デモクラシー(民主主義)とは?(1)・・・政治・政策リテラシー講座1
デモクラシー(democracy)は、日本語で「民主主義」と訳されます。その言葉の起源は、demos(people[人民])とkratos(rule[支配])から造られたギリシャ語のデモクラチア(democracy)という言葉に起源があります。つまり、人民による支配という意味なのです。単に人民(国民、市民など)が政治や社会における決定するということをいっているだけの政治制度なのです。
デモクラシー(民主主義)、社会主義(socialism)、共産主義(communism)などはよく比較されます。しかし、社会主義は、私有財産制の廃止や生産手段の共有などを通じて平等で調和のとれた社会を実現しようという考え方であり、共産主義は、社会主義を推し進めていった最終段階として階級対立のない平等な理想社会を実現するという考え方です。つまり、それらは、目指すべき理想社会があるイデオロギー(政治や社会におけるあるべき姿についての理念の体系のこと)なのです。
日本語では、同じ「主義」という言葉が使われているのですが、デモクラシー(民主主義)は、そのようなイデオロギーではなく、人民などが決定するための政治の仕組み、政治制度あるいは政治制を意味しているだけのものなのです。英語のデモクラシー(democracy)には、確かにイテオロギー的意味を示す「ism」が使われていませんね。その意味では、日本語でも、民主主義でなく、民主制(度)という単語を使った方がいいのかもしれません。
もちろん、民主主義にも、多数派民主主義、熟議民主主義、闘技民主主義などさまざまな形態があり、国や地域によって異なっていますが、その基本の部分は今述べたとおりです。
そのため、飽くまでそのような政治制度であるデモクラシー(民主主義)は、何が良いか、どのようにすればより良い社会にできるかを常に考えて、イボルビング(進化し続ける、発展し続けること)させ、絶えず改善をしていかないといけない政治の仕組みなのです。その意味で、「デモクラシー(民主主義)は未完の更新(あるいは行進)である」といわれることもあるわけです。
そのことを考えていくと、そうなのです。デモクラシー(民主主義)は非常に手間がかかり、たくさんのコストがかかる(あるいはかかり続ける)仕組みなのです。このために、「デモクラシー(民主主義)は面倒だ。別の政治制度の方がいい」とよくいわれこともあります。
しかしながら、人類の長い歴史と経験を通じて生まれてきたデモクラシー(民主主義)は、多くの問題や課題を抱えているので、ベスト(最善)であるとは到底いえませんが、少なくとも現時点においては、よりベター(より良い)政治制度であるといえると思います。
英国の首相であったウィンストン・チャーチルは、次のようにいっています。
「だれにもデモクラシー(民主主義)が完璧、全知であるなどとは言えはしない。事実言ってみれば今まで時々に試してきた政府の形態を全部除外したとしたら、デモクラシー(民主主義)は最悪のものだ」
ぜひ皆さんも、この言葉の意味を噛みしめて、私たちのデモクラシー(民主主義)について考えてみてください。
その際には、下の【参考文献】に挙げた書籍等も参考になります。
日本の方向性が不透明で、憲法改正などが行われようとしている今だからこそ、私たち一人一人が、私たちのデモクラシー(民主主義)について考えることが重要です。
【参考文献】
『シチズン・リテラシー…社会をよりよくするために私たちにできること』 鈴木崇弘ら編著 教育出版 2005年
『デモクラシー』バーナード・クリック著 岩波書店 2004年
『民主主義の危機』 ウィリアム・E・ハドソン著 東洋経済 1996年