「ラフレクラン」から「コットン」へ。改名がもたらした、改名以上の変化。
4月12日放送のテレビ朝日「しくじり先生 俺みたいになるな!!」で「ラフレクラン」から「コットン」への改名を発表した西村真二さん(36)ときょんさん(33)。その際、改名以上に話題になったのが西村さんの変化。これまでのセンスあふれるツッコミや仕切り役からとことんイジられる新境地に一歩を踏み出しました。幾重にも、再スタートとなりましたが、ここに至るまでの葛藤をストレートに語りました。
どうにかしないといけない
西村:前の「ラフレクラン」が浸透しづらくて、笑福亭鶴瓶さんや「ウッチャンナンチャン」さんら錚々たる方々が名前を紹介してくださる時に噛んでしまったり、間違えられたりすることが本当に多かったんです。
ネタ番組に出してもらっても、ゲストの方が「さっきの〇〇のネタをやっていた人が気になりました」とネタの内容は頭に残っているけれど、コンビ名は残ってないみたいなことが頻繁にありました。
これは、どうにかしないといけない。その思いが2~3年ほど前からはありまして。それが今年に入って結実したという流れでした。
きょん:改名自体も大きなことなんですけど、それを発表した「しくじり先生―」で西村さんが大爆発してくれたんで、それが本当に大きかったですね。
西村さんの面白いところを、そこにいらっしゃった「オードリー」の若林さんとか「平成ノブシコブシ」の吉村さん、「ハライチ」澤部さんらのおかげで出してもらって。
反響も大きくて、普段から仲良くさせていただいている、もう中学生さんからもすぐに連絡をいただきました。
「すごく面白かったよ」とLINEをいただいて「僕も、ああいう立ち位置をやったことがなかったので、これからも、より一層勉強していきます」といったことを返してたんです。
じゃ、そこでボイスメモで「自分らしく生きればいいんだよぉ」と送ってきていただいて。どうやら、それはボケで送ってきてくださったみたいなんですけど「なんだ、これ?」と思いつつも(笑)、すごく心に染み入りまして。
逆に言うと、新しいステージに立って、そこで何をやったらいいのかという迷いが自分の中にたくさんあったんだろうなと。だからこそ、そこにいただいた言葉がスッと入ったんだろうなと思いました。
「まな板に乗れ」
西村:僕は、これまで「NON STYLE」の井上さん、「ネルソンズ」の青山さん、「アインシュタイン」の河井さん、このお三方に特にお世話になっていて、いろいろなお言葉もいただいてきました。
このお三方は、いわば“殿堂入り”みたいな位置にある方々なんですけど、僕も「しくじり先生―」の後に放送作家の樅野太紀さんにいただいた言葉がすごく響いてまして。
それが「西村、まな板に乗れ」という言葉でした。
「しくじり先生―」の後にLINEをくださったんです。
確かにお前は“料理人”としていい味を作れる。そこらへんにはいない腕前だ。でも、その先には「フットボールアワー」の後藤さんもいる。「くりぃむしちゅー」の上田さんもいる。さらにその先には明石家さんまさんもいる。近いところだと「パンサー」の向井がいるし、「アインシュタイン」の河井もいる。となった時に、お前は“まな板に乗れる能力”“食材になれる才能”があることを気づいてほしい。
僕にとっては、この時にいただいた言葉が衝撃的だったんです。今まで10年間は「うまいことやろう」とか「ここで斬新な例えをしよう」とか「まだ手付かずのツッコミを出そう」とか、そういう方向ばかりを考えていたんです。
でも、樅野さんに言っていただいたのはそれとは逆の世界でした。
それ以降、バラエティーの見方も変わりました。今まで「ロンドンブーツ1号2号」の淳さんとか、そういう立ち位置の人ばかりを見ていたんですけど、見る対象がガラリと変わりました。
萎えていた
それくらい「しくじり先生―」が大きな影響を与えてくれたんですけど、これも流れというのか、実は、テレビに対するスタンスやコンビでのスタンス、そういうものに対して、すごく迷っているし、半ば、萎えていた中での収録だったんです。
前の仕事から飛び込み。相方と打ち合わせることもなく。
バラエティーに出ても、何か困ったらきょんがボケる。そこに僕が70点くらいのツッコミをして、なんとなくワンセットとしてまとまってはいく。「『ラフレクラン』も良かったね」とは言われるかもしれないけど、その日の収録で1位をとれるようなことはない。
自分の中でそういうモヤモヤというか、慢性的な忸怩たる思いもあって、テレビに対するモチベーションがかなりしぼんでしまっていたところだったんです。
だからこそ「とにかくネタだ!」ともなってまして。ネタではねて、賞レースで結果を出す。結果を出せば、自ずと良い流れが生まれる。
自分たちはそっち側の人間だし、もし、今回テレビでウケなくてもオレらには劇場があるし、その時はその時だ。
そんな流れと思いで臨んだのが「しくじり先生―」で、しかも、前の仕事からギリギリで収録に飛び込んだので、いつもならコンビ間でいろいろと練り上げる打ち合わせみたいなこともできないままの収録だったんです。
本当に打算もなく、ありのままの自分を出して、言われるがままに、自分の人生の答え合わせみたいなことをそのまま伝えているだけ。僕の感覚でいうと、そんな感じだったんですけど、目の前が盛り上がっていることは分かる。でも、今までとは違う感覚なので、笑わせているというよりも、笑われているという感じもする。
そんな時間が過ぎていき収録が終わったら、担当のディレクターさんとかプロデューサーさんが拍手してたんです。何が起きたのか分からないくらいでしたし、その拍手が何の拍手で誰に向けられているのかもピンとこない。そんな状況でした。
きょん:これは1年目でも、5年目でも、出なかった味だろうなと思います。
相方はすごく努力をするタイプなんです。僕は右脳人間なので、その場での感覚で動くんですけど、相方はきっちりと準備をする。
でも、10年経って柔軟性というか、丸みというか、遊びの部分が出てきた。そこに、皆さんの優しさが染み込んでいって、あんな感じのはじけ方になったのかなと僕は思っています。
コートを広げてくれる
西村:今までは、自分が勝手に決めたコートの中でプレーしていたんだろうなと。そのコートの中で、テニスで言ったら、サイドラインぎりぎりのショットを打ってやろうとか、サッカーならば見たことのない軌道のシュートを打とうだとか。しかも、プレー全体をスタイリッシュにというか、とにかくうまくやろうと。
でも、それが「しくじり先生―」で皆さんが違う自分を引っ張り出してくださいました。
別にコートから出ても、思いっきり打てば、皆さんがコートを広げてくれるというか。今まではゴールにシュートを入れないと点数が入らないと思っていたんですけど、客席に向かって思いっきりシュートを打っても、それはそれで盛り上がって、ある意味、点数がすごく入ったりする。こういう世界もあるんだなと。
呪縛が解けたというか、その場を楽しんで、うまくいかんかったらうまくいかんかったで「オレら、めっちゃすべったな」と思えるようにもなってきたというか。
きょん:その変化は横で見ていてもすごく感じます。
イベントなんかでも、今は、僕よりも相方の方が前に出たりもしますし、僕がスベったら相方が何とかしようとするし、またその逆もあるし。
感覚的な部分が大きいですけど、今、いろいろなことがうまくまわりだしたなと思うんです。そこに改名という事実も乗っかってますし、うまくまわりだしたことと改名が合わさると、より一層、なんだかいい感じ!という空気が出てくるとも思うんですよね。
だからこそ、今年は勝負の年だと思いますし、ここからより一層、頑張らないといけないのは…、せーの!
西村:いやいや、はずいわ(笑)。あんまりないで!インタビューで「せーの!」で答える流れというのは。
ま、この流れでの賞レースですよね。まず「ABCお笑いグランプリ」で優勝して「キングオブコント」で優勝して、僕らは漫才もやってるので「M-1」では決勝には行って。そうなったら、今年の一番良き形を実現することができるかなと。
きょん:「『コットン』に変えて、調子良くなったじゃないか」という空気を作るのは、僕たち自身ですし、なんとか自分たちで自分たちの背中を押したいですね。
本当にね、流れが変わったというか、ネタ以外のコーナーとかでも、今は本当に楽しいんです。相方が変わったというか、どんどんいって、どんどんボケるし、どんどんスベるし。
西村:結局これだと、変わった結果、どんどんスベるというところに行きついてるから(笑)。スベる時もあるけど、ウケる時もあるから。そこも込みで話してもらえると、うれしい限りです。
(撮影・中西正男)
■コットン
1984年6月30日生まれで広島県出身の西村真二と、87年11月18日生まれで埼玉県出身のきょん(本名・富士田恭兵)が2012年に「ラフレクラン」を結成。英語のラフ(笑い)とフランス語のレクラン(宝箱)を組み合わせて命名。ともにNSC東京校17期生。NHK新人お笑い大賞優勝をはじめ、数々の賞レースで決勝の常連に。さらなる飛躍を目指し、今年4月からコンビ名を「コットン」に変更。4月12日放送のテレビ朝日系「しくじり先生 俺みたいになるな!!」で改名を正式発表し、その際の西村のはじけ方も話題となる。吉本興業の芸人がデザインしたオリジナルTシャツの売り上げを競う「Up-T presents T-1グランプリ」にも参戦中。また、単独ライブ「COTTON」を5月29日、30日に東京・ヨシモト∞ホールで開催する。