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渡辺、広瀬、豊島の頂上決戦続く? 藤井聡太最年少挑戦? 羽生100期目挑戦? 激熱の王将戦挑戦権争い

松本博文将棋ライター
王将位通算12期を誇る羽生善治九段(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 渡辺明王将(35歳)への挑戦権を争う王将戦が激熱の終盤戦を迎えています。

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やはり強い羽生善治九段(49)王将戦リーグで3勝目 挑戦権獲得に望みをつなぐ

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 11月11日におこなわれた2局の結果、挑戦権争いは以下の4者にしぼられました。

広瀬章人竜王(4勝1敗・順位3位)

藤井聡太七段(3勝1敗・順位5位)

豊島将之名人(3勝2敗・順位4位)

羽生善治九段(3勝2敗・順位5位)

 広瀬竜王、豊島名人は現在、竜王戦七番勝負で頂点を争っている、現棋界のトップです。現在は豊島名人が3連勝で、竜王獲得まであと一歩と迫っています。

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豊島名人(29)竜王戦3連勝 歩を1枚補充で詰めろ逃れの詰めろの変化&打ち歩詰め回避で奇跡的大逆転

 広瀬竜王は王将戦リーグでは豊島名人に完勝しています。その一番も大きくものを言って、現在は王将挑戦権争いのトップに立っています。また棋王戦でもベスト4に進出。ここから竜王位防衛を果たし、さらには王将、棋王と獲得する可能性も残されています。

 渡辺王将は棋聖、棋王も併せ持つ三冠。A級順位戦では5連勝。今期成績は21勝4敗で勝率1位にランキングされるなど、絶好調です。渡辺王将(三冠)、広瀬竜王、豊島名人のタイトル戦となれば、現棋界の頂上決戦がまた続くことを意味するでしょう。

 王将戦リーグにおいて、現時点で広瀬竜王はあと1勝、藤井七段はあと2勝すれば、他者の成績にかかわらず挑戦権を得る「自力」の権利を得ています。

 デビュー以来、タイトル初挑戦はいつかとずっと注目され続けてきた藤井七段。2017年の王座戦本戦トーナメントでは準決勝にまで進出し、挑戦まであと2勝と迫ったことがありましたが、斎藤慎太郎七段に敗れています(斎藤七段はその後に中村太地王座に挑戦しタイトルを獲得しました)。

 残る5局の日程は以下の通りです。

11月14日

▲藤井聡太七段(3勝1敗)-△久保利明九段(1勝3敗)

11月15日

▲糸谷哲郎八段(1勝3敗)-△豊島将之名人(3勝2敗)

11月19日

▲藤井聡太七段(?勝?敗)-△広瀬章人竜王(4勝1敗)

▲羽生善治九段(3勝2敗)-△糸谷哲郎八段(?勝?敗)

▲三浦弘行九段(1勝4敗)-△久保利明九段(?勝?敗)

 まずは11月14日。▲藤井聡太七段(3勝1敗)-△久保利明九段(1勝3敗)がおこなわれます。藤井七段は挑戦、久保九段は残留を目指しての戦いとなります。

 ここで藤井七段が勝てば4勝1敗で広瀬竜王と並びます。そしてその時点で、2敗の豊島名人、羽生九段の挑戦権獲得の可能性がなくなります。

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 最終戦の▲広瀬-△藤井戦が4勝1敗同士の決戦となれば、勝った方は無条件で挑戦権を獲得できます。

 藤井七段は久保九段に負けると4勝2敗。挑戦権獲得の可能性は残りますが「他力」となり、条件は厳しくなります。

 11月15日の▲糸谷哲郎八段(1勝3敗)-△豊島将之名人(3勝2敗)戦。現時点で豊島名人は「他力」の立場にあります。先におこなわれる▲藤井-△久保戦で藤井七段が敗れれば、挑戦の可能性はつながります。その上で▲糸谷-△豊島戦で豊島名人が勝てば、4勝2敗で先に全日程を終え、最終戦の▲広瀬-△藤井戦の結果待ちとなります。

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 王将戦リーグでは、成績が3人以上並んだ場合には、順位上位2人がプレーオフに進出するという規定があります。

 もし最終戦の結果で4勝2敗が複数人出た場合には、順位が大きくものを言います。その点では、順位4位の豊島名人は、順位5位の羽生九段、藤井七段よりも有利です。最終戦で広瀬竜王が藤井七段に敗れて4勝2敗となり、豊島名人も4勝2敗で並べば、羽生九段、藤井七段が仮に4勝2敗でも、順位上位が優先するという規定により、広瀬竜王と豊島名人がプレーオフに進出します。

 ここでもまた、広瀬-豊島戦が実現するのか。そして豊島名人は竜王位を奪取すれば、将棋史上4人目の竜王・名人同時制覇。さらに王将位を獲得すれば、三冠復帰となります。

 羽生九段はかなり条件の厳しい他力待ちです。14日に藤井七段、あるいは15日に豊島名人が勝った時点で、最終戦を前にして、挑戦の可能性はなくなります。

 平成の間中、ずっとタイトル戦に登場していた羽生九段。もし今期王将戦での挑戦がなければ、17歳から18歳で新人五段だった1988年度(昭和63年度)以来、31年ぶりにタイトル戦に出場する機会がなかった年度となります。

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 順位3位の広瀬竜王と順位5位の羽生九段、藤井七段の3者が4勝2敗で並んだ場合には、羽生九段と藤井七段は同順位ですので、2者ではなく3者のプレーオフとなります。その場合には、羽生九段と藤井七段がまず戦って、その勝者が広瀬竜王と対戦します。

「もう一局、羽生-藤井聡太戦が見たい!」

 というファンも多いことでしょう。

 2017年度の朝日杯では、藤井現七段は準決勝で羽生現九段、決勝で広瀬現竜王を破って優勝しています。今期王将戦のプレーオフで、その朝日杯の組み合わせが再現される可能性もまだ残されています。

 羽生九段の通算タイトル獲得数は、現在史上最多の99期です。通算100期達成を望むファンもまた、多いことでしょう。

 いずれにしても、まずは14日の▲藤井聡太七段-△久保利明九段戦に注目です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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