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【インタビュー後編】フェア・ウォーニング、2017年4月来日。トミー・ハートが語る日本との絆

山崎智之音楽ライター
Fair Warning

2017年4月にデビュー25周年アニヴァーサリー・ライヴを日本で行うフェア・ウォーニングのシンガー、トミー・ハートへのインタビュー全2回。

前編では今回の日本公演について語ってもらったが、後編では現在のトミーの活動、そしてバンドの日本との強い絆について訊いてみた。

なお、このインタビューは来日直前、スペインに滞在するトミーに電話をして行われた。何故、彼はスペインにいるのか?そこから会話はスタートする。

●スペインで何をしているのですか?

クイーンの曲をオーケストラと共演する『シンフォニック・ラプソディー・オブ・クイーン』ツアーでスペイン全土をサーキットしている(https://www.queensymphonicrhapsody.com/)。スペインは大きな国だから、1月中旬から4月上旬まで、30公演ぐらいの長期ツアーだ。僕は5人のシンガーのうちの1人で、このプロジェクトではもう5年、2013年から参加しているよ。

●あなたはクイーンの熱心なファンだったのですか?

このプロジェクトに関わるまでは、実はそれほどクイーンの大ファンというわけではなかったんだ。でも実際にクイーンの曲を歌うことで、彼らのことをより深く知ることが出来るようになったし、知れば知るほど好きになってきた。今ではアルバムだけでなくDVDや本もチェックしているよ。彼らの音楽に対する考えは、僕に近いものがある。すべての情熱と愛情、フィーリングを込める姿勢に共感するし、一発屋でなく長期的に音楽をやっていこうとする強い意志を感じたよ。

●『シンフォニック・ラプソディー』ではクイーンのどんな曲を歌っているのですか?

「ザ・ショウ・マスト・オン」「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」「ヘッドロング」、それから「地獄へ道づれ」「ア・カインド・オブ・マジック」「伝説のチャンピオン」「ボヘミアン・ラプソディー」...中にはフレディ・マーキュリーがライヴで歌ったことのない曲もあるし、どう歌うか、自分で考えなければならない。それが大きなチャレンジだし、やりがいを感じるよ。自分以外ではセリオンのトマス・ヴィクストロム、ミート・ローフのバンドでやっているパティ・ルッソー、そしてスペインのシンガーのパブロ・ペレアとグラシエラ・アルメンダリスが参加している。いずれも素晴らしいシンガーだよ。最初にこのプロジェクトの話を聞いたときは、安っぽいカヴァー・バンドだったら嫌だと考えていたけど、クイーン自身もやったことのないフル・オーケストラとのショーで、新しい次元に持っていくエキサイティングなものだと確信した。それはオーディエンスの表情からも伝わってくる。ショーが始まるときは「さあ、どんなことをやれるか見せてもらおうか」と腕を組んで見ているお客さんが、最後にはクレイジーになって、アンコールを求めて大声で歓声を送ってくるんだ。みんなハッピーになって、会場を後にするんだよ。2013年から毎年行われていて、去年はスケジュール的な理由で開催されなかったけど、大成功を収めていて、今年7月にもアリーナ規模でツアーすることが決まっている。スペインに来たら、ぜひ見るべきショーだよ。

●『シンフォニック・ラプソディー・オブ・クイーン』ツアーが本格化して、今やフェア・ウォーニングの方がサイド・プロジェクトになりつつあるといえるでしょうか?

いや、僕の“本業”はフェア・ウォーニングだと常に考えている。自分の創造性のアウトプットであり、仲間たちと長年突き進んできたバンドだからね。今回の日本公演を突破口として、さらに活動を本格的なものにしていきたい。元々フェア・ウォーニングは年間300回のショーをやるタイプのバンドではなかったけど、回数を増やしたいね。

●1990年代からフェア・ウォーニングは“ビッグ・イン・ジャパン”な状態が続いていますが、そのことにフラストレーションは感じますか?

Tommy Heart
Tommy Heart

日本のファンが応援してくれることには感謝している。音楽を心から愛する素晴らしいファンに支持されることに、誇りを持っているよ。ヨーロッパやアメリカで思うようなセールスが得られていないことは事実だけど、人生は結局、流れに身を任せるしかないんだ。文句を言っても仕方がない。ベストを尽くせば、どんな結果が出ても後悔はないよ。それよりもフラストレーションを感じるのは、フェア・ウォーニングとしてもっとたくさんのショーを出来ないことだ。僕はシンガーだし、歌うのが仕事だ。毎日だって歌いたいのに、ツアーがままならないのは辛いことだよ。 スタジオ・アルバムを3年に1枚出して、日本でツアーをやるだけというのは物足りなかったし、クイーンのプロジェクトは完璧だったんだ。喉のコンディションをベストに整えて、日本公演に向かうことが出来る。今回フェア・ウォーニングとして日本でプレイすることが出来て、本当にハッピーだ。僕がハッピーなのと同じぐらい、日本のファンにもハッピーになって欲しいね。

●フェア・ウォーニングの日本市場でのポジションが確固たるものになったのは、日本の『ゼロ・コーポレーション』から発売された3作目のアルバム『GO!』(1997)でした。当時のことをどのように覚えていますか?

『GO!』をレコーディングしたのは、アンディ・マレツェク(ギター)の体調が悪くなり始めた時期だった。そんな辛い時期ではあったけど、音楽的にはバンド全員がインスピレーションに満ちていた。新しいレコード会社と新しい旅立ちをすることに、すごくエキサイトしていたよ。アルバムのレコーディングは大きな屋敷を借りて、リラックスした状況で行ったけど、現場にはマジックがあった。すべてがスムーズに行って、我々はこれが良いアルバムになることを予感していた。今でも誇りにしている作品だよ。自分の中で最も“完璧”に近い作品があるとしたら、それは『GO!』だと思う。『ゼロ・コーポレーション』との関係も素晴らしいものだった。トール・ハシモト(橋本徹・元社長)は優れたビジネスマンであるのと同時にロックのファンで、フェア・ウォーニングの音楽を信じてくれていた。『ゼロ』が音楽ビジネスから撤退しまったのは残念だね。前回日本に行ったとき、バンド全員で彼が経営するレストランに行く筈だったけど、僕の奥さんが体調を崩して、僕も付き添っていたから行けなかったんだ。でも他のメンバーみんなは行って、最高な時間を過ごしたそうだよ。今回は僕もぜひ行きたいね。

●ソロ・アルバム『スピリット・オブ・タイム』(2016)のタイトル曲では「地獄の底から再び這い上がり手を伸ばし、俺は立ち上がる♪」と日本語で歌うなど、あなたの日本への思い入れが伝わってきます。

フェア・ウォーニングの初めてのジャパン・ツアーからずっと「スキヤキ」(坂本九の「上を向いて歩こう」)を歌っているし、日本語の響きと起伏が好きなんだ。残念ながら日本語は話せないけど、発音やイントネーションがおかしくたって構わない。大事なのは心を込めて歌うことだよ。そのことはフェア・ウォーニングを結成する前、初めて英語ヴォーカルのバンドで歌うようになったときに気付いたことだ。当時、僕は歌詞の意味がまったく判らなかった。でも、エモーションを込めて歌うことで、そう感じさせないように心がけたんだ。たとえ言葉が通じなくても、心が通じあうことが可能なんだよ。

●最近アンディ・マレツェクと連絡は取っていますか?彼の体調はいかがですか?

アンディとは常に連絡を取り合っているよ。数ヶ月前に会って、いろいろ話して、彼の愛犬を連れて散歩に出かけた。あまり体調は良くないけど、とてもポジティヴだった。『スピリット・オブ・タイム』の彼のパートは1年半ぐらい前にレコーディングしたものなんだ。その後、彼は体調が悪くなって入院したり、ステージに上がるのはしばらく難しいみたいだ。でも希望はある。彼がまた日本を訪れる日がきっと来ると信じているよ。

●ジーノ・ロートは最近どうしているでしょうか?音楽は続けているのでしょうか?

ジーノとはもうしばらく話していない。聞いた話だと本を書いたり、詩を書いたりしているそうだけど...ハノーファーに住んでいて、元気みたいだよ。フェア・ウォーニングは彼のバンドZENOからスタートしたんだし、ぜひまた音楽シーンの表舞台に出てきて欲しいね。

CLUB CITTA' PRESENTS

Fair Warning フェア・ウォーニング

- 25th Anniversary Twin Special Japan Tour 2017-

●4月20日(木)- WARM UP SHOW! IN HANEDA- 【4/20“前夜祭”@ティアット スカイ ホール】

フェア・ウォーニング史上初の公開プレミアム・ウォーム・アップ・ショウ

会場:ティアット スカイ ホール /東京

OPEN 19:00 / START 19:30

WARM UP SHOW特設サイト 

http://clubcitta.co.jp/001/fairwarning/warmupshow.html

●4月22日(土)-1993 CLUB CITTA' COLLECTION-

1993年に行われた伝説の初来日クラブチッタ公演のセット・リストと共に

デビュー・アルバムを全曲網羅した「レジェンダリー・コレクション」

会場:CLUB CITTA' /川崎

OPEN 16:00 / START 17:00

●4月23日(日)-2017 PIMP YOUR PAST COLLECTION-

新録ベスト・アルバム『ピンプ・ユア・パスト』に収録されニュー・アレンジを施した名曲たちが蘇る

「リアル・ベスト・コレクション」

会場:CLUB CITTA' /川崎

OPEN 16:00 / START 17:00

日本公演公式サイト

http://clubcitta.co.jp/001/fairwarning/

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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