スリランカ 再び注目。20日に新大統領が決まる。数日前に選ばれた暫定大統領が再任される可能性は揺らぐ
今日(7月20日)、スリランカは再び世界の注目を浴びることになる。スリランカの国会で新大統領が選出されるのだ。昨日(7月19日)、ゴーターバヤ・ラジャパクシャ前大統領の後継者として、3人の候補者が指名された。今日、スリランカ国会が召集され、国会議員による無記名投票が行われ、3人のうち勝者がスリランカの新大統領として宣誓することになる。
9日、数十万人の反政府デモ隊がスリランカ大統領ゴーターバヤ・ラジャパクシャの公邸を取り囲み、彼は海外に逃亡して電子メールで辞表を出した。15日(金)、国会はラジャパクサ大統領の辞任を受理し、翌日、新大統領選出の手続きが開始された。スリランカで今まさに新大統領選出のカウントダウンが始まっている。
当初は4人での選挙が予想されていたが、有力候補の一人であった野党サマギ・ジャナ・バルウェガヤ(SJB)のサジット・プレーマダーサ野党指導者が選挙前日(19日付)に立候補を自ら取り下げたことにより、3人に絞られた。
(今回の大統領選を風刺した政治漫画。当初4人の予定が1人減った。)
国民議会で多数を占めるスリランカポドゥジャナペラムナ(SLPP)党の全面的な支援は、ラニル・ウィクラマシンハ暫定大統領に集中するとみられていた(ちなみに、SLPPはラジャパクシャが創設した政党であり、その点では、自らが大統領職などの辞任に追い込まれた後も、国会におけるその力は依然強い。)そんな中、SLPP所属のデュラス・アラハッペルマ前教育大臣が野党との連携強化を約束して立候補を表明し、SLPP党内は二分されることになる。野党指導者のサジット・プレーマダーサは立候補を取り下げ、デュラス・アラハッペルマへの支持を表明した。この一連の流れにより、有力候補と目されていたラニル・ウィクラマシンハの当選が危ぶまれることになっている。
現時点で、スリランカではデュラス・アラハッペルマが次期大統領になるとの憶測が流れており、また、サジット・プレーマダーサが首相になるとも言われている。もちろん実際に結果を見るまでは推測に過ぎない。
(今回の大統領選を風刺した政治漫画。当初4人の予定が1人減った。)
現在もコロンボを中心にデモ活動が継続されており、それらを意識してスリランカでは非常事態宣言が発令されている。そしてデュラス・アラハッペルマが大統領に選ばれた場合、デモ活動などが鎮静化し、政治的安定は得られるのではないかと考えられる。その理由は簡単で、現在のデモ隊の怒り、不満、恨み、反発は全てラニル・ウィクラマシンハ暫定大統領に向けられているからだ。なぜラニルに向かうかと言うと、それは彼がラージャパクシャ一族に近く、彼を選び、残すことはラージャパクシャ一族の力をスリランカ政治に残すことにつながると考えられているためだ。
スリランカでは本来、国民の直接投票によって選ばれる大統領だが、過去に一度だけ今回のように国会議員で大統領選出した経験がある。それは1993年で、当時の大統領だったラナシンハ・プレーマダーサが暗殺されたことによって、後継者を選ぶために行われた。ちなみに今回の大統領選から名前を下げたサジット・プレーマダーサは彼の息子にあたる。
現在のスリランカの社会や経済の混乱は、政治的不安定に起因するものも決して少なくない。その点、今回の選挙で民衆が納得する候補者が選ばれ、かつ安定した政治体制を作ることが可能となれば、国内外の多くからすれば、スリランカ経済・社会状況の立て直しのための基礎がやっと整ったと評価されることになる。
(今回の大統領選を風刺した政治漫画。当初4人の予定が1人減った。)
追記:(スリランカの新大統領を選出する国会の生中継)