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イギリス初公式ストーム・アビゲイル

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
イギリス初の公式ストーム・アビゲイル(11月13日,METOSAT))

イギリス気象局初の公式ストーム

今月12日から13日にかけ、イギリス北部を低気圧が発達しながら通過し、各地に激しい暴風をもたらしました。瞬間的には35メートルから40メートルの猛烈な風が吹き、現在(現地13日6時)も警報が出されている地域があります。

イギリス気象局は厳重な警戒を呼びかけるとともに、イギリス気象局として初の公式暴風「ストーム・アビゲイル(Abigail)」と発表しました。

A-Z of UK storm names 2015/16(Metoffice.UK)
A-Z of UK storm names 2015/16(Metoffice.UK)

イギリスではこれまで、被害をもたらした激しい暴風に対してマスコミが呼び名を付けることはあっても、イギリス気象局が公式に命名することはありませんでした。

しかし、この冬からイギリス気象局とアイルランド気象局は合同で、試験的な試みとして激しい暴風に対して名前を付けることを発表しました。

命名の方法はアルファベットのAから順に、交互に女性名、男性名を付けるというもので、気象局のフェイスブックやツイッターで名前の候補を募り、Abigail、Barney、Clodaghというように21の名前を選んだそうです。

日本とイギリスの防災意識の違い

このような試みは、アメリカのハリケーンや台風アジア名にありますが、日本ではなじみがありません。今から15年前に台風にアジア名を付けることが正式に決まったときも、日本はてんびん座ややぎ座など星座を呼び名として、人名は避けました。

一方、イギリス気象局は、災害をもたらす気象現象に人名を付けることは警戒を呼びかける手段として有効との考えです。

お国柄といってしまえば簡単ですが、「台風第13号」や「急速に発達する低気圧」と無味乾燥と言うべきか、客観的に表現する日本と、アビゲイルやバーニーといった人名で表現するイギリスとの考え方の違いはどこからくるのか、と考えさせられました。

ただ、防災情報を的確に伝えようという考えは同じです。日本人の感覚から言うと、台風・花子や低気圧・太郎といわれてもしっくりきませんが、だからといって私は爆弾低気圧などと物騒な名前で呼ぶのも賛成できません。

注目を集めるために、少々過激な、強い表現がいいのか、それともイギリスのように親しみやすさ、分かりやすさが適当なのか。ヘッドライン(見出し)が重要視される今、防災情報の伝え方も発想の転換が求められているように思います。

【参考資料】

イギリス気象局(Met Office):Met Office officially names Abigail as first storm,12 November 2015

イギリス気象局(Met Office):Name our storms,8 September 2015

気象庁(JMA):台風の番号の付け方と命名の方法

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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