関東圏の穴場ずらし旅の愛好家、とらべるじゃーな！です。

１月７日、NHKで「タモリと鶴瓶のテレビDEお正月 2024」が放映されました。ブラタモリと、鶴瓶の家族に乾杯のコラボですが、例年のような旅先ロケはお休み。しかし、タモリさんの旅に関する鋭い一言が飛び出しました。

どちらが良いか　ひとり旅と団体旅行

番組内では、1981年１月２日放映「花の落語家大討論」での「どちらが良いか　ひとり旅と団体旅行」の一幕を紹介。

ある落語家が「団体旅行これ最高にいい。この団体こそ日本人の規律を重んじる伝統の表れ（中略）。みんな一緒だから何となく安らぎを感じるんだね」という発言に対し、若きタモリさんは下のように反論します。

旅の目的は安らぎという点は共通していますが、みんな一緒だからこそ安らぐのか、日常の行動から離れてこそ安らぐのかという点に、意見の相違がありました。

1980年代は、まだまだ団体旅行が盛り上がっていた時代

タモリさんがテレビで上の発言をした1980年代は、まだまだ団体旅行が盛り上がっていた時代。

「1980年代から90年代にかけて旺盛な団体旅行需要に対応する形で宿泊施設の大型化等が進んだ」とされます（観光庁資料）。

その時代背景の中、若きタモリさんが「団体旅行の悪いところ」と発言したうえで、日常の行動から離れてこそ安らぐと、個人旅行の意義を述べたのは、先見の明だったと言えるでしょう。

バリアフリーからほど遠い高齢者用のグループホーム

評論家の鷲田清一（わしだ きよかず）氏は、ある時バリアフリーからほど遠い高齢者用のグループホームを訪ね、次のように記しました。

「玄関の前には石段があり、玄関の戸を引くと、玄関間がある。靴を脱いで、よいしょと家に上がると、今度は襖。それを開けてみなが集っている居間に入る。（中略）からだの動きが、空間との関係で、ということは同じくそこにいる他のひとびととの関係で、ある形に整えられているということだ」（『感覚の幽い風景』）

鷲田氏は、あえて一般の家庭によくあるモノを残すことで、お年寄りの物忘れが進みにくくなると言います。

裏を返せば、自宅の雑多なモノだけではなく、近所の電柱、通勤電車の扉、スーパーマーケットのレジといった様々なモノが、まるで船の頑丈な錨（いかり）のように私たちの心を縛り付けているとも言えます。細々したモノが、潜在意識で「日常」の再生ボタンとなっていたのです。

その意味では、日常よく見かけるモノが余り存在しない空間なら、遠出しなくても精神は解放され、旅を楽しめるかも知れません。

タモリさんは、旅先として決して遠くない場所の「坂」を勧めることがあります。坂の多い地域に住んでいない方なら、坂は非日常を感じることができる場所です。

タモリさん18年ぶり出版　イチ推しの坂はどんな坂？

平地に慣れた足が、坂を登って下ることで、いつもとは違う何かを感じ取ります。また「上昇」や「転落」あるいは「人生」の象徴を感じるかも知れません。古代人が朝、海に下って貝を採り、夕方に家族のもとへ帰るイメージがわくかも知れません。観光地でなくても、旅はできるのです。

能登の大地震で注目を集めている断層。巨大な断層である糸魚川静岡構造線をこの目で見ることができる場所を、ブラタモリでは訪ねています。こちらも観光地ではなく、訪ねる人は非常に少ないですが、日常からかけ離れた、地球の鼓動を体感できる場所です。

【ブラタモリ・フォッサマグナ　全ロケ地】タモリさんが日本列島の起源を探る#190（とらべるじゃーな！）

タモリさんは、日常の行動から離れてこそ安らぐと考えます。その背景として、鷲田清一氏は「からだの動きが、空間との関係で（中略）ある形に整えられている」と言います。

日常の行動に関りが深い、モノや地形から人間関係までを洗い出してみて、それが少ない場所は全て旅先となり得ます。新しい年にあたり、様々なスタイルの旅を計画してみるのも楽しいかも知れません。

関東日帰りひとり旅　心をいやす自然や田舎、穴場を電車で訪ねる【厳選10選】（とらべるじゃーな！）

都内日帰り旅　人が少なく自然や歴史が感じられる穴場を電車で訪ねる【厳選10選】（とらべるじゃーな！）

年始に訪ねたい！2023年ブラタモリが訪ねた５つの町－関西編

年始に訪ねたい！2023年ブラタモリが訪ねた７つの町－関東編