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高齢者が新型コロナウイルス感染症に注意すべき3つのポイント

斉藤徹超高齢未来観測所
高齢者はコロナウイルスの弱者(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

4月7日には7都府県に緊急事態宣言が発令されました。少なくとも、今後5月連休明けまでは不要不急の外出を控え、感染症対策に留意しつつ生活していくことが私たちに求められています。

4月8日時点で国内感染者数は4,257名となり、死亡者数も81名を数えています。(厚生労働省発表)年代別では20〜50代の感染者数が多いものとなっていますが、重篤化(重症・死亡)するのは60代〜90代が多い結果となっています。明らかに新型コロナウイルスで被害を被る可能性が高いのは高齢者です。

厚生労働省データ(4月8日)
厚生労働省データ(4月8日)

では、高齢者は日常生活を送る上で、どのような事に留意すべきでしょうか?3つの密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避ける、こまめな手洗い、マスクの着用などが奨励されていますが、これ以外に特に高齢者が留意すべきポイントはあるのでしょうか?

そこで、1月中旬に国内で新型コロナウイルスが感染してから、各県から随時発表されている感染者発生事例や新聞情報などから、高齢者に特有の感染の経路ポイントをまとめてみました。ちなみに今回中心に見たのは緊急事態宣言が出た7都府県以外の県です。大都市部では感染経路は不明が多い一方、地方都市は比較的発生源やクラスターが辿りやすい傾向があるからです。

1.子供からの「もらい感染」に気をつける

まず、比較的目立ったのが、同居、別居を問わず、子供から両親が感染してしまったというケースです。高齢になると自然と行動範囲は狭くなるので感染リスクは若年層よりも相対的に低くなりますが、子供からの感染はなかなか防ぎようもありません。

発生事例では、医療機関の職員30代の娘から同居する両親に感染したケース(3月・高知県)、息子が飲食した店で女性から感染、その後母親に感染してしまったケース(3月・福井県)がありました。また、東京から帰省した30代の女性から母親と祖母が感染したしまったケースなども出ています(4月・佐賀県)。緊急事態宣言を受け、実家に帰省を考える学生や子供たちもいると思いますが、自分自身が感染していないことをきちんと確認(14日間程度の自宅待機)した後に帰省することが賢明です。思わぬことで両親に感染を移してしまうことになりかねません。

2.介護施設利用でも一定の留意が必要

次に留意すべきなのが、デイサービスや老人保健施設といった介護施設での感染です。兵庫県では、介護老人保健施設内にあるデイサービスで、利用者や職員が感染し、25人のクラスター(感染者集団)が形成され、うち2人は死亡しました(3月・兵庫県)。また福岡県でも介護老人保健施設内でクラスターが発生し、入所者6名と職員2名が感染しています。福井県でもデイサービス事業所に勤務する介護従事者の感染が判明しました(4月・福井県)。

介護施設でも、特別養護老人ホームなど要介護度が高い施設は出入りが少ないため比較的感染リスクは少ないと言えます。一方、要介護度の低いデイサービスなどは人の出入りが多いため、結果として感染が広がってしまったのでしょう。

本人の健康維持など、デイサービスなどの介護施設の利用を一概に否定するものではありませんが、利用する際には施設の感染対策などを十分に確認した上で利用することが望ましいでしょう。

3.高年齢者に高い院内感染リスク

3番目に留意すべきは病院の院内感染です。これは入院している高齢者患者が院内感染してしまう場合が多く、年齢も80代や90代の高齢者が感染してしまうケースが多いようです。入院していることはすなわち何らかの疾患を抱えているわけであり、高齢者としての感染リスクも一段と高いものになります。

大分県では、国立病院の院内感染から、患者が転院した複数の医療機関で感染が拡大、結果20名以上のクラスターとなり、その中で80代、90代の患者10名近くが感染してしまいました(3月・大分県)。山梨県でも病院の准看護師から90代患者が感染したケースが発生しています(4月・山梨県)。

3番目の入院患者が感染してしまうケースでは、なかなか自己防御は難しいでしょうが、いずれにしても、自らの周りの環境にどの程度のリスクがありそうか。本人のみならず、家族や兄弟がきちんと確認する必要があると言えるでしょう。

不要不急の用事をどのように考えるべきか

これ以外にも、通夜・会食、葬儀に参加したところ、その中の1名に感染者がおり、4名の集団感染が発覚したケース(3月・愛媛県)。参加していた合唱団メンバーに感染者がいたことでメンバーが集団感染、さらにはメンバーのひとりが通っていたスポーツジム経由で感染が拡がるといった高齢者感染のケースも生じています(3月・岐阜県)。

感染はいまのところ生じてはいませんが、直近でも東京巣鴨の地蔵通り商店街が縁日を開催し、高齢者が集い社会的批判を浴びるという事態も発生しています。

 いずれにしても自分は大丈夫だからと安易に過信せず、自らの日常行動を今一度見直してみることが大切でしょう。自らの命は自分で守るという当事者意識がいま高齢者の方々にも求められていると言えるでしょう。

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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