１２月、ノルウェーでは大多数の与党・野党が共同で難民申請者と難民に対する規制案を提出。その後、シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣（進歩党）が修正を加えた案を提出したが、「厳しすぎて、非人間的」だと批判を浴びていた。

首相は「移民の社会統合を成功させ、持続可能な移民法を成立させるために必要な手段」と、５日の記者会見で移民大臣と共に修正案を発表した。

政府が掲げる規制強化の理由

• 難民申請者数の増加を防ぐ
• 難民にとって、自力で生活し、教育を受け、労働をせざるをえないモチベーションとなる
• 大規模な家族の呼び寄せを制限
• 強制結婚の阻止

家族呼び寄せまでに３年。一人でどれほど異国の地で耐えられるか？

移民大臣は、家族の呼び寄せができる条件に、ノルウェーでの「４年間」の教育、もしくは労働を条件としていた。だが、「家族無しで、人間はそれほどがんばれない」と批判を浴びる。結果、規制案は４年から３年に変更。政府に頼らず、家族を自給自足で養えるように、約４００万円の貯蓄を条件としている。

平和になれば、帰国し、母国の立て直しに貢献するべき

また、移民大臣は「難民は自分たちの国が平和になったら、帰国し、母国の立て直しに貢献するべき」と話した。ノルウェーの福祉制度が他国と比べて魅力的にならないようにするため、永住ビザの取得条件を強化する。条件として、滞在期間は３年から５年に延長、最後の１年は自力で生活できる能力が必要とされる。

家族が仕送りを目的に、未成年の子どもを単独でノルウェーに送りこみ、道中に子どもが悲惨な目にあっているとする大臣。未成年には永住ビザ取得を困難にさせる案も提示された。移民大臣は、「親と一緒にいられることが、子どもにとってベストだ」と以前から強調している。しかし、希望を失わせるとして、「子どもにとって最悪だ」とノルウェー赤十字などは批判。

与党は大多数を得るために、他党からの支持が必要だ。合意体制にある自由党だが、満足はしていない。多くの政党との協力体制で始まった政策議論にも関らず、「あまりにも右寄り政党の政策が優先されている。これは進歩党の政策だ」と自由党党首は国営放送局での討論で不満を漏らした。野党・最大政党の労働党は、厳しく長い滞在期間条件には反対すると、公式ＨＰで発表した。

右翼政党支持者からは称賛の声

首相（保守党）は、難しい移民政策の責任をもつ移民大臣の努力を会見で褒めた。移民大臣の所属する進歩党は、移民政策に最も否定的で厳しい。同大臣は、自身のフェイスブックで、「長年の戦いの末、今日、歴史的な規制案をついに提出できました」と投稿。

コメント欄には称賛する意見が殺到し、「もっと厳しくしてほしい。他の政党ではだめだ」、「素晴らしい。あなたが次期首相になると信じている人は大勢いる」、「反対政党の言い分にはうんざり」という内容が続いた。

１２月、入国管理局局長は、ノルウェーに来る難民申請者は１～１０万人に及ぶ可能性があると発表。３月に同局は数を修正し、５千人～５万人と今年の予想数を大幅に減らした。提出案はこれから国会で審議される。

Photo&Text: Asaki Abumi