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強盗事件が多発!誰の身にも起こり得る、組織的犯行 命を守る行動をお願いします!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

今年に入り、関東圏だけでも、10件ほどの強盗事件が起きています。関西でもマンションに押し入って、現金680万円などを奪った強盗もありましたが、この犯人らは自首するなどして逮捕されています。さらに、広島や山口など、広域的に行われていた可能性も出てきています。

これは組織的犯罪グループによるものと思われ、正直なところ、狙われたら防ぎようがない凶悪犯罪が、私たちの身近に迫ってきています。

特殊詐欺グループのノウハウを持った、強盗グループとみる理由

一連の犯行は、組織的犯罪グループによるものとみています。

それは犯行パターンの一致性からわかります。

強盗行為を3人以上の複数人で行い、手足を結束バンドや粘着テープで縛る。ハンマーを持参するなど、用意周到に判をおしたような手順で、犯行を繰り返しています。

何より金品を盗むのならば、不在の家に入り、物色して盗む方が、逮捕されるといった犯行のリスクは低いのですが、そんなことはお構いなしで、わざわざ高齢者などが家にいるところを狙い、殴るなどして、お金をとろうとしています。逮捕のリスクを全く考えていない。これは、組織的犯罪グループによる犯行の特徴といえます。

2019年にアポ電強盗というものが起き、この時の実行犯らは逮捕されています。今回、東京都狛江市の90歳の高齢女性が亡くなりましたが、19年の時も高齢女性が強盗グループに拘束されて亡くなっています。

なぜ、犯罪組織はわざわざ家にいる時間帯を狙ってやってくるのでしょうか。

わざわざ在宅時に押し入る理由。それは効率よく多額のお金をとるためです。

闇バイトの募集へ取材電話を度々かけているのでわかりますが、詐欺の「受け子」(被害者宅にお金をとりに行く)や「出し子」(ATMからお金を引き出す)といった仕事以外に、「強盗(たたき)もある」ということを話してきます。

電話をしている相手は、リクルーターと呼ばれる、犯罪グループに仕事をあっせんする人間ですので、強盗を行うグループが存在していることがわかります。

そもそもは、特殊詐欺を行っていた犯罪グループがあり、その延長線上にこの種の強盗の集団が存在していると考えています。

特殊詐欺グループと、強盗グループの共通性

特殊詐欺ではマニュアルに沿った形で行動を起こしますが、今回の強盗もマニュアルを使っているとみられています。

なぜ、犯罪組織がマニュアルを使うのかといえば、効率よく、数百、数千万円のお金をとるためです。その成功方法を何度も繰り返します。

詐欺には必ず、前触れ電話があります。

これは、アポイント電話(アポ電)とも言われますが、高齢者の資産家などの名簿情報を手に入れて、電話をかけます。それを通じて、相手の在宅状況や資産状況などを把握します。そしてお金が騙しとれるとわかると、一気に詐欺の電話をかけてきます。

今回の強盗でも、おそらく事前に調査を行い、高齢者の在宅時間、家にお金があることがわかっていて押し入り、効率的に多額のお金を奪おうとしたと思われます。

特殊詐欺グループが目指してきたものも、いかにお金を効率的にとれるかです。それがこの強盗にもみえてきているわけです。

また犯罪グループでは、役割分担がしっかりとしています。

詐欺では、架け子、受け子、見張り役といった役割分担がなされていますが、今回の強盗でも、電話で指示を受ける役、殴る役や、犯行現場にいく運転手兼見張り役、金品を物色する役など、あらかじめ役割分担が決まっていると思います。与えられた役割で手順通り行えば、短時間で犯行を行えるからです。

素人集団ゆえの怖さ

家人がお金のありかを口にしないと、激しい暴行を加える恐れがあります。この組織に加担しているのは、基本的に闇バイトで寄せ集められた素人集団です。

電話での上の指示役から「殴れ!」と言われれば、殴ります。しかも怖いのは、素人が殴るゆえに、その力加減がわからず、相手を死なせてしまうこともありえます。

今回、90歳の高齢女性が亡くなりました。もちろん、その事情は当人しかわかりません。もしかすると、加減のわからない犯罪者に殴られて、ショックで亡くなられたかもしれません。あるいは、息子たちの財産を奪われまいとして、必死に頑としてお金の場所などを口にしなかったことも考えられます。

いずれにしても、暴力という手段で命を奪うなど、絶対に許すことはできません。

命だけは守ってください

誰の身にでも起こり得るのが、今回の組織的犯罪グループによる強盗事件です。

もしかすると子供思いの親ほど、息子、娘たちのお金をとられまいとして、犯行グループに抗(あらが)うかもしれません。しかし、それは危険です。一番に守るべきは、ご自身の命です。

大切なお金を奪われることは、本当に悔しい気持ちかもしれませんが、多勢に無勢です。身に危険が迫った時には、できるだけ抵抗は控えて、ご自身の命だけは守ってほしいのです。

強盗に入れば、物証は残りますし、何より犯罪組織の上の人間たちは、実行犯らは捕まっても良い存在として、繰り返し犯罪をさせて、使い捨てにする発想をしていますので、逮捕されるはずです。

もし可能であれば、防犯にお金をかけてください。何かしらの異変があれば、すぐにセキュリティ会社に通報がいくような、銀行なみの防犯態勢を整えることも、多くのお金を家に置いている人は、今後、必要になるかもしれません。

日本の治安は警察が守ってくれて、安全である。これはもう昔の話です。今は、犯罪者集団が、組織の上の指示を受けて、その手足となり、いつ何時、私たちを狙ってくるかわかりません。いかに一人一人が身を守る手段を講じるのか。それを考える時をむかえています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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