徳島に苦しみながらも3連勝。浦和レッズが勝利を掴んだ後半の修正策とは
システム変更にうまく対応できなった前半
浦和レッズは徳島ヴォルティスに1-0で勝利。3連勝で勝ち点を14に伸ばして9位に浮上した。リカルド・ロドリゲス監督が4年間率いた古巣との対戦。前半についてリカルド監督は「前半の内容は徳島が上だった」と認めるが、後半に向けて守備の修正を施すと、60分に左のCKから小泉佳穂のパスを受けた山中亮輔の左足クロスに「練習で狙っていた」と言う関根貴大がタイミング良くヘッドで合わせて先制点を決めて、そのまま逃げ切った。
武藤雄樹を前線に配置する4ー1ー4ー1でスタートした浦和にとって、計算外のアクシデントは前半11分の武田英寿の負傷交代だった。ビルドアップのところでボールを奪われ、奪い返しに行ったところで左足を捻ってしまったのだ。リカルド監督は武田に代えて長身FWの杉本健勇を投入し、4ー2ー3ー1に変更した。守備時に3ラインの4ー4ー2になる形こそ変わらないが、急な変更にアジャストするのに時間を要した。
もう1つ浦和が苦労したのは徳島のビルドアップで、187cmの垣田裕暉が1トップに張る4ー2ー3ー1を基調としながらボールの位置や浦和のプレッシャーを見ながら立ち位置を変えてくる組み立てに対して、前から守備を嵌めていくことができずに、自陣寄りでの守備を強いられたのだ。そうした中で浦和を救ったのが守護神の西川周作だった。
武田が痛んでから杉本に代わるまでの時間帯に渡井理己のミドルシュートをワンハンドでゴールマウスの外に弾きだすと、味方の自陣でのパスをボランチの藤田譲瑠チマにカットされたところから垣田が絡んで、右サイドから宮代大聖が飛び出してきたシュートを至近距離でストップ。さらに浦和の右サイドを崩されたところから藤原志龍が放ったシュートも西川が防いだ。
一方の浦和も43分に明本考浩のボール奪取からショートカウンターで、西大伍の浮き球のパスに武藤雄樹が飛び込んで合わせたシュートがクロスバーを叩くシーンはあったが、前半を通してリズムが良かったのは徳島であり、リカルド監督がベースを築き、ポヤトス新監督が合流する前段階で甲本偉嗣コーチが指揮を代行する徳島の方が優勢に展開していたのは明らかだった。
的確な修正で流れを掴む
しかし、浦和はリカルド監督が「前半は明本が低い位置にいすぎたので、そこを修正した。武藤と杉本の二人で守るにはあまりにもスペースが広すぎたからだ」と振り返るように、左サイドハーフの明本の守備位置を上げて、杉本、武藤、明本の3枚で徳島の後ろからの組み立てにプレッシャーをかけることで全体を押し上げたことで、後半はかなりイーブンに持って行けたことはポイントだった。
徳島は立ち上がりの接触プレーで違和感を覚えていたと言う垣田を前半のみで河田篤秀に交代。さらにセンターバックの鈴木大誠をキャプテンのMF岩尾憲に代え、藤田譲瑠チマをセンターバックに下げてビルドアップをさらに強化する形をとったが、浦和の改善によってそれほど効果的にはならなかった。
もちろん明本が高い位置からプレスに参加する分、サイドバックの手前に生じるスペースを起点にチャンスを作るシーンはあったが、浦和も小泉が豊富な運動量で幅広くカバーし、中央では伊藤敦樹がセンターバックの手前で徳島の攻略スペースを消し続けた。さらに関根と右サイドバックの西もインとアウトのスペースをうまく補完しあって、前半かなり危険だったジエゴと63分から投入された杉森考起のところをうまく封じていた。
終盤にはジエゴのクロスから宮代に強烈なシュートを放たれるシーンやパワープレー気味に上がったジエゴのヘディングシュートがクロスバーを越えるシーンもあったが、1-0になってからは浦和がゲームをコントロールして逃げ切る形となった。
浦和としては可変性の高いビルドアップのクオリティや高い位置からの守備のオーガナイズ、さらにチャンスメークからフィニッシュにいたるディテールはまだまだ向上していく余地は大いにあるものの、着実にチームが前進していることを物語る勝利になったことは確かだ。一方で昇格組である徳島の質も高く、ポヤトス監督が合流する前の時点でも勝ち点9で11位にいるは納得で、さらなる進化が楽しみだ。
河治良幸(かわじ・よしゆき)
プレー分析を軸にグローバルな視点でサッカーの潮流を見続ける。『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、日本代表などを担当。著書に『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など