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永瀬拓矢王座(30)王将リーグ2勝目! 角換わりの熱戦を制して豊島将之九段(32)に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月25日。東京・将棋会館において第72期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲永瀬拓矢王座(30歳)-△豊島将之九段(32歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は18時47分に終局。結果は135手で永瀬王座の勝ちとなりました。リーグ成績はこれで永瀬2勝1敗、豊島1勝1敗です。

永瀬王座、角換わりの熱戦で勝利

 永瀬王座先手で戦型は角換わり腰掛銀。今年の王座戦五番勝負における両者の対戦でも見られたように、序盤はあっという間に進んでいきます。

豊島「仕掛けられて、受け止める展開で」

 39手目、永瀬王座が中段に桂を跳ねて戦いが始まりました。豊島九段は銀得をしましたが玉形は乱れます。永瀬王座は馬(成角)を作り、歩をたくさん手にして、バランスが取れた中盤となりました。

永瀬「(57手目)▲6六馬あたりまではそういう感じで指してみようかな、とは思ってたんですけど。ただなんか、こちらが銀損している将棋なんですけど、それに見合う代償・・・。本譜だと、代償がないかな、とも思ったので」

豊島「▲6六馬と引かれてから、けっこういろいろ、手がお互い広いので、一手一手考えているような感じで。4一の飛車が使えてないんで、使える展開にして。そうですね、でもそのあとはけっこう一手一手、手が難しかったように思います」

 58手目、豊島九段が飛車を4筋から8筋に戻したところで、永瀬王座の手が止まります。そして24分考え、3筋の歩を突き出しました。

永瀬「(最善手は)▲3五歩ではなかったのかもしれないですけど。ちょっと▲4五歩と▲3五歩、どちらかかなとも思ったんですけど。本譜だと▲3五歩で(その次、歩を取り込みながら)▲3四歩と2手かけた割に、どれぐらい効果があったか、難しい気もしました。自信はないですね。本譜、進めてみると、銀損が残ってしまったので。わるくてもおかしくはないのかな、と思いました」「こちらとしてはずっと難しいと思っていたので、ポイントの一手はちょっとわからないんですけど。全体的には、こちらは銀損した仕掛けをしたんですけど。ただ、それに見合う代償が難しいのかなと思ったので。中盤のあたりの▲3五歩などが少しポイントなのかな、とは思います」

 昼食休憩のあとはスローペース。豊島九段は70手目に1時間4分、永瀬王座は73手目に51分を使いました。

永瀬「局面がどうなっているのか。基本的になんというか、銀損していると、枚数自体は少ない。盤上の枚数が少ないかなと思ったので。8八の馬がはたらかないと、その分、厳しいのかな、と思ったので。局面がどうなっているか、考えていました」

 82手目。豊島九段は10分考えて、相手陣3筋に歩を打って垂らします。中段では互いの駒がスクラムのように押し合う形となりました。

永瀬「難しいのかなと思ったんですけど。なんかでも、ただ、△3七歩とされるとこちらももう、有効な手がないような気がしたので。▲2三桂成△同銀▲3三歩成で。最後▲6五銀のような感じで寄せに入っていって。難しければ、こちらとしてはちょっと失敗してる感じもしたので、仕方ないのかな、と思っていました」

豊島「6五で清算はまずいと思ったんですけど。△3七歩がちょっとよくなかったのかな、と思いました。そうですね、うーん。まあ△3七歩のところでなんか代えて、別の手・・・。まあ、難しいのかもしれないですけど。ちょっとなんか△3七歩で普通にいって、金取られて、歩を成られてで、なんか一手負けコースみたいな感じになってしまったんで。まあでも、△7六歩とか△8六歩のたぐいも無理気味かなと思ったので、手がわからなかったです。なんかもうちょっと考えないといけなかったかもしれないです」

 難解な中盤戦を制したのは永瀬王座。相手の飛車を取って、寄せに入ります。

永瀬「(100手目)△4四角と打たれた局面が、後手の耐久力がかなり上がったので、▲9一金と香車を補充したんですけど、その手が見合う手になっていたかどうか、ちょっとわからないなと思いました。形勢がいいなと思ったのは・・・。うーん、ずっと難しいと思ったんですけど。(115手目)▲5六香と打って、その香で少し手厚くなる展開になれば指せている可能性も。ただ、指しているときはわからなかったので。いいと思った局面はよくわからなかったような気がします」

 豊島玉が受けなしに追い込まれる一方、永瀬玉はきわどく詰みません。永瀬王座が勝って、リーグ2勝目をあげました。

永瀬「これで折り返しということで。次が羽生先生とで。一週間ないぐらいでしたかね。なので、ここから短い間隔で対局がついていきますけど、せいいっぱい準備してがんばりたいと思います」

豊島「すぐ次の対局があるので、しっかり準備をしてがんばりたいと思います」

 両者の通算対戦成績は豊島10勝、永瀬14勝となりました。

リーグはいよいよ佳境

 藤井聡太王将への挑戦権を争うリーグは、ここからどんどん進んでいきます。10月中の対局日程は以下の通りです。

10月26日

▲羽生善治九段(3勝0敗)-△渡辺明名人(1勝2敗)

10月28日

▲豊島将之九段(1勝1敗)-△糸谷哲郎八段(0勝2敗)

▲近藤誠也七段(1勝2敗)-△服部慎一郎五段(1勝1敗)

10月31日

▲永瀬拓矢王座(2勝1敗)-△羽生善治九段

 現在リーグは羽生九段が3連勝でトップを走っています。ここから羽生九段が渡辺名人、永瀬王座を連破すると、展開次第では、最終戦の豊島九段戦を前にして挑戦権獲得が決まる可能性もあります・

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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