Yahoo!ニュース

「ミニシアターで主演」の夢が2年半前に撮影の映画で実現。「涙のシーンは6時間泣きっぱなしでした」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『きみといた世界』に主演の中川可菜 (C)2024「きみといた世界」製作委員会

クラスの人気者の女子とコミュ障で陰キャの男子が、高校と同じに見えるが他に誰もいない謎の世界に迷い込む。元の世界に戻る条件は2人が両想いになること……。幼なじみの監督とイラストレーターで制作した青春SFラブストーリー『きみといた世界』が公開される。W主演を担ったのは中川可菜。女優デビューから10年で、ミニシアター作品で主演を飾るのは念願だったという。

カリフォルニアで人生観が変わりました

――プロフィールを拝見すると、趣味が絵を描くこと、映画鑑賞、写真撮影、旅行など多彩ですが、今一番ハマっていることは何ですか?

中川 恋愛リアリティショーの『あいの里』のシーズン2が始まって、最新話まで一気見しました。あと、『ストグラ』のゲーム配信を観るのもハマっています。配信者の方たちがゲーム世界の中で第二の人生を歩んで、職業をまっとうするロールプレイで、最近ダイアンの津田(篤宏)さんが参加されました。お芝居では出ないような感情がリアルで、すごく面白いです。1人の視点でなく、他の配信者さんからはこう見えているんだとか、いろいろな視点で観られるところも好きです。

――旅行に関しては、最近も韓国に行かれたそうですが、総合旅行業務取扱管理者など資格もお持ちですね。

中川 はい。国内や海外の旅行の企画やサポートをできる資格なので、いつか仕事にしたいなと思っています。学生時代にカリフォルニアで1ヵ月の短期留学をして、人生観が変わったんです。街の様子に文化の違いを感じて驚いたりした経験から、旅行関係の資格を取りました。

(C)2024「きみといた世界」製作委員会
(C)2024「きみといた世界」製作委員会

『アバウト・タイム』に出会って感動して

――映画もかなりの本数を観ているんですか?

中川 数はそんなに多くないと思いますけど、高校生の頃にミニシアターにハマりました。シネマカリテや新宿武蔵野館、キノシネマに通って、実話を元にした作品、ドキュメンタリー、社会性のあるもの、ヒューマン系など幅広く観ていて。昔、渋谷パルコ前にあったシネマライズで『アバウト・タイム』に出会って、すごく感動して泣きました。

――恋人を作るためにタイムトラベルを繰り返す物語ですね。

中川 それからリチャード・カーティス監督の作品を観るようになりました。ハッピーエンドが多いんですね。観た人が笑顔で映画館を出られる。私もいつか、そんな映画で主演を飾ってミニシアターで観たいという夢ができました。今回の『きみといた世界』が公開されると叶います。

――『きみといた世界』もSF×恋愛という意味では『アバウト・タイム』に通じるところがありますが、撮影したのは3年前だったとか。

中川 2年半くらい前です。長編映画では初めての主演でした。

――クラスの人気者の吉川碧衣(あおい)役は、オーディションで選ばれたんですよね。

中川 そうです。謎の世界で保健室のベッドで休んでいて、(陰キャ男子の)水野くんに「一緒に迷い込んだのが僕でごめん」と言われるシーンをやりました。

誰とでも笑顔で接する役をていねいに

――政成和慶監督は中川さんについて、「明るく人気者の反面、どことなく寂しげな難しい役柄を素敵に演じ切ってくれました」とコメントされています。

中川 そうなんですか!? 監督から私を起用してくれた理由はうかがってないのですが、碧衣は素直に演じやすかったです。

――美人で明るくてやさしくて、一緒に謎の世界に迷い込んだ水野卓に限らず、みんなが好きになる女子に見えました。

中川 誰からも好かれるタイプで、碧衣自身も分け隔てなく笑顔で接するので、そのイメージは壊さないように、ていねいに演じました。

――中川さん自身も高校時代はそんなタイプでした?

中川 似ているところはありました。私もみんなと仲良くしたかったので、グループを作ったりせずに誰とでも話していましたし、学級委員もやりました。

――自分から手を挙げて?

中川 誰も手を挙げなかったので。早く帰りたかったのと、どの委員でも放課後に残ることは変わらないと思って、「じゃあ、やるか」という感じでした。

「しっかりしてる」と言われるのは似てます

――撮影では高校生役として意識したことも?

中川 私は当時24歳で、18歳の役を演じるには6年も経って声も落ち着いたり、くだらないことで笑ったりもしなくなっていて。高校時代のテンションを思い出して、声もちょっと高くしました。

――回想シーンでは、昔の恋人に「しっかりしようとか、我慢とかしなくていいから」と言われていました。

中川 私は高校のときに奈良から1人で上京して、自分の身は自分で守らなければと気を張っていたところはありました。よく「しっかりしてるね」と言われたので、そこも碧衣に近かったかもしれません。

――優等生タイプでもあったんですか?

中川 まさしく優等生、と自分で言うのも変ですけど(笑)、すごく真面目でした。周りの子が学校を出た瞬間、スカートを折ったり制服を着崩したりしても、私は校則でダメだから、まったくしてなくて。長いスカートで第一ボタンまで締めて、勉強も真面目にやっていました。

私とは会話のテンポが合わなそう

――中川さんだったら、水野と両想いになれそうですか?

中川 おそらく好きにはなってないと思います(笑)。お友だちの関係がいいです。

――彼氏にするには何か足りませんか?

中川 足りないことはないです。碧衣は落ち着いていて、ていねいに話し掛けますけど、私自身はそうではなくて。関西弁でノリやテンポを大事にしたいタイプなんです。でも、水野くんはノリツッコミとか、してくれなそうですよね(笑)?

――確かに。涙するシーンでは自然に泣けました?

中川 気づいたらポロポロ泣いていました。

――きれいなお顔をだいぶ崩しながら。

中川 私、きれいに泣けなくて、泣き顔は崩れやすいタイプです。

――それだけリアルな泣き顔でした。

中川 たぶん6時間以上泣いていたので、完成して観たら目がパンパンになっていました。

本番で気持ちが入ればワーッと

――角度を変えて撮ったりもしたんでしょうけど、6時間も泣き続けられるものですか?

中川 もうカラカラで出ないよ……というテイクもありました(笑)。でも、押していて、自分が泣けてなくてNGになるのはイヤだなと。気持ちが入れば泣けます!

――昔から泣き芝居には苦労せず?

中川 初めの頃は泣けなくて、何テイクも撮り直したりしました。ベテランの女優さんから「泣けるようになるから大丈夫」と励ましをいただいて、今になって本当にそうだなと思います。場数を踏んだからなのか、いつの間にか本番になればワーッと泣けるようになりました。

――普段は涙もろいほうですか?

中川 そうだと思います。友だちには「泣かなそう」と言われますけど、映画館でも号泣しますし、ドラマのお別れのシーンや死のエピソードにも弱くて、ウルウルしてしまいます。

全力で走り続けて脚が上がらなくなって

――終盤の走るシーンも見せ場になっていました。

中川 あそこは大変でした(笑)。カメラマンさんが乗った車と並走していて、思ったより速いから、先に行かれたらヤバいと全速力で走りました。監督からは「いっぱい走るから力を抜いて。全速力に見えればいい」と言われましたけど、そんなうまい走り方はできなくて(笑)。若干下り坂だったから、走り慣れてないとむしろ全力でないと走れないんです。

――それで何テイクも撮ったんですか?

中川 そうです。筋肉を酷使して、脚が上がらなくなって、もう無理というのはこういうことかと、体感できました(笑)。

――普段から走ったりはしてなくて?

中川 歩くほうが好きです(笑)。走り方でNGも出ました。「私、女の子だし」と思いながら、いいフォームがわからなくて。現場にアクション指導の方がいたので、教えていただいて走っていました。

間違ったアプローチが面白いです

――2年半前に撮って、試写は最近観たんですか?

中川 はい。懐かしいなと思いながら観ていました。ここは寒かったな、ここは大変だったな、とか。あと、自分が若いなと(笑)。CGが使われていて、撮っていたときはあまりSFと感じなかったんですけど、完成して観てオーッとなりました。

――今もよく覚えていることもありますか?

中川 御殿場で9日間撮影して、気持ち的に休めなかったので、碧衣が不安で眠れないリアル感は出ていたと思います。

――特に推したいシーンというと?

中川 水野くんが碧衣は頼りになる人がタイプだと聞いて、間違ったアプローチをするところです(笑)。碧衣のリアクションもわかりやすくて、それに気づかずどんどん来る水野くんも面白いです。

公開されるか不安になった時期も

――ストーリー的にクリスマスがポイントになっていますが、中川さんにも思い出のクリスマスはありますか?

中川 大学時代、友だちの家でパーティーをしたのは楽しかったです。みんなで料理して、何円までと決めてプレゼント交換をして、青春でしたね。今年は『きみといた世界』の舞台あいさつがあるみたいです。

――中川さんにとっても、公開が最高のクリスマスプレゼントになりますね。

中川 やっと夢が叶います。(取材日は)まだ公開前で、気持ちがちょっと落ち着きません。2年半の間には「もう公開されないんじゃないか」と不安になった時期もあったので。

――インディーズ系の映画だと、撮影してお蔵入りになることもありますからね。

中川 でも、監督を信じていました。お届けできて本当に良かったです。多くの方に観ていただいて、私の代表作になったらいいなと思います。

Try-Angle提供
Try-Angle提供

好きなことを発信して仕事に活かせれば

――来年には『ゴリラホール』も公開されますが、また出演作が増えていきそうですか?

中川 そうですね。『ゴリラホール』は過去の作品を観てオファーしていただきました。そのように繋がっていけば、とても幸せです。

――ミニシアター作品に主演という目標を叶えて、次に目指すものは何ですか?

中川 もっと映画やドラマに出て、自分の役の幅を広げたいですし、モデルとしてもより頑張っていきたいです。あとはファッションとか旅行とか、自分の好きなことを発信して、何か活かせればいいなと思っています。

――旅行で行きたい国もありますか?

中川 友だちがパリに留学しているんです。私も行ったことはありますけど、現地をより知っている友だちと、ガイドブックに出てないところまで見にいきたくて。海外に行くと食事が合わないとか、体力的にしんどいという方もいらっしゃいますけど、私はそういうことがまったくないんです。カエルを食べたこともありますし、その土地のごはんは何でも大丈夫。いつかレポートとかで仕事にできたら嬉しいです。

Try-Angle提供
Try-Angle提供

Profile

中川可菜(なかがわ・かな)

1997年10月16日生まれ、奈良県出身。2010年にニコラモデルオーディションでグランプリ。2014年に女優デビュー。主な出演作は映画『罪とバス』、『ヘルドッグス』、『炎上シンデレラ』、ドラマ『ファーストクラス』、『仮面ライダーエグゼイド』、『特殊犯罪課・花島渉』など。2025年公開の映画『ゴリラホール』に出演。

『きみといた世界』

監督/政成和慶 原作・脚本/arawaka、政成和慶 製作・配給/BASARA

出演/中川可菜、高橋改、保﨑麗、阿部快征、弓削智久ほか

12月14日~27日に池袋シネマ・ロサで20:30~上映ほか全国順次公開

公式HP

(C)2024「きみといた世界」製作委員会
(C)2024「きみといた世界」製作委員会
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事