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近づく7・18三浦春馬さん1周忌に心穏やかでない春友さんたちへ「藍染め」を

篠田博之月刊『創』編集長
手染めで仕上げた試作品(筆者撮影)

 三浦春馬さんが他界した7月18日が近づき、心穏やかではいられないという女性たちも多いようで、そういう投稿も増えている。昨年のあの日から心にぽっかり穴が開いたたままだという女性たちが、その心の整理をするきっかけになるのかどうか。以前から言われている「偲ぶ会」が開催されるのかどうかなど、気になることも多いと思う。

 そういう状況下にある春友さんたちへ、このたびひとつの提案をすることにした。名付けて【春友さん「藍染め」プロジェクト】だ。ちょっと名称が大げさかな(苦笑)。

きっかけになった読者投稿

 きっかけは発売中の月刊『創』7月号に載せた兵庫県のみかさん(55歳)の投稿だった。「天外者」に出てきたあの藍染めが何としてもほしい、地元に問い合わせてもらちが明かないので知事さんにお願いしてみようか、というものだった。実際、その藍染めがほしいという女性たちが相当数、『日本製』で紹介された徳島県のBUAISOUに問い合わせたらしい。「天外者」の藍染めは、三浦春馬さんの求めに応じて、BUAISOUが特別に染めたオリジナルなもので、販売はされていない。

 でも何としてでもほしいという人が多いようなので、全国の春友さんへのグリーフケアを続けている『創』編集部としてはいろいろ考えた。このところ全国の春友さんから連絡を受けているのだが、その中に徳島在住で藍染めをやっているという女性がいた。  

 harura(ハルラ)さんというペンネームで呼ぶが、彼女自身、「天外者」で観た藍染めがほしいという思いから半年前、藍染めを始めたという。

 そこで彼女と相談し、その藍染めを自分たちでやってみて、それを送ってはどうかと考えた。既に彼女たちは作業に取り掛かっている。そして昨日、試作品ができたので、ここにその写真を公開することにした。ハンカチ、といっても50センチ×50センチ、結構大きなものだ。

既に1カ月がかりの作業になりつつある

 1枚1枚、手染めをしていくことで仕上がるわけで、やってみると予想以上に大変。京都の染物屋さんに布を取り寄せることから始まって、 抜染用の型紙や材料を買ったり、試し染めも何回もトライして試行錯誤。1カ月がかりの作業になりつつある。

「雪花絞り」(筆者撮影)
「雪花絞り」(筆者撮影)

 ちなみに作業工程はharuraさんによるとこうだ。

 まずは「天外者」にも出てきた「雪花絞り」の行程だが…

①アイロンで折りを着けながら三角に折る

②板締めをする。板でハンカチを挟んで輪ゴムで固定

空気に触れないところは藍染液につけても染まらない

③空気に触れさせる→藍染液につけるのを交互に

板締めを外すと模様が出てきます(harura(ハルラ)さん撮影)
板締めを外すと模様が出てきます(harura(ハルラ)さん撮影)

④板締めを外し、水洗いし、天然藍特有のアクを石鹸で洗う

⑤仕上げ洗濯、アイロン

 次に バッセン工程

1,藍染したハンカチを洗濯、アイロンしておく

2, 事前に図案をカットして作っておいた型を配置。 デザインを決める

3,バッセン用の漂白のりを型を置いてつける

4, 丸1日乾燥。 乾いたら白く絵がハッキリしてくる

5, 糊をぬるま湯で洗い流し、洗濯しアイロン仕上げします

 作業工程の写真を幾つか公開したが、詳細は月刊『創』7月号のカラーグラビアで紹介する。

 作業はかなり大変だ。でも自分と同じ藍染めがほしいという気持ちを持った人たちがいることを思いながら、各地の同じ思いの人たちのためにと思って、苦労すること自体がグリーフワークになると言える。

春友さんの中には様々な技の人たちが…

ペンネーム「ムーンストーン」さんの切り絵
ペンネーム「ムーンストーン」さんの切り絵

 この何カ月か『創』編集部にはたくさんの春友さんたちが連絡をくれているのだが、その中には『三浦春馬 死を超えて生きる人』に作品を掲載したパズル作家や、『創』6月号で春馬さんの作品への思いを書いた元ライターの女性など、プロやそれに準じた人も少なくない。あるいは「趣味でやってます」と言っても7月号巻頭グラビアに切り絵を載せたペンネーム「ムーンストーン」さんのようにかなりのレベルの人もいる。

多くのファンを獲得している海扉アラジンさん

 そもそも切り絵といえば、『創』の表紙を毎号、切り絵で飾っている海扉〈カイト〉アラジンさんだって、切り絵は独学で始めたという女性だ。毎号『創』に掲載して反響が寄せられている彼女の作品は、ますます磨きがかかっている。

多くのファンがいる海扉アラジンさんの切り絵(『創』8月号表紙)
多くのファンがいる海扉アラジンさんの切り絵(『創』8月号表紙)

 haruraさんの藍染めもまだ半年の経験とはいえ、なかなかの出来栄えだ。本人のメッセージはこうだ。

《どうしてもあのハンカチが欲しくて藍染をはじめました。沢山の方にご指導ご協力いただき半年後阿波天然藍のハンカチ(雪花絞り)を手にすることができました。その時の感動が忘れられません。今では人生の目的となりました。

 本物の阿波天然藍を使用した藍染ですが素人の作品なので至らない点もあるかと思います。ご理解いただけますようお願いいたします

 春友さんを想い、心を込めて作りました。

 天然藍の持つ素朴な色合い、あたたかさをお届けできれば幸いです。》

とても良い藍の色が…(haruraさん撮影)
とても良い藍の色が…(haruraさん撮影)

 今回、オリジナルで作ってもらっている藍染めは2種類。ひとつは阿波天然藍の雪花絞り。「天外者」にも出てきたものだ。もうひとつは全くのオリジナルで馬とキセル。「天外者」からイメージしたものだが、ハルラさんによれば《春友さんの中には馬グッズや馬柄をよく集めてらっしゃるという話しを聞きますので、ミックスして。藍染良さを活かしながらキセル、馬、桜をデザインしたいと考えてます》

 作業はとても大変なので、とりあえず雪花絞りを100、馬とキセルを20、作ってみることにした。

 利益目的ではないので、希望者には実費負担でさしあげることにした。といっても材料費など実費だけでできあがったもの1枚につき2000~3000円はかかる目算だ。それを計120仕上げて7月に発送する。恐らく抽選になると思うが、申し込み方法などは7月7日発売の『創』8月号に載せる予定だ。

全国の春友さんが連携すればいろいろなことが可能に

 『創』に毎号、春友さんたちのたくさんの投稿を載せているが、同じ思いを持った人たちがこんなにたくさんいることを知って救われた、死んでしまおうかと思ったが考え直した、という人も多い。

 全国に存在する春友さんたちはSNSで連携し、コミュニティを作っている人たちも多い。しかもそれらが春馬さんの映画の再上映を求める動きのように、大きな力になるケースも増えている。それぞれの方たちが思いや技を出し合えば、いろいろなことができる。またそうすることが、7・18以来の喪失感からの回復を求めるグリーフワークになっているわけだ。

 来るべき7・18をどう乗り越え、魂の回復をどうやってはかるのか。今回の藍染めをめぐる活動がその一助となれば幸いだ。

 なお現在、その7月7日発売の『創』8月号に掲載する投稿を募集中だ。メールにて下記へ送ってほしい。できれば「○○在住 名前 〇歳」という掲載する時のための情報を末尾につけてほしい。名前は匿名でもペンネームでもかまわない。

mail@tsukuru.co.jp

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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