100年後まで誰も読めない100冊の「未来図書館」 3人目の作家はアイスランドのショーン氏に決定
アイスランドを代表する作家ショーン( Sjon)氏が、「未来図書館」に所蔵される3作品目の執筆家に選ばれた。
ノルウェー発祥の「未来図書館」では、毎年1人の作家を選出。合計100人の作家による100の物語がオスロで建設予定の新国立図書館に所蔵される。
中心人物は、首都オスロとスコットランド出身のデザイナー、ケイティー・パターソン氏。自然・芸術・文学を融合させた大規模なパブリックアート計画だ。
寄贈された作品は、100年後の未来、2114年まで、誰も読むことができない。今生きている私たちの多くは、この100作品を読むことはできないが、世界中の作家たちから、未来の世代への大きな贈り物となる。
1人目の作家(2015年)はマーガレット・アトウッド氏。『Scribbler Moon』を寄贈。
「これは未来への素晴らしいプレゼント。まだ、この計画をよく知らない人もいるので、“木の下に本を埋めるの?”と聞かれることもありますよ」
2人目の作家(2016年)はイギリス出身のデイヴィッド・ミッチェル氏。『From Me Flows What You Called Time』を寄贈した。
「おかしな計画だと思った。この未来計画を信じない自分よりも、信じる自分のほうが、なんだかいいなと思えるようなった」
ショーン氏(1962)は、『The Blue Fox』, 『The Whispering Muse』, 『From the Mouth of the Whale』などを執筆し、数々の賞を受賞。『Moonstone: The Boy Who Never Was 』は、2013年にアイスランド文学賞なども受賞し、35か国語に翻訳された。ほかにも詩、歌詞、オペラの台本を手掛ける。2001年には映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でアカデミー賞の歌曲部門にもノミネートされた。文学振興団体「アイスランド・ペンクラブ」の会長でもある。
3人目の作家となったことに対して、ショーン氏はプレスリリースでこう語る。「初めてプロジェクトのことを聞いた時、まるでゲームのようだと思った。イエスと言ってから、このチャレンジが、どれだけ奥深いものか次第と実感するようになった。執筆の芸術性に、作家が向き合う根幹がテストされている。巨大なゲームのようだ」
「誰のために書くのか?読者の反応は私にとってどれだけ重要か?文章の何がタイムレスとなりえるか?そして最も難しい問題は、未来の人々は、私が書く言語を理解するだろうか?このゲームは、楽しみで仕方がない」。
未来図書館に寄贈する作品の言語や内容、文字数は自由だ。ショーン氏の作品は、2017年5~6月にオスロの森で寄贈予定。
プロジェクトの責任者であるケイティー・パターソン氏は、親日家で村上春樹氏のファン。いずれ、日本からも作家がプロジェクトに招かれる可能性は非常に高い。
Photo&Text: Asaki Abumi