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「これからやっぱり非常に大事な時期」十代最後の対局で防衛を果たした藤井聡太棋聖、記者会見コメント全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

――棋聖戦3連覇達成の率直な感想を。

藤井聡太棋聖「まだ対局が終わったばかりなのであまり、それについては実感がないんですけど。今回、永瀬(拓矢)王座を挑戦者に迎えての番勝負で。厳しい戦いになるかなと思っていたので、その中で結果を出せたことはうれしく思っています」

――7月19日が20歳の誕生日。今日が十代最後の公式戦。タイトル獲得9期は歴代9位。

――上位8人は全員、永世称号資格者。

藤井「そうですね・・・(長考)。そうですね、永世称号というのは、いまの段階では意識するわけではないですけれど。やはり、積み重ねていった先にそういったものが見えてくるのかな、と思いますし。今後はより一層精進して、そういうところを目指していけたらとは思っています」

――永瀬王座との最初のタイトル戦。

藤井「今シリーズを振り返ると第1局が結果的には完敗で。第2局も早い段階でこちらが苦しくしてしまったという将棋だったので。まずはそういった、序盤の精度を上げなくてはいけないのかな、というのを感じました。あとは第1局で2回千日手になって。自分にとっては初めてのことだったんですけど。やっぱり普段の対局以上に体力が求められるような展開になったと思いますし。だからそういったところもなんというか、もっと向上させなくてはいけないのかな、とは感じました」

――第1局、第2局の反省が、第3局、第4局にどう活かせたか。

藤井「第1局と第2局では、作戦の面でちょっと差をつけられてしまったというふうに思ったので。第3局からはより入念に準備が必要かな、というふうに思って臨みました」

――22手目△2三歩の新手について。

藤井「あ、はい、そうですね。△2三歩(飛車取りに歩を打つ)はあの局面に進めば指そうというふうに思っていたんですけど。ただちょっと、そのあと(25手目)▲3五歩と突かれた局面で方針がわからなくなってしまったので。局面に対する理解がもっと必要だったのかな、というふうにも感じています」

――まとまった研究時間が取りづらくなっている?

藤井「対局が少なかった時期に序盤についてある程度また、考え直したところもありますし。定跡よりやっぱり、局面の理解が重要だと思うので、そういうところをよりしっかりしていきたいと思っています」

――地元愛知でタイトル3連覇を決めた。

藤井「今回、地元の名古屋の万松寺様で対局場を用意していただいて。以前、見学にうかがったこともあったんですけど、今回の対局で訪れることができてうれしく思いましたし。また、大盤解説会も今回開催していただいて。地元の方に多く対局を見ていただいた中でこういった結果を出せたことは、うれしく思っています」

――今シリーズを通じて成長を実感するところは。

藤井「先ほども少しお話した通り、やっぱりその、序盤の課題というのは感じたので、それをなんというか、今後修正していけたらなと思っています」

――師匠(杉本昌隆八段)から誕生日ケーキをプレゼントされたのは初めて?

藤井「あっ、はい、えーっと?(首をかしげる)そうですね、はい、師匠からケーキをいただいたのはおそらく初めてだと思います(笑)。師匠からは毎年1月に、お正月にお年玉をいただいていたんですけど。たぶん、次からはないと思うので、その代わりに今回ケーキをいただいたのかな、と思っています(笑)」

――20歳を迎えるにあたって新しくチャレンジ、取り組んでみたいこと。

藤井「いまは対局が続いているので、すぐになにか始めてみたいということはあまりないんですけど。二十代になるということで、これからやっぱり非常に大事な時期だと思っているので、しっかり取り組んでいきたいと思っています」

――デビューしてからそろそろ6年。ここまで重ねてきた実績をどう思う?

藤井「そうですね・・・(長考)。タイトル戦に初めて挑戦したのが2年前のこの棋聖戦だったと思うんですけど、それ以降はタイトル戦の機会を多く作ることができたのはよかったかなと思っています。ただ、これまでの実績よりは実力を高めていくことが大事だと思っているので、それをしっかり意識して取り組んでいけたらと思っています」

――十代最後の公式戦で勝利したことについて。

藤井「また20日も対局(王位戦七番勝負第3局)があって、あまり、区切りというふうには思ってはいないんですけど(笑)。まあただ、そうですね、十代という点でもいい形で終えることができたと思うので。またそうですね、次の対局でも体調をしっかり整えて、いい状態で臨めるようにと思います」

――棋士として二十代という時間について。

藤井「そうですね。実力を高めていくために今後の数年というのは非常に大事な時期になってくると思うので、そういう意識を常に持って取り組んでいきたいと思っています」

――視聴者にメッセージを。

藤井「対局を見ていただき、ありがとうございました。今日も難しい将棋だったんですけど、なんとか、防衛という結果を出すことができてうれしく思っています。明後日から20歳ということになりますけど、対局は変わらず続くので、また次の対局にもしっかりいい状態で臨めればと思っています。引き続きよろしくお願いいたします」

(藤井棋聖の言葉はできるだけそのまま、記者からの質問は簡略に記述)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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