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睡眠時間が短いと新型コロナの後遺症が増える? 後遺症を残しやすい人・残しにくい人

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

新型コロナの後遺症(罹患後症状)を軽減するためには、事前にワクチンを接種しておくことが重要という研究結果が増えてきました。さて、新型コロナの後遺症を残すリスクが高いのはどういう人か、解説したいと思います。

ワクチン接種と新型コロナ後遺症

まず、正式に病名が変わるのは「5類感染症」の移行時なので、ここでは新型コロナと記載させていただきます。

新型コロナに感染した人が後遺症(罹患後症状)に悩むことがあります。呼吸困難、長引く咳、疲労、脱毛、うつ・気分の落ち込み、不眠、ブレインフォグ(思考力・集中力の低下)など、多種多様です。

過去の研究から、重症になりやすい人が新型コロナの後遺症を残しやすいということが分かっています(図1)。

図1. 新型コロナの後遺症を発症しやすいリスク(種々の文献をもとに筆者作成)(イラストはソコスト、イラストACより使用)
図1. 新型コロナの後遺症を発症しやすいリスク(種々の文献をもとに筆者作成)(イラストはソコスト、イラストACより使用)

さて、後遺症に対する新型コロナワクチンの有効性については色々な研究があります。

120万人のスマホデータを解析し、ワクチンを2回接種することで、感染後の後遺症リスクが半減したことを示したイギリスの大規模研究があります(1)。ワクチン接種回数が増えるごとに後遺症のリスクが減っていくというデータもあります(2)。

また、ワクチン接種歴が少ないと新型コロナの後遺症を残すリスクが高いとされており(3)、重症化リスクだけでなく後遺症リスクを減らすためにも接種しておくことが重要と考えられます。

ワクチンの接種回数が少ないと、強い症状が出たり、炎症を起こしたりする頻度が高くなります。これが軽度で済むため、後遺症のリスクが低減するのでしょう。

睡眠時間が短いと後遺症リスクが高い

スウェーデンから、睡眠時間と後遺症のリスクの関する研究結果が報告されました(4)。新型コロナワクチンを2回接種した人のうち、6時間未満の短時間睡眠の人では、6~9時間の睡眠時間の人と比べて、新型コロナ後遺症のリスクが56%上昇することが示されています(図2)。

図2. 睡眠時間と新型コロナ後遺症リスク(参考資料4をもとに筆者作成)
図2. 睡眠時間と新型コロナ後遺症リスク(参考資料4をもとに筆者作成)

上述したようにワクチン未接種の人では後遺症のリスクが高くなることが示されていますが、短時間睡眠かつ未接種だと後遺症のリスクは91%上昇するという結果になりました。

また、この研究では9時間を超えた長い睡眠時間の場合も後遺症リスクが高くなるとしています。過ぎたるは及ばざるがごとしということでしょうか。

まとめ

新型コロナワクチンによる予防戦略だけでなく、適切な睡眠時間を確保することや運動することは、一般的な健康増進においても重要なことです。

軽症の新型コロナの場合、1年後には後遺症はほとんど残らないとされていますが(5)、中等症以上になった患者さんからは「自分がそうなるとは思っていなかった」という話もよく耳にしますので、予防可能なものは予防するという考え方が重要です。

特に、子どもの場合、ワクチン接種によって小児多系統炎症症候群(MIS-C)という合併症を効果的に予防できることから(6)、接種率の低い層に向けて今後どのように情報発信していくのかが課題です。

(参考)

(1) Antonelli M, et al. Lancet Infect Dis. 2022;22(1):43-55.

(2) Azzolini E, et al. JAMA. 2022; 328(7): 676-678.

(3) Landry M, et al. Emerg Infect Dis. 2023;29(3). doi: 10.3201/eid2903.221522.

(4) Xue P, et al. Transl Psychiatry. 2023;13(1):32.

(5) Mizrahi B, et al. BMJ. 2023;380:e072529. doi: 10.1136/bmj-2022-072529.

(6) Watanabe A, et al. JAMA Pediatr. 2023;e226243.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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