タワマンは子どもの近視予防になるか? 室内の明るさを計測してみた
子どもの近視予防には、1000ルクス以上の明るさを週11時間以上浴び続けるのが有効。そんな研究発表が注目され、11月7日放送のNHK総合の「朝イチ」と「クローズアップ現代+」でも取り上げられた。
テレビで取り上げられたからといって、すべて鵜呑みにすることはできないが、子どもを近視にさせたくない親には気になる情報だ。
その学説によると、近視予防で推奨されるのは積極的に屋外で遊ばせることだという。屋内では、昼間でも300ルクス、窓際でも800ルクス程度なのだが、屋外では木陰でも数千ルクス、日向は数万ルクスになる。だから、1日2時間以上屋外で遊ばせて、明るい光を浴びることが近視予防につながると説明された。
そこで、気になったのが、タワマンと呼ばれることが多い超高層マンションの室内。周囲に日差しを遮る建物がない超高層マンションで、南向き住戸は室内に入る日差しが多く、明るいことこの上ない。
南を向いた超高層マンションの室内に入ると、晴れた昼間はあまりのまぶしさに目を細めてしまうほど。それほど明るい超高層マンションの室内は何ルクスになっているのか。試しに、超高層マンションで完成した建物内に設置されているモデルルームに入って、計測してみた。
実際の超高層マンション室内で明るさを計測してみた
向かった先は、住友不動産のシティタワー恵比寿。山手線恵比寿駅から徒歩7分のところに建つ地上23階建て全310戸の大規模超高層だ。現在、第5期の販売が始まるところで、建物内にモデルルームがある。このマンションは周囲に背の高い建物がないため、日当たりのよい住戸が多い。そのなかの南向き住戸に照度計を持ち込んで計測してみた。快晴の11月8日の昼時。立冬の日なので、太陽は低めだ。
超高層なら南向きの窓際で2万8000ルクスの明るさに
まず、直射日光がまったく入らない廊下は380ルクス。一般的な室内(昼間、照明を付けていない)の明るさで、近視予防の効果は望めない。
次に、カーテンを開けたリビングの窓際で計測してみた。直射日光を浴びた照度計は、2万8000ルクスを示した。想像以上の数値である。
レースのカーテンを閉めて計測しても1万ルクスあった。考えてみれば、室内とはいえ、太陽の直射日光を浴びる場所なので、屋外の日向並み数値になるのは当然だろう。「窓際でも、800ルクス程度」というのは、家を南向きに建てず、窓が小さい外国の話かもしれない。
さらに、レースのカーテンを閉め、窓から5メートルほど離れた場所で計測すると、1000ルクスだった。やはり、超高層マンションの室内は明るい。
「タワマンは、子どもの近視予防に有効」
といえるかどうかは、医学の専門家の判断にお任せしたいが、「タワマン上層階・南向きならば、屋外並に明るい」ことは確かだ。
北向きの超高層住戸で計測してみると
超高層マンションの南向き住戸は確かに明るい。しかし、夏は暑い可能性もあるので、近年はあえて北向きや西向きの住戸を選ぶ人もいる。その北向きや西向き住戸の明るさはどうか。それについては、私の都心拠点が21階の北向きなので、そこに移動して計測してみた。時刻は午後3時近くになっており、晩秋の日はすでに傾いていた。
北向きなので、日差しは入らない。しかし、窓が大きいので、いつも室内は明るいと思っていた。そこで、窓際で計測すると、3600ルクスもあった。屋外の日陰並といえるだろう。
試しに窓から3メートルほど離れたダイニングテーブル近くで計測すると、1000ルクスあった。
超高層マンションでは、北向き、西向き住戸の窓を大きくするケースが多い。少しでも外の光(反射光)を採り入れようとするわけだ。その結果、北向き、西向きでも室内は十分に明るいことがわかった。
今回注目されている学説で、「1000ルクス以上」とされているのは、室内のガラス越しでもよいのか、それとも屋外に限るのかについては言及されていない。
室内でガラス越しの場合、通常の板ガラスで紫外線は4割程度カットされる。現在、多くのマンション、一戸建てで採用されているペアガラスやエコガラス(Low-Eガラスともいう)では、紫外線はさらに大幅にカットされる。つまり、紫外線が関係していれば、「日当たりのよいタワマンの室内は近視を予防する」とはいえないことになる。
が、それはタワマンと呼ばれる超高層マンションに限った話ではなく、一戸建ても含め、すべての住宅内でガラス越しの日差しを浴びても近視予防の効果は小さい、ということに……。その場合、「室内でゲームばかりしている子は近視になりやすく、外で遊ぶ時間が長い子は近視になりにくい」という、さして驚きのない結論に結びついてしまいそうだ。