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接客、おもてなし「ハロー」と「サンキュー」やめた方が良いというこれだけの理由

にしゃんた社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)
(写真:アフロ)

外国人が一気に増え「おもてなし」が国中に流行っている。日本は、その気になれば何でも早いのだと、流行りに対する反応の俊敏さ、こんな所でも確認する。○○おもてなし検定やおもてなし英会話を勉強しだしているところも出てきているようである。

おもてなしと英語がセットになっているところも多い。確かに英語は大事である。私の妻も旅館業を営んでいるが、宿泊者と頑張って英語でやり取りをしている。出身国は関係なく確かに英語は便利で広く使えることを実感としてもっている。日本で、英語教育をもっと早くから導入すべきであると強く思っている。そんな私ではあるが、今の日本での「ハロー」と「サンキュー」の使い方は、問題視している。

先日、日本最大級のアミューズメントパークに家族で遊びに行った。我が子の要望で、彼に変わって、ターキーレッグたるものを買うため、長蛇の列に一人で並んだ。20分ぐらいでやっとレジにたどり着き、お金を支払い、レシートをもらい、次に受け取りカウンターに並ぶ。

自分の受け取り番が来る。渡そうしとしてくれるスタッフが浮かべている優しい笑みからもおもてなしを感じる。彼女は、私に鳥の足を渡しながらその前後に子供に言葉をかけるような優しいトーンで一つずつの英語単語を発してくれた。

「ハロー」 「サンキュー」

ここでクイズを出したい。この接客は正しいだろうかについてである。

ちなみに私自身は、その瞬間、内心大きな落胆を感じたのだった。おもてなしを受けているより、バカにされていると思えた。むろんクルーの人は全く悪意などなく、私に対して思いっきりのおもてなしをしてくれたということも信じている。

人との関わり(コミュニケーッション)において参考にする法則があるという。「金の法則」がまずその一つで、これは自分がしてほしいことを相手にもしてあげれば良いというものである。次は「銀の法則」でこれは、自分がされたくないことを相手にしなければ良いという内容である。ほとんどの人は、上記の2つの法則を参考に人に接する。おそらく接客もそうである。この両者の抱き合わせで接せれば完璧と思える。しかし、ここには大きな欠落部分がある。

いずれも自分自分である。つまり主観で行動が決まっていることである。金と銀にはそれなりの価値はあるが、しかしそこは相手不在である。つまり、大事なのは、相手が何を求めているかを感じ取り、相手の要望に合わせられるかどうかである。金も銀も出払ったのでそれを「プラチナの法則」と言うことになる。

少なくとも、「おもてなしとは、相手の望みを期待以上に満たせられるかということ」だと解釈している。となるとプラチナ法則は外せない。もちろん、学ぶことによって主観が成長し「金の法則」にも「銀の法則」にも幅が出てくることはある。

本題に戻るが、私は日本のおもてなしにおいて「ハロー」と「サンキュー」をやめた方が絶対良いと言いたい。その理由は次のようである。

1)ここは日本である。観光客は日本に来ている。非日常を楽しみに来ている。となると、日本語での会話もこれは大事な非日常の様子となる。来日時点でわからなかったにしても、小難しい日本語はできなくとも、滞在中に「こんにちは」と「有り難うございます」くらいは分かるようになってもらえば良い。

2)日本にいる被接客は2種類ではないということ。日本のおもてなしを見ると接客者は、相手を2種類に分けて接していることがわかる。つまり相手が「日本人」か「外国人」かである。実際問題、2分割できない。少なくとも3分割すべきである。外見はあてにならない。私などは、30年日本に住んでいるし、いわゆる日本人には見えないダブル、日本国籍者や長期滞在者が増えている。

3)海外からの来客者は必ずしも英語圏出身者ではない。一説によると世界に今も7000ほどの母語が存在していると言われている。多様性が尊重されるべく世の中において、この国に「こんにちは」「有難うございます」と立派な日本語がありながら、そこまで、英語の普及に協力する必要は必ずしもない。中には、英語が嫌う人々もいる。

4) 日本語人口が多い。日本は日本語普及のために多大な努力をしている。知日派を増やそうと多くの留学生を受け入れ、海外に出向いで日本語教育を行なっている。日本語学校の先生もたゆまない努力をしている。むろん、かつて日本は諸外国や国内外の諸民族に日本語を強制してきた歴史すらもある。そんな中で「ハロー」と「サンキュー」は、日本は自己矛盾をしていることになり、日本語普及のため努力して来ている人々を欺いていることにもなる。

もう一度、整理すると相手が日本語がわかろうと分かるまいと関係はない。接客に際して、「ハロー」と「サンキュー」ではなく「こんにちは」と「有難うございます」を使うべきである。

そしてこっち(接客)側が「こんにちは」と発した時に、相手から返って来る言葉を聞いて、この人は、日本語ができるのか出来ないかの判断もできる。そしてここからも結構大事で、もしも相手は日本語が出来るとわかったら、いくら自分は英語が上手であっても、ここは日本ということもあるので、日本語で会話することが大事である。これは「おもてなし」のいろはであると信じている。

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社会学者・タレント・ダイバーシティスピーカー(多様性語り部)

羽衣国際大学 教授。博士(経済学)イギリス連邦の自治領セイロン生まれ。高校生の時に渡日、日本国籍を取得。スリランカ人、教授、タレント、随筆家、落語家、空手家、講演家、経営者、子育て父などの顔をもっており、多方面で活動中。「ミスターダイバーシティ」と言われることも。現在は主に、大学教授傍ら、メディア出演や講演活動を行う。テレビ•ラジオは情報番組のコメンテーターからバラエティまで幅広く、講演家として全国各地で「違いを楽しみ、力に変える」(多様性と包摂)をテーマとする ダイバーシティ スピーカー (多様性の語り部)として活躍。ボランティアで献血推進活動に積極的である。

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