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「天竺鼠」川原「両親に札束を投げつけたい」

中西正男芸能記者
絵本、個展、ネタとモノ作りへの思いを語る「天竺鼠」川原克己

 奇想天外なセンスで芸人仲間からも一目置かれるお笑いコンビ「天竺鼠」の川原克己さん(38)。コント日本一決定戦「キングオブコント」で決勝に3回進出するなど、川原さんのネタ作りの能力は高く評価されていますが、全く違うジャンルである絵本「ららら」(2019年1月17日発売、ヨシモトブックス)も手掛けることになりました。コワモテのルックスと絵本。ギャップがあるようにも思えますが、そこには川原さんの深い宇宙がありました。

家に300冊

 絵本は大好きで、実は、家にも300冊以上あるんです。ラジオなどで「絵本が好き」と言ったりもしていたので、リスナーさんが送ってきてくださったりもして、同じ絵本が5冊、6冊家の本棚に並んでいたりもするんですけどね。だから、本当に本屋の本棚みたいになっています(笑)。

 小さい頃はそんなに絵本に夢中ということはなかったと思うんですけど、好きになったのは高校を卒業して、鹿児島から大阪に出てきて(吉本興業の養成所)NSCに入ってからですね。

きっかけは谷川俊太郎

 最初は詩の世界に興味を持って、谷川俊太郎さんの本を手に取るようになったんです。谷川さんは絵本にもたくさん携わってらして、詩の次は谷川さんの絵本を見るようになった。そっから絵本の面白さを知って、気づいたら完全にトリコになっていました。

 本屋さんに行って、そうですねぇ、1~2歳の子どもが読むような絵本コーナーに行くんです。中身としたら「バババー!」とか擬音くらいしかないんですけど、それがオモロいなーと思って。それと同時に、なんとも言えない癒しも感じますし。

 ただ、周りから見たら、こんな感じのあんちゃんがまじめな顔で絵本を読んでいるので、さぞかし異様な光景やったと思いますけど(笑)。でも、大人が見ても感情が右へ左へいとも簡単に動かされる世界が絵本にはあるんです。純粋に面白いものだなと思いますし、次は自分も絵本を出したいなと思うようになったんです。

絵本もネタも同じ

 今回、絵本を出すのと同時期に、僕が作った絵や小道具などを展示する個展もやらせてもらうんですけど、よくよく考えたら、絵本も、個展も、そして僕が作るネタも、同じやなと思ったんです。

 日常生活から、絵本や個展、ネタの世界に見る人が入る。その中で、いろいろなことが分かったり、分からなかったり、感情がグラグラしたり、脳みそがバタバタしたり。いったい、何がどうなっているんだという気持ちを持ちながらも、最後、絵本を閉じる時、個展を出る時、ネタを見終わった時に面白かったなと思ってもらえたらなと。そして、根底にあるのは全部、僕が好きなことをやっているという部分。自分が面白いと思うもの、良いと思うもので見ている人も楽しんでもらえたら、それはとてもうれしいことだなと。

 今回の絵本には17作品、いろいろなパターンのお話を入れました。言うまでもなく、全部僕が好きなことを描いているんですけど、少なくともどれかは共感してもらえるものがあればいいなと思って、いろいろな味のものを17個考えました。

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40歳

 来年で、40歳になる学年なんですけど、もうそんな歳なのかと思いますね。ただ、それだけ時間が過ぎているということは、当然いろいろなことがあったということですから。今回、絵本のオビを書いてくださったのは俳優の浅野忠信さんなんです。

 僕が(TBS系)「あらびき団」で浅野忠信さんのモノマネをしていたのをたまたま浅野さんが見ていただいていたそうで、テレビで「面白かった」と言ってくださったんです。それが純粋にうれしかったですし、僕も以前から浅野さんのことが好きだったので、モノマネもさせてもらっていたので、浅野さんの事務所に手紙を送ったんです。じゃ、浅野さんからも返事のお手紙をいただいて、そこからお付き合いが始まりまして。

 浅野さんにもオビを書いていただいてますし、できれば多くの方に手に取ってもらえたらうれしいんですけどね。そうなると、ま、それ相応の印税も入ってきますし(笑)。

 もともと鹿児島の貧乏な家で、両親が大変な思いをして育ててくれましたんでね…。もし、ガッポリと印税が入ってきたら、まずはね、両親のところに行って、札束を投げつけたいと思います。まとまった印税ならかなりの束になって重みもあるので投げやすくなってくると思いますので、全力で投げつけたいなと。両親も喜ぶと思いますし、痛いよりも必死になって札を拾うと思います。たくさん投げられるように、頑張って売りたいと思います。

 すみません、絵本の話にそぐわない、いきなりのギアチェンジでしたかね…(笑)。

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(撮影・中西正男)

■川原克己(かわはら・かつみ)

1980年1月21日生まれ。鹿児島県出身。NSC大阪校26期生。同郷でNSC同期の瀬下豊と2003年にお笑いコンビ「天竺鼠」を結成する。「キングオブコント」では08年、09年、13年と決勝進出。16年から拠点を東京に移す。川原が手がけた絵本「ららら」が来年1月17日に発売される。「カバに育てられたF1レーサー」「数えきれない恋をした数学の先生」「誰のものでもないエビフライ」「どうせまた読むのに読み終わる物語」「ららら」など、17編の物語からなるオムニバス構成。また、展示イベント「天竺鼠川原克己 Maenomeri展 ~みなさんの前のめりを卵とじにします~」(東京・有楽町マルイ、12月29日~2019年1月14日)も開催する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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