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速報!「行政書士試験」合格発表~合格者4571人・合格率11.4%、行政書士の活かし方

竹内豊行政書士
令和最初の行政書士試験の結果が先ほど発表されました。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

一般社団法人行政書士試験研究センターは、昨年11月10日に実施された行政書士試験の合格者を、本日午前9時に発表しました。

行政書士試験に合格された皆さま、おめでとうございます!

お一人おひとり、合格までの道のりは困難なこともあったと思います。しかし、「合格」を勝ち得たこの瞬間、いい思い出に変わったのではないでしょうか。

残念ながら、不合格だった方はまずはゆっくりとお休みください。次回の試験は、心身共に英気を養ってから考えましょう。私自身、2度目の合格でしたが、不合格の経験は決して無駄ではありませんでした。

さて、今回は、令和元年度の行政書士試験の結果と行政書士制度について、そして行政書士という資格の「活かし方」を提言したいと思います。

合格者の方や行政書士について興味のある方はもちろんですが、セカンドキャリア「人生100年」をどのように生きていこうか模索されている方のご参考になるかもしれません。

令和元年度試験結果・試験の概要

令和元年度 行政書士試験の結果

一般社団法人行政書士試験研究センターが今朝発表した、令和元年度の試験結果は次のとおりです※カッコ内は前年度。

受験者数39,821人(39,105人、前年比+716)

合格者数4,571人(4,968人、前年比▲397)

合格率11.4%(12.7%、前年比▲1.3)

このように、前年と比べると、やや厳しい結果となりました。

行政書士試験の特徴~受験資格の制限がない

行政書士試験の最大の特徴は、受験資格の制限がないことです。したがいまして、年齢、学歴、国籍等に関係なくどなたでも受験できます。

行政書士試験の概要

例年次のとおり行われています。

試験日時:例年11月の日曜日 午後1時~午後4時

試験場所:全国主要都市で行われます

受験手数料:7千円

試験内容

1.行政書士の業務に関し必要な法令等(46題)

~憲法、行政法、民法、商法、基礎法学及び法令(択一式及び記述式)

2.行政書士の業務に関連する一般知識等

~政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解(択一式)

試験基準・難易度

300点満点中、6割以上が合格とされています。

行政書士ができること~広範な業務

行政書士は法律系の国家資格です。しかし、名称を聞いたことはあるけれど、一体どういう資格でどんなことができるのかご存知ない方は多いと思います。そこで、行政書士を行政書士法からアプローチしてご紹介したいと思います。

行政書士の目的

行政書士は、「行政に関する手続の円滑な実施に寄与し、あわせて、国民の利便に資することを目的」として業務を行っています(行政書士法1条)。

行政書士の業務

行政書士は、その目的を達成するために、「他人の依頼を受け報酬を得て」以下の業務を業として行うことができます。

1.書類作成業務(行政書士法1条の2第1項)

次の2つの分野の書類を作成することができます。

(1)官公署に提出する書類

~たとえば、建設業、風俗営業、運輸業、外国人の在留資格等の許可申請 等

(2)権利義務または事実証明に関する書類

~たとえば、遺言書、遺産分割協議書、各種契約書 等

2.代理業務(行政書士法1条の3第1項1号・3号)

作成した書類を、依頼者(申請人)に代わり官公署に提出することができます(提出代理)。また、契約その他に関する書類を代理人として作成することもできます。

3.相談業務

さらに、前述の書類(官公署に提出する書類および権利義務または事実証明に関する書類)の作成について相談に応ずることもできます(行政書士法1条の3第1項4号)。

以上のとおり、行政書士は、官公署に提出する書類と権利義務または事実証明に関する書類について作成に止まらず、提出代理、代理作成、相談業務に至るまで広範な業務を行うことができます。業務範囲が広いことが行政書士の特徴といえるでしょう(注)

(注)ただし、以上の業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができません(行政書士法1条の2第2項・1条の3第1項本文ただし書き)。たとえば、訴訟・調停に関して代理人として書類を作成すること、登記申請、税務書類の作成等が挙げられます。

行政書士は「お得」な資格

ご紹介したとおり、行政書士が業として取り扱うことができる書類は、官公署に関する書類に止まらず、権利義務・事実証明に関する書類といった、いわば「法律事務」に関する書類にまでおよびます。

このような広い権限があるにもかかわらず、行政書士試験は、やるべきことをきちんとやれば、仕事や家事の合間を上手に使って、独学でも「受かる試験」です。

つまり、行政書士は、試験の難易度に比べて、法で与えられた権限が広範囲におよぶお得な資格といえます。

行政書士という資格を活用して、自分の「好き」や「経験」を「仕事」にする人たち

「自分の『好き』なことを仕事にしたい」「自分の『経験』をセカンドキャリアに活かしたい」とお考えの方は大勢いらっしゃると思います。

しかし、仕事にするにはその相手(依頼者、つまりお客様)に受け入れてもらわなければなりません。いくら「自分が好きなことを仕事にしました。頑張ります!」「この分野は経験があります!」と言っても、すんなり受け入れてもらえるのは実際厳しいでしょう。

そこで、法的国家資格である行政書士を「信用の証し」として位置付けて活躍している方が増えています。

つまり、自分の「好き」なことや「経験」を仕事にするために、行政書士という資格を利用するという発想です。たとえば、次のような人たちが、行政書士という資格を活用して活躍しています。

・金融機関でのキャリアを活かして事業承継のコンサルタントを行う

・学生の頃から学んでいるジェンダーに関する知識を仕事にするために、生きづらさを感じている方を法的側面からサポートする仕事を行う

・公務員としての行政事務の経験を活かして、行政と市民の橋渡しを行う

・外国人の日本での生活支援を行うために、入管業務をメインに業務を行う

・高齢社会を生きやすい社会にするために、終活のサポートや遺言の普及と速やかな相続手続に関する業務を行う

・スポーツ選手のセカンドキャリアを支援するために、引退後の人生を法的側面からサポートする仕事を行う

などなど・・・

行政書士は、その広範な業務範囲を活かして、自分の「好き」なことや「経験」を仕事にできる資格です。また、定年はありません。興味ある方は、来年の試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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