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“魅力的”な選手じゃない?海外メジャー初制覇の韓国エイミー・ヤンのキャップにスポンサーがないワケ

金明昱スポーツライター
エイミー・ヤンの白のキャップにはスポンサーのロゴがない(写真:REX/アフロ)

 今年の米女子ゴルフメジャーの「KPMG全米女子プロゴルフ選手権」で優勝したのは韓国のエイミー・ヤンだった。34歳にして海外メジャー初制覇を成し遂げ、パリ五輪の出場権も勝ち取った。

 米女子ツアー通算6勝のベテランでもあるが、彼女のゴルフキャップにはスポンサーがついていない。今回優勝した「全米女子プロ」でも白のキャップをかぶっていたが、そこに小さく見えるのは手縫いの“ニコちゃん”マークだった。

 つまりメインスポンサーがない「無所属」の選手というわけだ。

昨年と今年の優勝もスポンサーがない状態

 エイミー・ヤンはアマチュア時代、2006年の欧州女子ツアー(LET)の「ANZレディスマスターズ」で優勝し、彗星のごとく現れた天才少女として注目された。同年にプロ転向して、08年に米女子ツアーデビューを果たす。当然、注目度の高い彼女には数年間、大手の「KBファイナンシャルグループ」がメインスポンサーとなったが、その関係は長く続かなかった。

 13年に韓国開催の米女子ツアー「KEBハナ銀行チャンピオンシップ」で初優勝し、15年から19年まで3度にわたり、タイで開催された「ホンダLPGAタイランド」で優勝。その後、19年から20年まで「ウリファイナンシャルグループ」がスポンサーとなったが、その後は支援を受けられていない。

 昨年11月の米ツアー最終戦の「CMEツアー選手権」でエイミー・ヤンが優勝した時も当然ながら無所属。そして今回の「全米女子プロ」でもそうだった。米ツアーでプレーしている韓国人選手は多いが、エイミー・ヤンにスポンサーがつかない理由は一体なんのだろうか?

「韓国企業の関心は米ツアーより国内」

 この要因について、韓国紙「国民日報」はこう指摘する。

「まず、ヤン・ヒヨン(エイミー・ヤンの韓国名)が国内ゴルフファンの間で広く知られた選手でないという点だ。それに加えて、LPGA公式サイトには韓国名ではなく、『Amy Yang』の英字で登録されている。ゴルフマーケティングを必要とする企業の立場からすれば、“とても魅力的な選手”とは言い難い部分があるかもしれない。2つ目は国内の企業がLPGAでプレーする選手に対するスポンサーを避けているからだ。韓国女子プロゴルフツアーの人気が上がり、“国内組”選手の価値は上がり続ける一方、“海外組”は国内企業の関心から徐々に遠ざかっているのが最近の傾向だ。ヤン・ヒヨンだけでなく、米ツアー通算12勝のキム・セヨンもメインスポンサーがつかないのは、そうした理由からだ」

「トレンドに合う明確な個性がない」

 米ツアーでのプレーが長い韓国選手は多いが、その中でも少し“華がない”とでも言うべきなのだろうか。

「国民日報」はこんな分析もしていた。「トレンドに合う明確な個性がないというのも(スポンサーがつかない)理由の一つだろう。ヤン・ヒヨンのスイングはアーニー・エルスのように、ほとんど力を入れずに柔らかいのが特徴。アマチュアゴルファーには真似たいスイングなのは間違いない。しかし、企業が興味をそそるには役不足だ。それよりも豪快な長打力やコンピューターのようなアイアンショット、そして精度の高いパターなど一つでも目立つパフォーマンスを持つ選手を企業は好むだろう」。

 選手のプレースタイルや個性、性格なども企業は見ているのは間違いないが、一方で選手自身の“コミュニケーション力”や“営業力”も問われるわけで、関係者との人付き合いなどにどれだけ関心を持っているのかにも左右されると思う。

 ただ、今回こうして結果を残したからには、何かしら新たなスポンサーからのオファーがあってもいいのではないだろうか。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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