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日程変更を発表したBリーグ。新型コロナによる収入減で経営とライセンスはどうなる?

大島和人スポーツライター
取材に応じる大河正明Bリーグチェアマン:筆者撮影

ポストシーズンは短縮、後ろ倒し

10日、Bリーグの大河正明チェアマンがメディアの取材に応じ、2019-20シーズンの日程変更に関する説明を行った。

2月26日にリーグ戦の後ろ倒し、ポストシーズンの短縮は既に発表されている。今回はその具体的な日時、会場が発表された。B1のクォーターファイナル(準々決勝)、セミファイナル(準決勝)は2戦先取(最大3戦)方式から1戦に試合数を削減される。クォーターファイナルが6日(水)か7日(木)、セミファイナルが9日(土)、ファイナルが11日(月)と日程が短縮、後ろ倒しされた。

B1の残留プレーオフ、B2プレーオフ、入れ替え戦もやはり短縮、後ろ倒しされる。

アリーナはB1とB2のセミファイナル以降、B1の残留プレーオフ、入れ替え戦がすべて中立地開催となった。5月9日〜11日は横浜アリーナ、5月16日〜17日は東京都大田区の片柳アリーナで試合が行われる。

参考リンク:B.LEAGUE 2019-20シーズン ポストシーズンフォーマット変更について

代替会場は辛うじて確保

以下は大河チェアマンのコメントを中心に、変更内容と背景を皆さんにお伝えする。チェアマンは議論の前提、チャンピオンシップファイナルの日程に関してまずこう述べた。

「Bリーグは全60試合を何とか集客をしながらやっていける道を模索し、2月26日に延期を決定しました。延期の決定によりポストシーズンを本来やるべき時期にリーグ戦が移行しています。したがってポストシーズンの日程が少し窮屈になる前提で、何ができるのか議論しました。

まずファイナルですが、当初予定していた5月9日から5月11日の月曜に持っていきます。ファイナルの位置づけを考えると、しっかりとした大きなアリーナでやりたい。OTTサービス(中継動画など大量のデータ通信が発生するサービス)はもちろんですが、テレビ中継があることも考え、なおかつ日本一を決める締めくくりの試合をやるとなると、11日がギリギリという判断になりました。そこから逆算して、何ができるか議論をいたしました」

ポストシーズンの日程は短縮されるが、各トーナメントの出場チーム数は維持される。そして「最大の難敵」がアリーナ確保だった。

「B1は上位4チームが(チャンピオンシップの)ホーム開催権を持ちます。そこに入る可能性があるチームを拾い集めると5月6日、7日にアリーナをほぼほぼ確保できそうという情報がありました。ホーム開催権をB1の上位チームに持ってもらうことを優先し、クォーターファイナルを1戦先勝になってしまいましたけれど行うことにしました」

日程変更の背景は?

これによりセミファイナル、ファイナルの日程が窮屈なものになった。

「セミファイナルの落ち着きどころは非常に苦しい判断でした。9日土曜日を中心に(ホームゲームができる会場を)当たりましたが確保できない。そこで元々確保していた横浜アリーナで、セミファイナルを一日2試合行うことにしました。10日に続けてファイナルをやるという意見もありました。しかしコンディションを考えて中1日空けて、スカウティングをして臨んでもらおう。新型コロナウイルス感染症の問題が片付いていることが前提ですけれど、月曜だけど満員のお客を入れてやるんだという意気込みで(ファイナルの11日開催を)決意しました。

B2も日程の大幅な変更を強いられた。

「一番大変だったのはB2のプレーオフです。(当初からプレーオフを開催する予定だった)5月1日から4日のスケジュールは確保していただいていたんですが、その次はB1と違ってほぼアリーナが取れない状況だった。交渉の上で火曜日まで横浜アリーナを使えることになりましたので、5月1日から4日に2戦先勝、3戦目は別日でクォーターファイナルをやった上で、12日にセミファイナルを行って、決勝戦と3位決定戦が16日という日程を組みました」

他競技と違うバスケの状況

プロ野球、Jリーグは中断期間を当初の発表より伸ばしている。ただしBリーグは秋開幕で今がシーズンの終盤だ。B2は60試合中45試合、B1も60試合中39試合を終えている。大河チェアマンはこう説明する。

「我々はプロ野球やJリーグと違って、シーズンがもう終盤にきています。なかなか(代替試合の)起きどころがない。新しいカレンダーを見ていただけばお分かりのように、4月の水曜日はすべて埋まっています。延期という選択肢が残念ながら野球やサッカーのように取れない」

またプロスポーツである以上、試合を開催して、ファンからの収入を得なければ経営が成り立たない。当然ながらシーズンの打ち切りも安易に決められる状況にはない。

「アマチュアであれば、企業の福利厚生として中止、休止の決定が我々よりやりやすいと思います。我々はプロの興行として、それを糧として選手やスタッフの人件費が払われている。何とか試合はやっていきたいというのが本当のところです。その中で(もうこれ以上の)延期はできません。流石に14日からの再開は厳しいだろうと考えていますので、無観客でやるか、中止にするかが議論の中心になっています」

今後の試合再開可否は11日に発表

仮にリーグ戦が再開されたとしても、「公式戦ができるクラブ」「できないクラブ」に分かれる可能性もある。大河チェアマンは想定、検討の内容をこう明かす。

「無観客で行くのか中止で行くのか、11日に正式に決めて発表させていただきます。仮に全面中止にならない前提でも、3月13日に(「緊急事態宣言」を可能にする衆議院で)法案が成立した場合、例えばある地域に非常事態宣言が発令されて『全く外に出てはいけない』となる場合もあり得ます。参考にしたのが2011年の東日本大震災時のbjリーグです。東地区は試合数がまちまちで終了していますが、基本勝率で順位を決めている。2016年春に熊本地震で熊本ヴォルターズが途中から(リーグ戦に)参加できなくなった時も勝率で決めている。そこも念頭に置きながら議論しました」

「無観客開催」を中止と比較した場合のメリットについて、チェアマンはこう論点を整理する。

「無観客であっても選手が試合をして、コーチが指示して、それからお客を入れて再開したほうが自然な流れだろうなというのが一つ。もう一つは無観客でもテレビやスマホ、タブレットを通して多くの人が視聴できる機会がある。それが我々の理念である『バスケットボールで日本を元気に』と合致するのであればその可能性はある。3点目が経済的な問題です。配信、放送権料を考えると、多少の遠征費がかかっても、試合をやって放送権料を配分金に当てるほうがおそらく少し良いかなと思っています」

「自粛要請」による苦悩も

記者とのやり取りの中で、このような苦悩も述べていた。

「グッズ、飲食、スクールと色々ありますけれど、一番大きいのはスポンサーさんのところです。『不可抗力条項』というものが契約書の中にはあります。不可抗力で(試合が)できない場合は、一般的にスポンサー料をいただけます。自主判断で辞めた場合はもらえない取り決めが一般的です。政府から自粛の「要請」はありますが、それが不可抗力なのかどうかは明確にはわからない。政府から『やっちゃダメ』と言われればこれは不可抗力です。でも『自主的に考えてください』と言われるのが我々としては一番困る。コンサートもみんなそうだと思います」

ライセンス、資金繰りに配慮

B1、B2のクラブライセンス交付は3月、4月と二度に分けて発表される予定だった。2020-21シーズンについては3季連続赤字、債務超過のクラブにライセンスが発行されない運用となるはずだった。大河チェアマンは方針の転換を口にする。

「ライセンスについてもしっかり議論はしています。本来は今日ライセンスの判定をやる理事会だったんですが、少し遅らせます。リーグ戦の終盤ギリギリで判定の理事会だけ別途やりたいと思っています。大よその見通しとしては今季の赤字に関してカウントしない選択があるのではないかと考えています。債務超過は何試合が無観客、中止になるのかわからないので影響度合いを測りかねています。杓子定規にやる予定は全くないんですけど、影響を見極めながらルールを決めていきたい」

チェアマンが大前提として強調するのがクラブの存続、資金繰りだ。

「資金繰りは何があっても守らないといけない。ここに関しては苦しい状況に追い込まれるクラブがあることも想定されます。色んな財務的な手法を使いながら、クラブの資金繰り破綻を防ぐのが大きな使命だと思っています。例えば配分金を前倒しする規定があります。それから(リーグが)融資をする方法。さらに色んな行政自治体で無利子無担保での融資が出てきています。5年とか7年とか中長期で借りられれば資金繰りの安定する期間が長くなります。クラブにとって何が良いかを相談しながら、資金繰りが破綻しないように向き合っていきたい」

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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