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日本代表エディー・ジョーンズ、「なぜあの人が落選?」まで全部答える。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
会見するジョーンズ(筆者撮影)

 日本ラグビーフットボール協会(日本協会)は10月10日、13日からの合宿と26日のニュージーランド代表戦、30日以降の欧州遠征に参加する日本代表のメンバー37名(フォワード20名、バックス17名)と練習生2名(バックス2名)を発表した。

 エディー・ジョーンズヘッドコーチが会見した。まずはオールブラックスことニュージーランド代表戦への思いを話した。

「ニュージーランド代表戦はいつも最高のベンチマークとなる。彼らは過去数十年、80パーセントほどの勝率を誇るとても強いチームです。

 我々は始動してからの7つのテストマッチを若手主体で臨んできました。今回のテストマッチは自分たちの現状を確認する素晴らしいチャンス、タイミングです」

 今回のキャンペーンでは、ワールドカップで3度の優勝を誇る王国を日産スタジアムで迎え、以後は強豪のフランス代表、6月に敗れているイングランド代表とそれぞれ敵地で激突。またふたつの欧州アウェー戦の合間にはウルグアイ代表戦を挟む。

日本代表関東・宮崎合宿スケジュール   10月13日(日) ~ 10月27日(日)

日本代表 ヨーロッパ遠征(フランス、イングランド)スケジュール 10月30日(水)~11月26日(火)

<リポビタンDチャレンジカップ2024>

ニュージーランド代表戦=10月26日(土)14:50キックオフ 日産スタジアム

<リポビタンDツアー2024>

フランス代表戦=11月9日(土) 21:10キックオフ(現地時間)スタッド・ド・フランス

ウルグアイ代表戦=11月16日(土) 14:30キックオフ(現地時間)シャンベリー・サヴォワ・スタジアム

イングランド代表戦=11月24日(日) 16:10キックオフ(現地時間)トゥイッケナム・スタジアム

 まずはオールブラックス戦に全力を傾けると強調し、質疑を通してこのように展望した。

「ニュージーランド代表戦で大切なことは、どんどんと相手を追い詰めること、どんどんハードにチェイスすること、どんどんハードに相手に立ち向かっていくことが重要です。

 スピードに乗ったアタック、容赦ないディフェンスで挑みたいです。常に仕事をし続ける。常に集中力を高めていく。ニュージーランドはアタックするチャンスを決して逃さない。そしてそれを形にしていくチームです。ディフェンスでは油断大敵。そしてアタックのチャンスが来た時には我々のアタックに入っていける準備を進めていきたいです。

 今回は(合宿序盤では)フォワードとバックスが東京、宮崎にわかれて準備を始めます。フォワードはセットピースを重視したトレーニングを。特にフォワードは相手をつけてトレーニングがしたいため、浦安D-Rocks、横浜キヤノンイーグルスの協力のもとおこないます。ニュージーランド代表はスクラムとラインアウトが強い。それに対してベストを見せていくためにこの予定を立てています。

 バックスは泳いで…これはジョークですが、こちらも楽しみながら準備を進めていきたいです」

——スクラムと言えば、元ニュージーランド代表プロップのオーウェン・フランクスアシスタントコーチが今回のスタッフリストに入っていません。

「家庭の事情で不在ですが、何らかのタイミングでさらには合流してくれるといいなと思っています」

——メンタリティ面の準備は。

「一言でまとめると、恐れないこと、物怖じしないことです。我々はニュージーランド代表をどんどんと追い詰めていく。どんどん相手に仕掛けていく。

 過去の戦績を見れば、平均としては 85―14でニュージーランド代表が勝っています(7戦全敗/実際の平均得点、失点はそれぞれ13.7、81.2)。ギャップはかなり大きくある。

 ニュージーランド代表と対峙する際には、どうしても心配事のほうが多くなりすぎるのかもしれません。相手のことを尊敬しすぎてしまうきらいがある。

 我々は相手にリスペクトを払わないといけないです。しかし、競い続けることをずっとやり続ける。相手を追い詰め続ける。これをできればできるほど、ニュージーランド代表に勝つチャンスを増やせる。

 恐れないこと。これができれば、ニュージーランド代表に初めて勝つ日本代表となれる」

——ポゼッションとキックの割合については。

「ニュージーランド代表はアンストラクチャー(混とん状態)からのアタックでは世界一。それを長い間、誇りにしている。したがって我々は、ストラクチャーのような(システムが整備された)状態でのアタックを長く続ける。キックをする時も、ストラクチャーの状態からキックをするのを目指す。

 アンストラクチャーからのキックはなるべく避けたいと思っています。ただし、ここはどうしても難しいポイントではありますが、ディシプリンを高く保ちながらストラクチャーの状態からキックする。これをすることで、いいキックチェイスができる。相手をどんどんとイライラさせる、うっぷんをためるということもできる。こうして相手を敵陣に留め、いいアタックもできる」

 別な対話では、スコット・ロバートソン新ヘッドコーチ率いるいまのオールブラックスの特徴についても言及。フィールドの横幅を活用して細かくパスを刻む傾向を鑑み、こう看破していた。

「ニュージーランド代表はどういった場面でも自分の試合をやり続ける。現在のスコット・ロバートソン新ヘッドコーチのもと、より恐れないチームになっている。

 ただし昨今のラグビーでは、パスの回数が多ければ多いほど、どうしてもブレイクダウンでは(ボール保持者へのサポートが遅れるなど)弱みが出てしまうところもありますので、恐れないでプレーをすることは、同時に弱みをどうしても見せてしまうような側面もはらむ。

 ニュージーランド代表が恐れないスタイルで挑んでくるのなら、我々もより恐れない姿勢を見せる」

 守っては鋭いタックルを重ね、機を見て素早く相手の持つ球へ絡みたいところだろう。

「次の 2 週間の私の仕事は、選手にニュージーランド代表に挑み続ける自信をつけさせること。若い選手とそこに集中してワークしていくのを楽しみにしています」

——ちなみにニュージーランド代表戦を前にウォームアップマッチを行う選択肢もあったはず。そうしなかったのはなぜですか。

「自分の就任前にスケジュールは確定していた。そんな可能性があることは知らなかったです(※)」

※日本協会の岩渕健輔専務理事は「現場の意見を踏まえて決めた」といった主旨で説明している。

 約9年ぶりに復職のジョーンズは、2027年のワールドカップオーストラリア大会へ選手層の拡大、若手の強化に注力すると宣言。今年6月の始動時から大幅にスコッドを若返らせた。

 早稲田大学2年の矢崎を6試合連続(非テストマッチを含む)で先発させるなど、大学生の抜擢でも注目を浴びた。

 6~7月のサマーキャンペーンでは非テストマッチを含め1勝4敗と黒星先行。8~9月のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では、決勝でフィジー代表に17―41と敗れて準優勝に終わった。もっとも、現場は新たなスコッドにコンセプトの「超速ラグビー」を涵養できた点に手応えを掴んだと語っている。

「PNC のツアーを通じてとても著しい成長を見せることができたと実感しています。もちろんフィジー代表戦においてはまだまだ足りない部分が露呈しましたが、決勝戦に至るまでの過程ではいい成長を見せることができたと自負しております。特にアタックに関しては、我々の超速ラグビー、超速アタックを継続してお見せする時間がかなり伸びた。

 フィジー代表戦では60 分間はとてもいい形で、我々としてはプレーすることができましたが、最後の 20 分がどうしても我々の課題になっている。ハンドリングエラー、そしてブレイクダウンのスキルといったところは今後も課題として取り組まないといけないと思っていますが、方向性はとてもいい。このまま継続していきたい」

 そして今回は、以下のスコッドを選んだ。

<スコッド37名に付記した記号について>

( )は所属先、数字は「身長・体重・生年月日・キャップ数」の順

★= キャプテン

◎=今回初の代表入り

〇=2024年6月以降に初の代表入り(候補合宿参加、JAPAN XV選出は除く)

□=2023年以前に初選出で、2024年6~9月までの代表に参加

■=2023年12月以前以来の復帰(候補合宿は除く)

丸数字=出場したワールドカップの開催年

※1=ヨーロッパ遠征から合流

※2=関東・宮崎合宿まで参加

フォワード:20名

<左プロップ>

岡部崇人(横浜キヤノンイーグルス)…180・105・1995/2/19・4 〇

三浦昌悟(トヨタヴェルブリッツ)…180・115・1995/6/8・14 □

茂原隆由(静岡ブルーレヴズ)…187・116・2000/3/17・5 〇

<右プロップ>

竹内柊平(浦安D-Rocks)…183・115・1997/12/9・10 □

為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…180・108・2001/9/3・7 〇

オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…190・127・1998/07/22・0 ◎

<フッカー>

坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・46 □⑲㉓

原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)…175・101・1999/4/15・7 〇

松岡賢太(コベルコ神戸スティーラーズ)…175・100・1997/6/6・2 〇

<ロック>

秋山大地(トヨタヴェルブリッツ)…192・114・1996/11/14・1 □

エピネリ・ウルイヴァイティ(三菱重工相模原ダイナボアーズ)…196・122・1996/7/7・2 〇

ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…201・117・2002/4/11・18 □㉓

サナイラ・ワクァ(花園近鉄ライナーズ)…202・120・1995/7/17・7 □

<フランカー/ナンバーエイト>

サウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)…189・107・1997/3/8・5 □㉓

下川甲嗣(東京サントリーサンゴリアス)…188・105・1999/1/17・10 □㉓

姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…187・109・1994/7/27・32 ■⑲㉓

ファカタヴァ アマト(リコーブラックラムズ東京)…195・118・1994/12/7・10 □㉓

アイザイア・マプスア(トヨタヴェルブリッツ)…191・112・2000/12/21・4 〇

テビタ・タタフ (ユニオン・ボルドー・ベグル/フランス)…183・124・1996/1/2・18□※1

ファウルア・マキシ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…187・112・1997/1/20・12 □

バックス:17名

<スクラムハーフ>

飯沼蓮 (浦安D-Rocks)…170・75・2000/2/8・0 〇※2

小山大輝(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…171・74・1994/10/31・6 □

齋藤直人(スタッド・トゥールーザン/フランス)…165・73・1997/8/26・21 □㉓ ※1

藤原忍(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…171・76・1999/2/8・6 〇

<スタンドオフ>

立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…180・94・1989/12/2・60 ★□⑮

中楠一期(リコーブラックラムズ東京)…174・84・2000/6/1・0 ◎

<ウイング>

長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…179・90・1999/11/25・14 □㉓

マロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)…182・91・1996/3/23・4 〇

ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)…177・95・1994/4/12・13 □㉓

濱野隼大(コベルコ神戸スティーラーズ)…180・93・2001/5/2・1 〇

<センター>

池田悠希(リコーブラックラムズ東京)…187・100・1995/5/21・0 ◎

梶村祐介(横浜キヤノンイーグルス)…181・95・1995/9/13・4 □

シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)…187・105・1998/12/20・13 ■㉓

ニコラス・マクカラン(トヨタヴェルブリッツ)…188・93・1996/6/13・4 □

ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・24 □㉓

<フルバック>

松永拓朗(東芝ブレイブルーパス東京)…172・82・1998/8/13・0 ◎

矢崎由高 (早稲田大学)…180・85・2004/5/12・6 〇※2

練習生:2名(いずれもバックス)

村田大和(京都産業大学)…168・69・2004/10/15・0 ※2

海老澤琥珀(明治大学)… 173・79・2004/10/27・0 ※2

怪我やコンディション調整中などを理由に未招集

淺岡俊亮 (トヨタヴェルブリッツ)

稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

木津悠輔 (トヨタヴェルブリッツ)

ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)

ティエナン・コストリー (コベルコ神戸スティーラーズ)

サミソニ・トゥア (浦安D-Rocks)

根塚洸雅 (クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)

福田健太 (東京サントリーサンゴリアス)

堀越康介 (東京サントリーサンゴリアス)

リーチ マイケル (東芝ブレイブルーパス東京)

李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)

山沢拓也 (埼玉パナソニックワイルドナイツ)

 今度の編成について「チームをリビルドし、2 週間いい形で準備をして、ニュージーランド代表戦を迎えたい」と語ったジョーンズは、質疑のなかで初選出組への期待、現在招集されていないメンバーに関する所感を述べた。

——選考方針は。

「現段階で出場可能なベストなプレイヤーを選んだ。それに尽きます。リストにある通り、今回は12名が怪我などの理由で招集できませんでした。こうした場合は、その次のペストプレーヤーを選ぶといった方針です。

 日本のラグビーには新しい世代の新しいプレイヤーが必要であると思っています。実は今朝、これまでのスタッツを見ていたんですが、2020 年から 2023 年の間にジャパンでは 33 名が新しくキャップを獲得しています。一方、今年はすでに17 名が初キャップを(以上ジョーンズ調べ)。新しい世代をどんどんと築き上げていくことで、選手層とスコッドの質を上げられると思っています」

——試合を動かすスタンドオフとフルバックについて。8月までプレーした李承信選手、山沢拓也選手らが「怪我やコンディション調整中などを理由に未招集」となり、中楠選手、松永選手が加わりました。

「現在はニュージーランド代表戦のみに集中しているので、スタンドオフは立川と中楠、フルバックは矢崎と松永というオプションを考えています。

 中楠——呼びにくいのでニックネームが必要ですね——はブラックラムズの試合で『いいものを持っているな』と気づいたところがきっかけです。そして李が今回、招集不可。コーチ陣で再び若い10番(スタンドオフ)を探したところ、中楠は我々の求めるスタイルのできる選手だと判断しました。ラインへどんどん仕掛け、勇気を持ったアタックができる。そしてボールを持ってない時のワークレートが高い。プレーにどんどんと絡んでいく姿勢があり、エネルギッシュなプレーを見せていけるところから招集しました。

 ブラックラムズの昨季のヘッドコーチだったピーター・ヒューワットとも彼の話をしていました。そして、慶応で彼がプレーしたいところもおぼろげながら記憶に残っています。少しだけ一か八かといったような判断となる部分はあるかと思いますが、彼の成長は期待したいと思っています。

 松永は東芝で一度、会って話したことがあります。李が出場できないなか、10、15 番の連携ってとても大切になると思いますし、このふたつのポジションでプレーできる選手はとても貴重です。松永は完璧にフィットすると判断しました(松永の本職はスタンドオフ)」

——昨秋のワールドカップフランス大会で主将だった姫野選手が現体制下で初招集。現在の状態と期待する点は。

「姫野とは数回、会っています。実は前回の PNCのフィジー代表戦の直後にも名古屋で面会。肘の手術をして、その後はかなり経過がいいと聞いています。データを見ても、とてもいい形でトレーニングを積んでいますし、回復している。

 彼に求めること。それは彼史上最高のラグビー選手になること、世界一のバックローになることです。

 自分が見る限り、ここ数年の姫野は肘の負傷を抱えながらプレーしていた。この怪我は、どうしても上半身のストレングスに影響を及ぼします。肘がうまく使えないとなると、やはりウェイトも上げきることができないので。いまはうまく治ったとあり、今後は期待したいです。

 私がイングランド代表のヘッドコーチとして日本代表と対戦した時の姫野は、ラック周りでのアタック、ピック・アンド・ゴー、倒れ込むことなくずっとボールを持ち続けることが強みだと映りました。タックルをしても、その後すぐに起き上がって次の仕事を探すところも。これからは彼のピークの頃に戻していくことが大切です」

——トンガにルーツを持つ大型右プロップのオペティ・ヘル選手が待望の代表入り。出場可否と期待する点は。

「出場できるかといえば、100パーセント可能です。とても才能に長けたプレイヤー。実はオーストラリアでの学生時代の彼を見たことがあります。その限りでは、その年代でトップの選手だった。能力は秀でている。タレント能力はとても長けたプレイヤーですが、あとは、ここからどれほどハードワークする心構え、意気込みがあるのかが問われます。次の 2 週間のキャンプでどれくらいハードワークできるのかを見る。ここでハードワークができるとなれば、必ずセレクションにかかる」

 改めて今回は、選んだ選手のほかコンディション都合で選ばなかった選手もリストアップした。

 ここで浮き彫りになるのが、そのどちらにも名前のなかった実力者の存在だ。

 PNCまで帯同したスタンドオフの松田力也、昨秋まで3度のワールドカップに出てきた松島幸太朗が該当しそう。松島は昨季の国内リーグワン終了後、今年の代表活動を辞退すると明かしているが…。

 会見でジョーンズは、選外となったメンバーへの質問にも端的に答えている。

——総じて、今回名前のなかった選手への要求は。

「招集されたらその準備ができているように」

——松田選手と松島選手については。

「2人はケースが異なります。

 松島は、今年、出場不可という形でした。ただ現実的に昨シーズンのリーグワンの試合を見ていても、招集できるレベルにはないと判断しています。

 身体をしっかり治さないといけないところもあると思いますし、よりよい選手になる必要があると思っています。今季そこへ取り組み、リーグワン でいいプレーを見せられたら、来シーズン招集のチャンスが巡ってくるかもしれません。

 皆さん、松島がどれぐらい素晴らしい選手かはご存じだと思います。ただ彼は、自身の身体をしっかり丁寧に治さないといけない。フィットネスも上げないといけない。

 インターナショナルレベルでラグビーをするには 80パーセントのフィットネスでは無理です。100パーセントのフィットネスも必要ですし、コミットメントも 100パーセントあることが欠かせません。いかにハードワークできるかという点も不可欠です。

 日本のラグビーにおいては、コミットメントをどれぐらい示せるかが必要。100パーセントでコミットすることにプライドを持って欲しい」

——彼らが試合に出る可能性は。

「テストラグビーに出場できるか否かは、本人のトレーニング中のパフォーマンスにかかっている。東京サントリーサンゴリアスのスタンドオフ、高本幹也を呼んだことがあります。いま、彼には課題を伝え、ワークしてもらっている状態です。

 日本のラグビー界では、どうしても実際にスコッドに呼んで一緒にワークをして、どういった選手かを見るしかないところがあります。

 先日、青山学院大学と筑波大学の試合を見に行って、 1 名、本当に目を引くような素晴らしいプレイヤーがいました。テストラグビーができるようなプレイヤーだと思いました。しかし実際にそういった選手も、合宿に呼んでトレーニングをしているところを見てみないと評価できない。

 福岡堅樹(筑波大にいた13年に初招集され、2度のワールドカップに出場)。彼は代表に呼んでトレーニングを重ねたからこそ、2019年(ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制で臨んだワールドカップ日本大会)でいいプレーができた。そこに至るまでにはとても長い時間がかかっています。

 若い選手は見つけ出し、キャンプに呼び、どれくらい順応できるのか、テストラグビーに耐えうるのかを検討する必要があります。耐えることができれば、テストマッチへの出場チャンスを得られ、できないのであればそれぞれの所属先でハードワークを。今後もこのプロセスを続けていくことが必要です」

——ニュージーランド代表戦から欧州遠征に移る際、「怪我やコンディション調整中などを理由に未招集」となったメンバーのうち誰かを復帰させる可能性はありますか。

「現状ではノー。ただ、状況はその都度変わるものです。矢崎はニュージーランド代表戦のみ招集で、その後は早稲田大学に戻ります。以後どんな状況になるかは、ニュージーランド代表戦後に評価して決めたいとは思っています。ただ現状に関しては、怪我をしているプレイヤーがヨーロッパのツアーに参加する予定はありません」

 ニュージーランド代表戦への展望、新戦力への見立て、選外となった注目株への所感を余すところなく語ったジョーンズ。これで、ソーシャルメディアで渦巻くファンの疑念は解消したのではないか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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