ドリンク1本から「配達料無料」 auのサブスクに新たな特典が加わった
KDDIが、auのサブスク会員向けにフードデリバリー「menu」の配達料が無料になる特典を追加しました。ドリンク1本でも無料で配達するとのことですが、なぜそんなことが可能になったのか、両社に話を聞いてみました。
最低利用金額なし、何度でも利用可能
KDDIの有料サブスク「auスマートパスプレミアム」(スマパスプレミアム)は、月額548円でコンテンツやスマホの修理補償、Eクーポンなどの特典を得られます。会員数は1200万以上。auの携帯ユーザーだけでなく、誰でも加入できます。
そこに6月1日から、menuの配達料が何度でも無料になる特典が加わりました。他社にも類似のキャンペーンはありますが、KDDIは永続的な特典としています。
これまでmenuには300円の基本配達料だけが無料になるサブスクがありましたが、スマパスプレミアムでは基本配達料だけでなく、距離に応じた追加の配達料や1000円未満の少額取扱料なども無料になるとのことです。
たとえばファミリーマートの「ファミチキ」を配達してもらう場合、価格は180円ですが、少額取扱料が150円、コンビニでの取扱サービス料が18円、基本の配達料が300円で、合計648円かかっていました。スマパスプレミアム会員なら、これが180円で済むことになります。
Uber Eatsの場合、月額498円のサブスクで配達料が無料になるものの、最低利用金額が「1200円」という悩ましい条件がありました。これに対してスマパスプレミアムは、最低利用金額もないといいます。
既存のスマパスプレミアム会員向けの注意点としては、これまで「最大30%」だったPontaポイントの還元は「最大10%」に下がっています(月間の上限は5000ポイントのまま)。
また、例外として「至高の銘店」のサービス料は対象外となっています。この点を除けば、「手数料や配達料がまるまる無料になる、画期的な特典だ」(menu取締役の佐藤裕一氏)と自信を見せています。
これほど条件が緩いと、「ドリンク1本」や「ファミチキ1個」といった注文を繰り返す人が出てきてもおかしくありません。配達には人件費などがかかるはずですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
KDDIでは、「たしかにドリンク1本から体験いただくことはできるが、平均のデリバリー単価はある程度のボリュームがある。便利と思っていただければ単価は上がってくる」(KDDIパーソナル事業本部 サービス統括本部 副統括本部長の大野高宏氏)と考えているそうです。
さらに今後は、取り扱い商品をフード以外にも広げた「クイックコマース」の拡大を見込んでいるとのこと。食事だけでなく日用品の配達需要が高まることで、「デリバリー単価はさらに上がる」(KDDI大野氏)と見ています。
ほかにも他社との違いとして、ゼロから立ち上げるのではなく最初から1200万の会員基盤があること、スマパスプレミアムには映画館の割引や雑誌の読み放題など、デリバリーだけの事業者にはない価値があることも強調しています。
「コロナ後」もデリバリーは伸びるか
コロナ禍で急成長したフードデリバリー市場は、コロナの終息とともに下火になるとの見方もありますが、両社はまだまだ伸びると考えているようです。
「海外ではDoorDashのようにコロナ後も伸びている。高くても利便性を買うコンビニ文化は根付いており、共働きや高齢者の買い物難民といった社会的課題の解決にもつながる」(KDDI大野氏)
「飲食店経営において確固たる部分を占めるようになっている。お店の席数にとらわれず、デリバリーやテイクアウトで売上を伸ばしていくことが定着していくだろう」(menu佐藤氏)
また、デリバリーは配達料や手数料が意外と高く、「これなら自分で行ったほうが安い」と思うこともありました。それらが月額548円で無料になるのであれば、デリバリーを多用する人はもちろん、たまに少額の注文をするだけでも元が取れそうです。
こうしたおトクなサブスクの存在が、デリバリー需要を底上げする効果にも注目したいところです。