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日大の通報遅れが真相解明の妨げに アメフト部を巡る薬物事件、捜査の焦点は

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:長田洋平/アフロ)

 部員の逮捕にまで発展した日大アメフト部を巡る薬物事件。入手経路や所持の目的、何がきっかけでいつからどの程度の頻度で所持、使用していたのかがポイントとなる。逮捕時の尿鑑定の結果や警察による寮の捜索で新たに規制薬物が発見されたか否かも重要だ。

 ただ、捜査はそれだけでは終わらない。ほかの部員らにまん延していた疑いがあるうえ、日大が植物片などを発見してから警察に通報するまで約2週間も経過している。隠ぺいしようとしたのではないか、規制薬物の成分が尿から検出される期間の経過を待っていたのではないか、口裏合わせをしたりほかの規制薬物を廃棄したりする時間的猶予を与えたのではないかといった疑念も生じる。犯人隠避罪にあたりうる話である。

 警察は日大関係者に対する捜査も進めることになるが、日大の通報遅れが結果的に真相解明の妨げとなったことは間違いない。これまでの経過など、参考になる記事をまとめてみた。

▼大麻に対する違法性の認識が緩い外国人選手の影響を受けて大麻に手を染める部員があらわれ、外国人選手が減ったあとも部内に「大麻文化」だけが残ったと証言するアメフト部OBも

▼昨年には警視庁に部員の薬物使用に関する情報が複数回寄せられており、警視庁も日大に対して対策を講じるように促していた

▼ことし7月には「保護者」を名乗る匿名の人物から報道機関などに複数の部員による大麻使用疑惑や日大による隠ぺい疑惑を記した「告発文書」が送付されていた

▼元麻薬取締官は覚醒剤の成分が尿から検出される期間について約10~12日としたうえで、日大が尿検査を見越して隠ぺいに及んだ可能性を指摘

 部員の逮捕容疑は乾燥大麻約0.019グラムと覚醒剤の成分が入った錠剤約0.198グラムを所持したというものだ。しかし、所持罪に問うにはいずれも規制薬物であることの認識が必要となる。しかも、大麻の使用は処罰の対象外だし、初犯で所持量が0.5グラム未満の微量であれば、大麻については起訴猶予の可能性も出てくる。

 現に報道によると、この部員は人からもらったと供述する一方で、錠剤のほうは使っていないし、覚醒剤だとも思っていなかったと否認しているという。警察への通報遅れや部内における規制薬物のまん延疑惑について、8日の会見で日大がどのような説明をするのか注目される。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサー編集部とオーサーが共同で企画したキュレーション記事です。キュレーション記事は、ひとつのテーマに関連する複数の記事をオーサーが選び、まとめたものです】

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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