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渡辺明棋王(35)パーフェクトゲームで本田奎五段(22)に完勝 棋王戦五番勝負第3局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月1日。新潟市・新潟グランドホテルにおいて棋王戦五番勝負第3局▲渡辺明棋王-△本田奎五段戦がおこなわれました。9時に始まった対局は16時41分に終局。結果は81手で渡辺棋王の勝ちとなりました。

 五番勝負はこれで渡辺棋王の2勝1敗。防衛、8連覇まであと1勝と迫りました。

 第4局は3月17日、東京都渋谷区・東郷神社でおこなわれます。

渡辺棋王、貫禄の完勝

 渡辺棋王(三冠)はA級順位戦で9戦全勝を達成しました。

 4月に開幕する名人戦七番勝負、豊島将之名人-渡辺挑戦者戦も盛り上がることでしょう。

 本田奎五段は先日、折田翔吾アマの棋士編入試験第4局で注目を浴びました。

 午前9時、両対局者と盤側の関係者が一礼して、対局開始。時節柄、盤側に座る立会人の屋敷伸之九段、将棋連盟会長の佐藤康光九段とも、マスクをしていました。

 本局は渡辺棋王の先手番です。初手は角筋を開ける▲7六歩。そして第1局と同様に、矢倉模様の戦いとなりました。

 第1局では、渡辺棋王がオーソドックスな金矢倉に組んだのに対して、本田五段がクラシカルな銀矢倉に組みました。近年の将棋界ではソフトの影響で、かつて指された形が再評価される「温故知新」が見られます。

 本局では現代風に、序盤の早い段階で渡辺棋王が攻勢を取りました。

渡辺「作戦としては、一応序盤は予定ではあったんですけど、はい」

 渡辺棋王は飛車先の歩を交換して、銀を引いて角筋を通し、いつでも本格的に攻め込める態勢を作ります。

 本田五段は囲いの側に一つ寄せていた玉を、初期位置の居玉の場所に戻しました。次にもう一つ逆側に上がれば「右玉」の形で、先手の攻めから遠ざかる形です。ただし居玉に戻った瞬間は、危険きわまりありません。

 39手目、渡辺棋王は▲4五銀と前に出て銀をぶつけ、本格的な攻めに出ます。驚くべきことに、ここではもうかなりの差がついています。

渡辺「▲4五銀は行くしかないところで、うーん、まあ、成否はちょっと、全部は読み切れていたわけじゃなかったですけど、行くしかないところなんで、まあ、行ってみたという。そうですね、うるさい格好になってるのかな、とは後から思いましたけど」

 ぶつけられた銀を取れないようではつらいところですが、本田五段は引いて辛抱しました。しかしそれでも渡辺棋王から自然な攻めが続きます。

本田「▲4五銀とぶつけられて(銀を)引くようでは、相当失敗している感じはしたんで・・・。ぶつけられるのがしょうがなかったのかもしれないですけれど、直前にもうちょっと警戒しないといけなかった感じですか・・・」

 本田五段は銀桂交換の駒損に甘んじる形で収めようとしました。しかし攻められている上に駒損では、つらい限りです。本田五段の苦境を端的に示すかのように、消費時間も差がついていきます。

渡辺「手が続く格好になれば、駒を得してるんで、手さえ続けばと思ってたんで」

 終盤も渡辺棋王は自然に指し回し、一方的に寄せ形を作りました。

 81手目、渡辺棋王は飛桂取りに銀を打ち込みました。本田五段がこの銀を取れば、角を打たれて王手飛車取りがかかります。

 本田五段は自陣に打たれた銀をしばらく見つめた後、投了を告げました。両者一礼した後、本田五段の肩ががくっと落ちました。

 渡辺棋王にとっては、これ以上はなさそうなパーフェクトゲーム。五番勝負を2勝1敗とし、8連覇まであと1勝と迫りました。

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渡辺「2週間ぐらい先なので、間に他のタイトル戦(王将戦)もあったりするんで、もう少し近くなってから考えたいと思いますけれども、はい、連覇記録を伸ばせるように、あと1勝したいなと思います」

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 本田五段にとっては、ほとんど力を出せず、不本意な一局だったことでしょう。

本田「ちょっと勝負所がなさ過ぎてひどかったです。もうちょっと、慎重に指さないといけないところが多かったかもしれません。(先手番となる第4局は)本局のような将棋にはならないように準備したいと思います」

 もちろんまだ、タイトル獲得の目がなくなったわけではありません。立ち直っての好局を期待しましょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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