バレンタインのチョコレート、原料はどこで採れる?
2月14日はバレンタインデーだ。日本では、一般的に女性が男性にチョコレートを贈る日とされている。最近では、同性の友達や自分用にチョコレートを買うことも少なくないようだが、いずれにしてもチョコレート業界にとっては1年で最も盛り上がる時期になる。
このチョコレートは、主な原料としてカカオを使用している。カカオ豆と言われるが、大豆や小豆などとは異なり、果実の種である。長さ15~30センチ程のカカオの果実(カカオポッド)の中には、30~40個ほどの種子があり、これを発酵、乾燥させたものがカカオ豆となる。焙炒してカカオ独特の風味を引き出し、摩砕してカカオマスと呼ばれるものを作り、そこにミルクや砂糖、油脂などを加えることで、チョコレートが完成する。
このカカオは、菓子メーカーのチョコレートブランドから西アフリカの「ガーナ」産が国内では有名かもしれない。実際に、日本に輸入されるココアの70%程度がガーナ産になっている。
ただ、世界最大の生産国はガーナの西に隣接するコートジボワールである。国際ココア機関(ICCO)の最新統計だと、2018/19年度に世界全体で485万トンのカカオが生産されているが、その内の46%に相当する222万トンが、コートジボワールで生産されている。ガーナはそれに次ぐ世界2位の生産国だが、83万トンに過ぎない。アフリカ全体で370万トン、世界全体の76%が生産されており、チョコレートはアフリカの存在なくして一般に入手できるものではない。
アフリカ以外では、南米のブラジルで20万トン、エクアドルで31万トン、更にアジアではインドネシアが22万トン、マレーシアが30万トンを生産している。ただ、圧倒的な量が西アフリカに位置するコートジボワールとガーナの二カ国から供給されている。
歴史的には、中米が原産地だった影響もあり、中南米での生産が主だった。しかし、ブラジルで「ウィッチズブルーム病」が大流行して生産量が激減すると、西アフリカが生産の主体になっている。日本のバレンタインデーに買われたチョコレート代金の一部は、遠く離れた西アフリカのカカオ農場の労働者の収入になっているはずだ。
カカオの樹は、赤道を挟んで南北緯20度以内、年間平均気温が27度以上の高温多湿の地域で栽培されている。サトウキビ、コーヒー、天然ゴムなどの生産地と重複している。ただ、カカオの樹は大規模なプランテーションでの生産に適さない性質を有しているため、労働集約型の産業になり易く、その意味ではアフリカの人件費の安さがチョコレート業界を支えているとも言える。実際に、ココア農園ではしばしば、更に安価な児童労働が問題視されており、コートジボワールやガーナ政府も、特に昨年以降は農家の所得向上のための対策に尽力している最中である。
国際カカオ相場は近年、安値から徐々に上昇し始めているため、近く末端のチョコレート製品価格も値上げ圧力に晒される可能性がある。ただ、少なくともカカオに関しては、産業として維持していく上で安過ぎる可能性が高いというのがコモディティ市場からの目線になる。