バルサに逆転優勝の可能性はあるのか?シャビの“人心掌握術”と攻撃陣の復活。
監督交代がプラスに働いたのは、間違いない。
バルセロナが好調だ。シャビ・エルナンデス監督就任後、直近の15試合無敗を貫いており、リーガエスパニョーラで首位レアル・マドリー(勝点72)を追走している。
バルセロナ(勝ち点60/1試合未消化)に逆転優勝の可能性はあるのかーー。無論、簡単なミッションではない。だが、現在のチームをクレ(バルセロナファン)が信じる要因はある。
■補強とシャビのマネジメント
バルセロナが調子を取り戻した理由のひとつに、補強がある。冬の移籍市場で、ダニ・アウベス、フェラン・トーレス、アダマ・トラオレ、ピエール・エメリク・オーバメヤンを獲得。補強担当のマテウ・アレマニーとジョルディ・クライフが、シャビ監督の要望に応じる補強を敢行した。
オーバメヤン(リーガ9試合8得点1アシスト)、フェラン(10試合4得点3アシスト)、アダマ(7試合2アシスト)、アウベス(8試合1得点2アシスト)と彼らは素早く適応して勝利に貢献してきた。
だが、それだけではない。シャビ監督の就任以降、サブの選手のパフォーマンスが上がっている。シャビ監督が指揮した28試合で、途中出場の選手が14得点を記録している。
象徴的なのは、ルーク・デ・ヨングだ。先のレバンテ戦では、決勝点をマーク。シャビ監督が来てから90分毎に1得点の割合でゴールを決めている。
ルークはロナルド・クーマン監督が獲得を望んだ選手だ。ストライカー不在にならないように、セビージャから1年レンタルでバルセロナに加入した。その選手を、クーマン前監督以上にシャビ監督が巧みに起用しているのは見逃せないポイントである。
シャビ監督の“人心掌握術”とマネジメントは確実に成果につながっている。
現役時代、彼が影響を受けた人物として挙げられるのがルイス・アラゴネス監督だ。「アラゴネスは誠実で、常に率直に意見を言ってくれた。チームのマネジメントという意味では、彼がベストだった」とはシャビ監督の弁である。
アラゴネスは2004年から2008年までスペイン代表の監督を務め、シャビ、ダビド・シルバ、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガスを重宝してクアトロ・フゴーネス(四人の創造主)を中心にチーム作りを行った。EURO2008でスペイン代表を優勝に導き、その後の黄金時代の基盤を築いた指揮官だ。
そのアラゴネスから学び、シャビ監督はバルセロナでレギュラーとサブのメンバーをうまくまとめ上げている。プレータイムが少ない選手からも監督への不満がメディアに漏れないのは、細かい気配りのなせる業だろう。
■守備とポゼッション
ピッチ上の現象に目を向ければ、現在のバルセロナは失点数の少ないチームになっている。
バルセロナは直近10試合で、クリーンシート5試合を達成。現役時代に中盤のオーガナイザーとして活躍したシャビ監督だが、ロナウド・アラウホを右サイドバックで起用するなど、堅固な守備が勝利には必要になると理解している。
とはいえ、ポゼッションを疎かにしているわけではない。リーガでのバルセロナのポゼッション率(65%)は、セビージャ(60.2%)、マドリー(60.1%)を上回りトップの数字だ。
「(レバンテ戦の勝利という結果に)満足している。ヨーロッパリーグの疲労が残っていた。我々のプレーには、改善の余地がある。だが競争的に戦えていると思う。勝者のメンタリティーの問題だ。精神面の疲れもあると思うが、良いサイクルが生まれている」
「リーガの優勝は非常に難しい。マドリーはなかなか負けない。しかし、これからの数週間で彼らが少しでも勝ち点を落とせば…」
これはシャビ監督のコメントだ。
バルセロナに自力優勝の可能性はない。マドリーの取りこぼしを期待するほかなく、カルロ・アンチェロッティ監督のチームはシーズンを通じて大崩れしていない。
ただ、バルセロナはヨーロッパリーグでベスト8まで勝ち進んでおり、タイトル獲得の可能性を残している。一時、リーガで9位まで沈んでいたことを顧みれば、この状況は想像し難かった。
シャビ監督の就任でバルセロナに劇的な変化が訪れた。だがそこにタイトルを添えられるかどうか、最後は選手たち次第である。