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日本代表・姫野和樹、地元でトライ&ジャッカル。「ピンチをチャンスに」【ラグビーあの日の一問一答】

向風見也ラグビーライター
トライを決めたラファエレ ティモシー(13番)を祝福する姫野(写真:アフロ)

 きょうからちょうど1年前の2019年10月5日、ラグビーワールドカップ日本大会の日本代表対サモア代表戦があった。

 結局、予選プールAを全勝して初の8強入りを果たす日本代表は、この大会で苦しんでいたサモア代表からトライを奪うのにやや難儀。しかし、ラストワンプレーでボーナスポイント奪取に繋がるチーム4トライ目を決めて38―19で勝った。

 殊勲者の1人は、ナンバーエイトとして先発の姫野和樹。ラン、ジャッカルが光る身長187センチ、体重108キロの戦士は、この日、地元となる愛知の豊田スタジアムで持ち味を発揮した。

 試合後は多くの記者に囲まれ、要所に関する談話を残した。

 以下、試合後の共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――後半13分にはモールから自身ワールドカップ初トライ。

「皆にトライを取らせてもらった。ワールドカップで初めて。嬉しかったです」

――続く18分には、自陣22メートルエリアでも相手ボールスクラムを押す流れでジャッカルを繰り出します。何度も「姫野コール」を浴びた。

「自分の強み。チームがピンチの時、しっかりチャンスに変えるプレーを常に心がけてやっています」

 ラストワンプレー。12点を追うサモア代表は自陣ゴール前でフリーキックを獲得。スクラムを選んだ。

 ここからトライすれば、7点差以内で負けたチームに与えられるボーナスポイントを得られるからだ。

 しかし、そのスクラムでサモア代表は反則。日本代表がスクラムを獲得し、プッシュ。姫野が球を持ち出し、最後は松島幸太朗がフィニッシュした。

 かくして、日本代表が4トライ以上で得られるボーナスポイントを加算した。

――試合終了間際までボーナスポイントが取れるかわからない状況でした。

「本当にボーナスポイントが取りたくて、最後の最後も皆、諦めずにスクラムを押してくれました。諦めずにやった結果、運良くボールがこっちに転がる形になりましたけど、サモア代表もサモア代表でフリーキックからボーナスポイントを獲りに行く姿勢を見せてくれたし、すごくいい試合でした」

――スクラムを押し込みながら、ボールを持ち出したところは。

「フミさん(スクラムハーフの田中史朗)が『出せ』ということで。スクラムも優位でしたし。まずは、ボール確保が大事かなと」

――後半にトライが獲れたのは。

「ハーフタイムに自分たちの問題点を話し合った。いまのジャパンは修正能力が高い。(改善点は)ペナルティ(が多かった点)、ブレイクダウンのところです」

――次戦へ。

「自分たちは自分たちのラグビーをやって勝ちたい。勝ちます。いい流れを保って決勝トーナメントに行けるように。やることは変わらないです」

――緊張感を保っているような。

「3試合目で疲労も多くありますけど、ワールドカップでプレーできる幸せが気持ちを高めています」

 名古屋市立御田中学校でラグビーと出会う前から、身体が大きく運動が好きな少年だった。自らの意思で春日丘高(現中部大春日丘高)に入ると、徐々に注目の的となった。1年時から全国大会で活躍。自然な流れで高校日本代表にも選ばれた。

 強豪の帝京大の特待生となり、怪我に泣かされた時もひたすら身体を鍛えた。最後は後輩に慕われるレギュラーとして、大学選手権8連覇を達成した。

 在学中の2015年には、イングランド大会があった。日本代表が南アフリカ代表を下した試合は、テレビで観た。2013年に日本代表の候補合宿で負傷したとあって、歴史的3勝を挙げた大会登録メンバーがうらやましかった。

「その時から『やはり僕は日本代表に入りたいんだ』という思いがクリアになった」

 勝負は社会人になってから。そう決意して就職した地元のトヨタ自動車では、新人時代から主将を任された。これらの重責を担うがゆえの深い悩みも、成長の糧にしていった。

 日本大会では10名いるリーダーズグループの1人だった。2023年のフランス大会に向けても、中核として期待される。関係者には「(代表で)主将にならなくては」とも期待される。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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