ネット通販で代金を振り込んだら音信不通に 詐欺にだまされた…どうすればいい?
ほしかった商品がネット通販で安く販売されていたので、購入手続をし、指定された銀行口座に代金を振り込んだ途端、音信不通に――。コロナ騒動で活況を呈する通販市場を舞台に、こうした詐欺が横行しているという。
個人情報が悪用されるおそれも
代金を振り込む前に詐欺サイトだと気づいたら、サイト側にメールでその点を指摘し、キャンセルすると伝えればいい。もし催促のメールがきても、放置しておいて構わない。
確かに、ネット通販の場合、購入を申し込んだ者に販売者による承諾の通知が到達すれば、売買契約が成立する。しかも、ネット通販にはクーリング・オフ制度の適用もない。サイト上に「キャンセル不可」といった特約の記載があれば、これに従うのが本来の姿だ。
しかし、負い目のある詐欺サイトの運営者、特に海外にいる詐欺師が自らの素性を明かし、日本の裁判所で法的手段に出ることなどありえない。次の「カモ」を引っ掛けたほうが早いからだ。
それでも、注文時に入力した氏名や住所、電話番号などの個人情報が悪用される可能性は残る。別の詐欺サイトで勝手に名義を使われ、事業者として仕立て上げられるなどだ。IDやパスワードを複数のサイトで使い回していれば、不正アクセスの被害も考えられる。
詐欺サイトに登録した個人情報をデタラメなものに変更するとともに、同じIDやパスワードで登録している別のサイトのIDなども変更しておかなければならない。
「振り込め詐欺救済法」がある
では、指定された預金口座あてに代金分を振り込んだあと、詐欺サイトだと気づいたら、どうすればいいか。
登録した個人情報を変更しておくことなどについては先ほどと同様だが、サイトに記載されている事業者名などは他人の名義を勝手に使うなどしたものだし、預金口座も外国人留学生らから不正に譲り受けたものと思われる。
これらから犯人にたどり着くことなど事実上不可能だから、とにかく被害金の回収を急いだほうが賢明だ。
もし振り込んだばかりであれば、振込元銀行に連絡して「組戻し」という手続をとることで、キャンセルできる。振込先銀行が入金の記帳を行う前であれば、名義人の同意は不要だ。
しかし、入金の記帳後だとその同意を要するし、詐欺師が同意することなど考えられない。
そのため、「振り込め詐欺救済法」を使うことになる。詐欺に使われた預金口座の凍結や口座残高からの被害金の返還手続を定めている特別な法律だ。
全国銀行協会の取り決めでは、捜査機関から通報があった場合、すみやかに口座の凍結を実施することになっている。
時間との戦い
そこで、大至急、警察に詐欺の被害を届け出たうえで、警察から振込先銀行に対し、犯罪に利用された疑いのある預金口座であると通報してもらう必要がある。
念のため、自らも振込先銀行に対し、「だまされて振り込んだ」と第一報を入れておくといい。
警察や銀行から被害状況に関する説明や資料の提出を求められるので、詐欺サイトのURL入りの画面、やり取りしたメール、振込明細などをすべて印刷し、あるいはスクリーンショットで記録に残し、手もとに準備しておく必要がある。
うまく手続が進めば、預金保険機構による公告や預金債権の消滅を経て、約3カ月後には被害金が戻ってくるだろう。
その間、国民生活センターのほか、セーファーインターネット協会などの民間団体にも詐欺サイトに関する情報を通報しておくと、次の新たな詐欺被害を防ぐ一助となる。
ただ、被害者が複数いれば、口座残高を被害額で案分した金額しか返還されない。しかも、口座の凍結手続を進める前に詐欺師によって預金が引き出されていれば、もはやここから回収することなど不可能だ。
詐欺師に対抗するには、自己防衛が不可欠といえよう。(了)