは日本が敗れたスペイン戦を研究してきたのだろう。これまでの4−4−2ではなく、スペインが採用したフォーメーションと同じ4−1−4−1で、日本のフォーメーション(4−4−2)とのギャップをついてきた。だが、日本がボールの主導権を握ったことで、そのギャップは日本に有利に働くようになった。
カナダはスタメン11人の平均身長が167.9cmで、日本の160.0cmを上回ったが、その身長差は脅威にはならなかった。細かい動きを見せる日本のマークをつかみきれず、カナダはフィジカルを活かした球際の攻防に持ち込むことができない。バランスよく統率がとれた日本の最終ラインの裏のスペースに侵入することができず、カナダのロングボールは強風に煽られてゴールラインを何度も割った。
こうして、ボールを持つ時間帯を増やしていった日本は、前半から相手を圧倒した。
試合が動いたのは前半26分。左CKのこぼれ球を市瀬がシュートし、相手に当たってこぼれたボールを長谷川が押し込んでネットを揺らした。この先制ゴールで攻撃のスイッチが入った日本は、さらにパスのテンポを上げていった。
42分には、籾木のシュートがGKに弾かれたが、そのこぼれ球を上野が豪快に蹴り込んでリードを2点に広げた。
【熱狂を見せたスタジアム】
後半は追い風も味方につけ、日本が立て続けにチャンスを迎えることになった。
後半開始早々の47分、左サイドからのクロスのこぼれ球を上野が落とし、今大会初先発の林がミドルシュートで決める。その4分後には上野のシュートを長谷川がヒールキックで角度を変える、シビれるゴールで4−0。
後半に風下に立たされたカナダは日本の攻撃を跳ね返す力もなく、ワンサイドゲームとなった。
73分には、宮川のパスを長谷川がスルーし、交代で入った杉田が走り込んで決め、5−0と試合を決定付けた。
90分間を通じ、ミスからカウンターに持ち込まれたピンチも2回あったが、今大会初先発のGK松本が安定したポジショニングとセーブを見せ、日本が完封勝利を飾った。
5400人を超える地元の人々が詰めかけたスタジアムは、日本の選手たちが見せるプレーに何度も沸いた。
トラップ、ターン、シュートといった一つひとつの技術もそうだが、2列目から選手が飛び出し、人とボールが淀みなく流れるパスワークは、スポーツ好きのPNGの人々の血を騒がせたようだ。
【選手層の厚さを見せつけた日本】
先制点を含む2ゴールを決めた活躍で、プレイヤー・オブ・ザ・マッチに輝いたのがMFの長谷川だ。テクニックを活かしたボールコントロールだけではなく、粘り強い守備から何度も攻撃の起点となった。だが、その目はすでに次のステージを見据えている。
「決勝トーナメントは一回負けたら終わりなので、毎試合、試合の入り方が大事になります。うまくいかない時に、試合の流れを変えられる選手がいなければ勝てないので、自分がそういう役割をできるように頑張ります。」(長谷川)
また、日本の4人目のゴールゲッターとなったのが、中盤で初先発を飾った林だ。自身初のワールドカップの舞台で、チーム最年少の18歳。試合後は「最初は硬くなって、消極的になってしまった」と反省を見せたが、日本がリードしてからは前を向くプレーも増え、中盤で生き生きと攻撃に参加した。
日本はこれまでの2試合は左サイドからの攻撃が多かったが、この試合では右サイドの攻撃が増えた点もバランスの良い攻撃につながった。右サイドを形成した初先発の水谷がドリブルで積極的な仕掛けを見せ、宮川もオーバーラップと粘り強い守備で貢献し、日本は選手層の厚さを見せつけた。
日本が準々決勝で対戦する相手は、1勝1敗1分けでグループAを2位で勝ち上がった南米王者のブラジルだ。
「決勝トーナメントは負けたら終わりなので、精神的な部分が非常に大きくなると思います。フィジカル面で弱い部分が出てしまうと日本の良さが出せないので、運動量や判断のスピードを上げて自分たちがやってきたサッカーを貫き、一番上を狙います。」(高倉監督)
スペイン戦の敗戦を乗り越え、チームは精神的に逞しくなった。世界一への挑戦は、いよいよノックアウトステージに突入する。
準々決勝は24日、Port Moresby National Football Stadiumで19:30(日本時間18:30)からU-20ブラジル代表と対戦する。
(2)【監督・選手コメント(U-20カナダ代表戦後)】に続く