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【K-POP論】8月に来日のチョンハ。新曲Snappingについて「海外ファンはまずイントロを!」

8月24日、25日の来日が発表になったチョンハ。6月25日の新曲発表会@ソウル

8月24日、25日にK-POPの女性ソロ歌手、チョンハが日本にやってくるのだという。新宿でファンミーティングなどを行う。

圧倒的なダンスパフォーマンスと、伸びやかな歌声で知られる。

1996年生まれの彼女は、2016年から韓国で一大ムーブメントとなったオーディション番組「PRODUCE101」に出演。実力を評価され、番組から派生した期間限定グループ「I.O.I」の一員としてデビューした。その後2017年にソロデビュー、という経歴を持つ。

そんな彼女の8月の来日に向け、6月下旬に彼女の新曲「Snapping」のショーケース(新曲発表会)を取材してきた。さらに「Snapping」の作曲家と振付師にもそれぞれ話を聞いてきた。8月の日本公演ではこの新曲披露が目玉となることは確実だからだ。

チョンハの新曲「Snapping」。事務所公式。

この曲、はっきり言って簡単な曲ではない。

ストレートな「季節感あふれる~」という感じではないし、女子の恋心を分かりやすく歌うものでもない。

ソウルでのショーケースは、メディアに準備された席が満席となり、2階席も開放されるほどの熱気だった。そこで事務所から配布された資料にある、曲説明にちょっと面食らってしまった。

「別れの後。スッキリとしない愛の終わり。もう一度最初に戻りたくもある、心の関係の終わり。そこに近づいてこそ、目に映る相手の弱い姿に反応しはじめる」

「チョンハは指をはじきながら呪文をかけるように心を空にし、目を覆いながら疲れた心を投げ捨てる。午後12時を越え、新しい朝を迎える」

「Aメロの余裕あるグルーブから、サビに近づくほどに拡散していく躍動的な編曲が印象的。以前よりも派手で深みのあるチョンハの世界を感じることができる」

少し、難しい内容だった。

6月24日のショーケース@ソウル。本稿写真すべて筆者撮影
6月24日のショーケース@ソウル。本稿写真すべて筆者撮影

仕方がない。チョンハは2018年下半期あたりからのK-POPのトレンドのひとつに当てはまる存在なのだ。

”ガールクラッシュ”

女性が憧れる女性。つまりカッコよさがポイントになる。他にはRed Velvetのスルギ、Twiceのジョンヨン、f(x)のクリスタルなどの名前も挙がる。

実際に、今回の公式MVのYouTubeコメント欄には、韓国の女性ファンがこう書き込んでいる。

プロデュース101の時から、第2のイ・ヒョリ、第2のテヨン、第2のソンミ、第2のヒョナのようだと表現されてきたけれど、もう”第2の”という修飾語は必要がないほどの成長を感じます。チョンハというアーティストが、カッコよくて尊敬を受けるに値する存在となりましたね。オンニ、愛してます。

”ガールクラッシュ”に挑みます

筆者自身は、そこをよく分からずに迷い込んだおじさんだ。昨年(2018年)10月、チケットが手に入りフラッとチョンハの日本初ファンミーティングに足を運んだ。

2010年のKARA、少女時代のブームからまんまとK-POPにハマった筆者は、その時すっかり熱が冷めていた。2017年頃から始まった09年前後のデビュー組の解散のためだ。

6月のソウルでのショーケースにて
6月のソウルでのショーケースにて

しかし、昨秋にチョンハを観て、また「おもしろいな」と思えた。彼女の伸びやかな歌声。楽屋でちらっと目にした、日本のスタッフと親しげに話す姿。こんな原稿を記した。【コラム】「K-POP、またハマってみるか」そう思わせたチョンハの日本初ファンミーティング。

その時もなんだか「女性ファンが多いな」とは思ったが、あまり多くのことは気にかけなかった。しばらくK-POPから離れていたため、アンテナも鈍りまくっていたからだ。

そこから10ヶ月近くが経ち、今思う。「ガールクラッシュ」をあえておじさんが読み解いてみようじゃないかと。

KARA、少女時代の頃から感じてきたことだ。K-POPのガールズグループでの会場での楽しさは「おじさんと若い女性がファンとして居合わせること」だった。性別も世代もまったく違うのに、同じものを観て楽しいと思える。

この時代、左右、男女、世代、さまざまな違いがある。そこを乗り越え、同じ場所の同じ時間に同じコンテンツを観るためにそこに集まるのだ。チョンハの場ではおじさんはきっと少数派だ。だからこそ、8月24日の来日までじっくりその「観点の違い」を楽しんでいただければ。ガチの外語大韓国語専攻の筆者による、必死な分析です。女性対女性の関係性の中に、おじさんが飛び込んでいきます。

チョンハの振付師から、カバーダンサーの皆様へのアドバイス

とはいえ、まだまだ1ヶ月半ほど時間があるから、じっくりとやっていこう。今回は6月の取材から印象的だった言葉の紹介を。

6月末に作曲を担当したパク・ウサン氏にソウルで話を聞いた。「MAMAMOO」などに楽曲提供してきた男性作曲家だ。タイトルの意味、そして曲の世界をこう説明していた。

「Snappingとは、指をパチンと弾く意味です。楽曲の世界では、チョンハは彼氏に浮気をされてしまった女性の設定です。別れをもう決心しています。彼女は少し動揺こそせど、怒っているわけではない。”I KNOW I KNOW”といい、それを受け入れる。そして”Snapping”で指を弾いて、次のステップへと進むのです」

同じくソウルで話を聞いた、振り付けの担当したチェ・リアンさんは「個人的にいちばん気に入っているのは、サビで指を鳴らすシーン」と言い、こんなメッセージをくれた。

振り付け担当のチェ・リアンさん。チョンハのダンスの学校時代からの友人でもあるという
振り付け担当のチェ・リアンさん。チョンハのダンスの学校時代からの友人でもあるという

「カバーダンスをされている方には、ぜひチョンハの指の動きにもご注目いただきたいです。彼女はそういった細かい点の表現が上手い。こちらが作ったものに対して、趣旨をしっかり理解し、消化したうえで表現するのです」

ちなみに、6月のショーケースでは筆者本人からチョンハ本人に韓国語で質問を投げてみた。

――今春の日本でのファンミーティングも成功裏に終わるなど、海外でもチョンハさんへの関心が高まっています。いっぽうで外国のファンは歌詞の内容をすぐに把握することが簡単ではありません。そういった方々のために、”非言語”でもこの楽曲を楽しむ方法をオススメしてほしいです。

彼女は「質問、ありがとうございます」と御礼を言ってくれたあと、こう答えた。

「確かに、すぐにはわからない部分はあるでしょう。いっぽうで音楽は心と心で感じ合うものでもありますよね。この歌の場合は、イントロの部分からスカッとするようなリズムが流れます。まずはそこから楽しんでいただければ」

別れ際に、少し動揺してしまう。その瞬間の女性の心理を描く。Snapping。チョンハは指を弾いて、次のステップへ進もうとするのだ。今後、ひと夏を通じてじっくりと研究していきます。作曲家、振付師のインタビューを掲載していきます。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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