カルチャーを変える! デニス新コーチの下で名古屋ダイヤモンドドルフィンズは今季飛躍できるか?
11月14日、外国籍選手がスコット・エサトン一人の状況ながらシーホース三河を101対75のスコアで快勝した後、名古屋ダイヤモンドドルフィンズのショーン・デニスコーチはこのような言葉を口にした。
「2試合目で巻き返すゲームがいくつかあったけど、我々はそうならずに普段の練習から一貫性を持ってプレーしなければならない。カルチャーを変えることが我々には必要なんだ」
三菱としてプレーしていたJBLやNBLの時代から、名古屋はいい選手が揃いながらも、リーグ全体で真ん中くらいの順位が多かった。2019年にセミファイナルまであと1勝に迫ったこともあったが、昨季はチャンピオンシップ進出を逃している。そんな状況を打破すべく招聘されたのが、オーストラリアのNBLと滋賀レイクスターズで指揮した経験を持つデニスコーチだ。
今季の名古屋は齋藤拓実、伊藤達哉、レイ・パークス・ジュニアのガード陣がアグレッシブにアタックし、そこからのボールムーブで3Pショットやペイント内で得点を稼ぐのが強みだ。平均90.1点、3P成功数10.2本がいずれもB1最高の数字であり、平均アシスト数も群馬クレインサンダーズに次ぐ23.5本。名古屋がボールをシェアしたオフェンスを展開しているのは明らか。三河の鈴木貴美一コーチは、「名古屋さんは爆発的なオフェンス能力がある」という評価をしている。
3連敗でシーズンをスタートしたことを考えれば、12月5日の島根スサノオマジック戦を終えた時点で9勝7敗というここまでの成績は決して悪くない。島根との2連戦を1勝1敗で終えた後、改めてデニスコーチに“カルチャーを変える!”と口にした理由について質問すると、次のように返答した。
「まずはフィジカルの部分だ。今まであまりリバウンドがいいチームではなかったし、現状はまだまだだから、そこを改善していきたい。あとは“近くにいればいい”という考え方を捨てなければならない。(3Qにリード)トラビスに3本連続で3Pを決められたが、“近くにいるだけではなく、しっかり止めに行かなければならない”という考えを持ってプレーすることだ。徐々にチームのカルチャーは変わってよくなっているが、1試合で大きく変わるわけじゃない」
会場で取材した三河の2戦目、島根との2連戦における名古屋は、攻防両面でフィジカルに戦えるチームになりつつあるように見えた。新外国籍選手のスコット・エサトンは、全試合2ケタとペイント内での得点が計算できることに加え、ここ4試合連続で10リバウンド以上の数字を残している。ビッグマンとしては少し細身に見えるかもしれないが、ハードワークと堅実さという部分で名古屋のカルチャーを変えていくうえで欠かせない戦力と言っていい。
コティ・クラークはウイングからのプレーを得意とするフォワードで、3Pショットでの貢献度が高い。ファウルアウトを2回記録しているものの、これはデニスコーチが求めるディフェンスでフィジカルな対応していることを示すもの。シェーン・ウィティングトンの故障者リスト入りが誤算とはいえ、B1経験のあるロバート・ドジャーの加入はチームの助けになる。
フィジカルに戦うというところでは、日本代表として東京五輪に出場した張本天傑の存在も大きい。三河との2戦目では、チームメイトのヘルプを受けながらも、ダバンテ・ガードナーと激しいポジション争いを演じ、ファウルトラブルへと陥れることに成功。オフェンスでは試合開始早々に2本の3Pショットを決めるなど、今季最高となる15点を奪って勝利に貢献していた。
「天傑には“オリンピック選手なのだから、今日のようなパフォーマンスを一貫して発揮しなければいけない”と言い続けている。経験のあるベテランなので、リーダーシップも発揮してもらいたいと思う」と話したことでも、デニスコーチの張本に対する期待度は非常に大きい。もちろん、だれよりも名古屋のカルチャーを理解し、リーダーシップを発揮しなければならないと感じていることは、張本自身が十分に認識している。
「僕が現在の名古屋で唯一の地元選手だと思うんですけど、ずっとやってきてこのチームのカルチャーを一番理解しているし、僕が新加入の選手たちにそれを伝えていく責任が自分にあると思います。自分がキャプテンを3年間やってますし、チームの先頭に立って引っ張っていける存在になれなければいけない」
今季の名古屋は、得点能力の高いスイングマン相手に執拗なディフェンスをする選手として、身体能力の高い中東泰斗に加え、日本代表に選ばれた須田侑太郎を獲得したこともプラスに働いている。ちなみに、勝った9試合はいずれも相手の3P成功数が7本以下なのに対し、7敗中6敗は9本以上。また、失点数も9勝中8勝は77以下に対し、負け試合はすべて80以上という結果がある。
デニスコーチの“カルチャーを変える!”とは、“フィジカルに戦い、粘り強くディフェンスするチームへの変貌”と解釈していいだろう。「本当に誇りを持てるチームと思えるし、可能性があることもわかった」と語っていることからすれば、名古屋が少しずつチャンピオンシップ進出への歩みを進めているのは間違いない。