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やはり強い羽生善治九段(49)王将戦リーグで3勝目 挑戦権獲得に望みをつなぐ

松本博文将棋ライター
2敗まではまだ挑戦権獲得の可能性あり(記事中の画像作成:筆者)

 11月11日。東京・将棋会館において王将戦リーグ▲三浦弘行九段(45歳)-△羽生善治九段(49歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は18時22分に終局。結果は92手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段はこれで3勝2敗。渡辺明王将(35歳)への挑戦権獲得に望みをつなぎました。敗れた三浦九段は1勝4敗で、リーグ陥落が決定しました。

羽生九段、自在の境地で四間飛車

 後手番の羽生九段の作戦は、角筋を開いたままの四間飛車でした。これは王将戦リーグの久保九段戦で、久保九段が採用した作戦でした。

【参考記事】

羽生善治九段(49)25手詰を読み切って王将戦リーグ2連勝 次戦いよいよ藤井聡太七段(17)と対戦

 相手が指した作戦を、今度は自分が持って指してみる。オールラウンダーの羽生九段だからこそできる、自在の境地でしょう。

 ▲羽生-△久保戦では、角交換から向かい飛車となり、互いに角を打ち合った後、羽生九段が上部に厚みを築く進行となりました。

 本局▲三浦-△羽生戦では、三浦九段は穴熊に組んでいます。

 中盤、盤上の中央で戦いが始まりました。三浦九段は飛車を成り込む一方で、羽生九段は穴熊の金をはがし、と金を作ります。難しい戦いが続きましたが、羽生九段が2枚目のと金を作ったあたりでは、わずかにリードを奪ったようです。

 最後は羽生九段が正確な速度計算に基づき、飛車を切って三浦玉に迫ります。三浦陣が受けが難しく、それを上回る速度で羽生陣を攻略することはできないため、三浦九段は投了しました。

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 勝った羽生九段はこれで3勝2敗。順位が最下位の5位のためかなり条件は厳しくなりますが、他の結果次第では、まだ挑戦権を獲得する可能性は残されています。

 11月19日におこなわれる最終戦一斉対局では、糸谷哲郎八段と対戦します。

 一方の三浦九段は星が伸びず、今期はここで陥落が決まりました。最終戦では、久保利明九段との対戦となります。

 ▲三浦九段-△羽生九段戦と同日におこなわれた▲久保九段-△糸谷八段戦は18時21分、135手で久保九段の勝ちとなりました。その結果、両者ともに1勝3敗となり、糸谷八段は挑戦権獲得の可能性がなくなりました。

 14日におこなわれる▲藤井聡太七段(3勝1敗)-△久保利明九段(1勝3敗)戦で藤井七段が勝てばその時点で2敗勢(現在は豊島名人、羽生九段)の挑戦権獲得の可能性はなくなります。そして最終戦の▲藤井聡太七段-△広瀬章人竜王戦が4勝1敗同士で、挑戦者決定戦となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『あなたに指さる将棋の言葉』(セブン&アイ出版)など。

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