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DarWin(ダーウィン)が綴るプログレッシヴ・メタルの“種の起源”

山崎智之音楽ライター
DarWin / courtesy of P-VINE Records

時空を超えた壮大なプログレッシヴ・メタルのオデッセイが新章を迎えるときが来た。2024年6月7日、DarWin(ダーウィン)がニュー・アルバム『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』で日本デビューを果たす。

ソングライターでギタリストのDWに、サイモン・フィリップス(ドラムス)やモヒニ・デイ(ベース)など百戦錬磨のプレイヤー達が共鳴。通算4作目となるこのアルバムではマット・ビソネット(ヴォーカル)、グレッグ・ハウ(ギター)、デレク・シェリニアン(キーボード)らも参加、未来への扉を大きく開け放つ音楽で魅了する。

DarWinを導く男、DWとは何者か?このインタビューでは、そのアーティストとしての素顔に迫ってみた。なお、彼との対話は、すべて日本語で行われた。

DarWin『Five Steps On The Sun』ジャケット(P-VINE Records / 2024年6月7日発売)
DarWin『Five Steps On The Sun』ジャケット(P-VINE Records / 2024年6月7日発売)

<DarWinはイニシャティヴ(構想)>

●DarWinの音楽がexpressive(表現に富んだ)なものであるのに対し、あなた自身についてはまったく知られていません。それは何故ですか?

自分自身を強調したくないんです。自分の音楽があって、リズム・ギターをプレイしている。それがすべてで良いと思う。私にとって大事なのは良い音楽と曲を書くことであって、有名になりたいわけではない。サイモン・フィリップスやモヒニ・デイと共演しているのも彼らが有名だからではなく、優れたミュージシャンだからです。DarWinにはスターはいない。大事なのは音楽そのもの、そしてそれを聴いたリスナーがどう感じるかなんです。

●『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』は日本で初めてリリースされるDarWinのアルバムとなりますが、これまでのバンドの歴史について教えて下さい。

DarWinというバンド/プロジェクトは私がサイモン・フィリップスに連絡をしたときに始まりました。最初にメールを送ったのが2014年で、その1年後に彼がTOTOを脱退して、連絡してくれたんです。それで会ってみたらすぐ友達になることが出来て、一緒にやることになりました。その時点で私は曲も書き溜めていて、話し合ううちに、ベーシストとシンガーを探そうと、5人ぐらいと会いましたが、マット・ビソネットとやることにしました。彼はエルトン・ジョン、リンゴ・スター、ジョー・サトリアーニ、デイヴ・リー・ロスなどのバンドでベースを弾いてきたけど、自分のバンドもやっていて、ヴォーカルを取っていたんです。カリフォルニアっぽいというか、スウィートなヴォイスで...ロック・シンガーというとロバート・プラント、デヴィッド・カヴァーデイル、ジェイムズ・ヘットフィールドみたく「オーイェーッ!」ってシャウトしたりオペラチックに歌う人が多いけど、自分はラッシュみたいなパワフルなベースやドラムスの上にザ・ビートルズみたいなスウィートなヴォイスを乗せたらどうなるのか、興味があった。それでマットに声をかけてみました。プリンスのようにヴォーカルのハーモニーを何重にも重ねたり、自分の理想とするサウンドを創っていきました。そうしてDarWinは私とサイモン、マットの3人でスタートしたんです。

●他のメンバーは?

それからキーボード奏者のジェフ・バブコが合流したり...彼はアメリカでジミー・キメルのTVトーク番組のハウス・バンドでやったり、サイモンとは友達で、TOTOでもしばらくやっていたんじゃないかな?ジェフがピアノやヴァイオリン、チェロのアレンジをしたり、手伝ってくれました。さらにサイモンを介してギタリストのグレッグ・ハウも合流して、DarWinというプロジェクト、あるいはイニシャティヴ(構想)が2015年に始まったんです。

●『Origin of the Species』を作って、どんなことを学びましたか?

『Origin of the Species』は最初のアルバムで、まだ自分が何をやっているのか全然判っていなかった。レコード会社からのサポートもないし、音楽ビジネスでどうすればいいのか知りませんでした。その頃は良い音楽を出せばみんなが聴いてくれると考えていたんです。この曲は面白いな、と思ったら、友達の間で話題にしてくれるだろうってね。でも実際にはそうは行かない。プロモーションをしないと、誰にも届かない。マーケティングの必要性を感じました。

●サイモン・フィリップスはジェフ・ベックやTOTO、ゲイリー・ムーア、マイケル・シェンカーなどとの活動で知られるロック界の名ドラマーですが、初めて会った感想はどんなものでしたか?

「Just One More Day」「Cosmic Rays」のデモを送ったら「ロサンゼルスにおいでよ」と言われて、会いに行ったんです。大学教授みたいな雰囲気で、「面白い学生が入学したな」と思ったみたいでしたね。「俺はジェフ・ベックやスティーヴ・ルカサーとやってきたんだ。誰だ、この無名な奴?」とか偉そうに振る舞うこともなく、興味を持ったからやってみようって感じで、最初からプロフェッショナルとして接してくれました。『Origin of the Species』では4人編成でやってみたり、“アビー・ロード・スタジオ”でオーケストラと共演したり、「Forever」ではソプラノ・サックスを取り入れたり、いろんなアイディアを取り入れています。

●サイモン・フィリップスのどんなアルバムを聴いて、彼に連絡を取ろうと考えたのですか?

サイモンがやってきた音楽は大体聴いてきたんですけど、TOTOのライヴ作品とか、デレク・シェリニアンとのコラボレーションを聴いて、自分とやることで面白いものが出来ると考えました。あと彼はジェフ・ベックの「ザ・パンプ」も書いていて(『ゼア・アンド・バック』<1980>収録。トニー・ハイマスとの共作)、コンポーザーとしても魅力を感じました。普通に聴くとシンプルな印象を受けるけど、その中には深いディテールがあって、ある意味すごく日本人ぽい曲ですよね(笑)。テクニックよりも心に残る曲を書ける人として、ずっと興味があったんです。そしてサイモンが不可欠なのに加えて、マットもリック・スプリングフィールドと共作したり、とても優れたソングライターなんです。私も彼もハーモニーの中毒で、アフリカの合唱や教会のクワイア、そしてもちろんザ・ビートルズのハーモニーが大好きですね。サイモンの個性溢れるドラム・ビートにどうハーモニーを乗せていくかが、DarWinとしてのひとつの挑戦でした。

●サイモンとはどのようにコンタクトを取ったのですか?

彼のウェブサイトにメールアドレスがあったんで、連絡したら、しばらく時間はかかったけど、返事してくれました。たぶん私のデモから何かを感じてくれたんだと思います。DarWin以前にはまったく作品をリリースしたこともなかったんです。友達とバンドを組むとかもなくて、個人的に1人で曲を作って、レコーディングしてきただけでした。もちろんファンも私1人(笑)。それでも受け入れてくれたサイモンは心が大きな人だと思いますよ。

●音楽の専門的な教育は受けていますか?

7、8歳までピアノを習っていたけど、それからは自分でやってきました。誰かの真似はしたくなかった。バッハ、ベートーヴェン、ショパンなどの影響に縛られずに、自由に自分の音楽をやりたかったんです。それからずっと自分のスタイルでやってきました。バークリー音楽大学とか、そういうのも行ってないです。楽譜も読めませんよ。2019年、サイモンとビリー・シーンと一緒にレコーディングしたとき、3人とも楽譜を読めなかったけど、お互いに自分のプレイを聴かせ合ったりして、うまく行きました。もちろん楽譜は読めた方が良いんだけど、読めなくとも良い音楽は出来るし、キーなど知らなくても作曲は出来ると思います。

『Origin Of The Species』はデビュー・アルバムにしてクリエイティヴ面で妥協がなく、ラジオやMTVを意識することもない、2枚組の大作となりました。おそらく多くのアーティストが羨む環境ではないでしょうか?

まあ、おすすめはしませんけどね(苦笑)。誰かが手を差し伸べてくれるようなこともないし、ロックだと保守的な部分があるんです。主なバンドはもう20年、30年とやっているし、若いバンドはスラッシュやジェントのような、ヴオオオーッというバンドが多いし。PRカンパニーの伝手もなかったし、苦しかったですよ、実は。

●DarWinというアーティスト・ネームは『種の起源』(1859)のチャールズ・ダーウィンから得たものと思われますが、どのようなコンセプトで名付けたですか?

地球の未来、人類の未来に対する問題提起が大きく関わっています。これから人間はどうなっていくのか?...と考えながらアルバムの曲を書きました。特にアルバム『Origin Of The Species』はコンセプト・アルバムでストーリーがあって、AIに関する問題なども取り入れながら作っていった作品です。現代の世界は複雑だけど、自分の未来や、自分の存在について疑問を抱くのは、非常に大事なことだと考えています。

●『Origin Of The Species』のストーリーはどんなものだったのですか?

ストーリーは直接的に説明しない方が良いと思います。アルバムを聴いた一人ひとりに、自分のストーリーがある。AIの問題や気候変動、環境問題、人類の平和などを描いたテーマで、それぞれの人が考えるスペースを作っておきたいんです。これから人間はどうなっていくか?どう進化していくべきなのか?と考えたとき、DarWinという名前が相応しいと感じました。そして人間が前に進んでいくのには愛のパワーが必要だというメッセージも込めています。

●『Origin Of The Species』からはミュージック・ビデオも作られていますね。

そう、「For Humanity」「Escape The Maze」のミュージック・ビデオでレーザー・スーツを着ています。全身からレーザー光線を放射する、KISSみたいにショーアップされたフューチャリスティックなものをイメージしていたけど、あまり反響もなかったし、結局辞めましたが...。

●ニュー・アルバム『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』は4枚目のアルバムですね。「ソウル・ポリス」「インサイド・ディス・ズー」「シーズンズ・オブ・ア・ライフ」など素晴らしいメロディとフックのある曲、また「ワン・ステップ・オン・ザ・サン」「ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン」「ザ・サン」という壮大な組曲形式の曲が収録されています。アルバムを通じてのテーマやコンセプトはありますか?

総括的なコンセプトはないけれど、DarWinのひとつの流れに沿った作品ですね。ファーストはほぼすべて私が書いたものだった。セカンド『DarWin 2: A Frozen War』(2020)ではサイモンがアレンジやプロデュースで手伝ってくれている。3枚目『DarWin 3: Unplugged』(2021)はアンプラグド形式で、DarWinのロック・バンドでない、露わな姿を表現した。『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』は最初から私とサイモン、マットが曲作りに深く関わっているアルバムで、もう9年間一緒にやってきたことで、クリエイティヴな面でも息が合っています。今回は聴き方を限定させたくなかった。コンセプトなどを提示せず、リスナーの求めるように聴いて欲しかったんです。それでアルバムから何かを感じてくれたら嬉しいですね。歌詞はマットと共作していて、意見を交わしたんですが、精神的なスペースを大事にして、細かいところまで決めないようにした。でも、ひとつヒントを出しましょう。人間の生き方・考え方は、新しい方向へと進もうとしている。それはエキサイティングなことであるのと同時に、寂しいことでもあります。子供は母親に尋ねるでしょう。「どうして地球から旅立たなければならないの?」母親は「新しい惑星の方が、素晴らしいことがあるのよ」と答えるでしょう。アルバムのアートワークも一見するとシンプルだけど、じっくり見るといろいろな発見があるので、音楽を聴きながら見て欲しいです。

●そんな世界観やアートワークから、アーサー・ C・クラークやレイ・ブラッドベリの小説を思い出しました。SF小説からインスピレーションは受けますか?

SFは好きだけど、怠け者なんで(笑)、どちらかといえば小説より映画の方が好きですね。最近では『デューン 砂の惑星』とか...昔のSF映画のような宇宙に行ったりするものも良いし、インターネットやAIなど、現代社会を反映したようなものも好きです。単純明快ではなく、宗教や哲学を絡めてきたり、考えさせられるようなものを好む傾向がありますね。それは音楽についても同じことを感じます。聴きやすくても深みがあるクオリティの音楽をやることを目標としています。

DarWin / courtesy of P-VINE Records
DarWin / courtesy of P-VINE Records

<日本語は精神的に心の平和を得られる言語>

●日本語はどのようにして学んだのですか?

子供の頃から日本の文化などに対してすごく興味があって、身につけようと思い立ったんです。専門的に学んだわけではなく、楽器を学ぶときにいろんなミュージシャンをコピーするように、耳で日本語を聞いて習得しました。ひらがな・カタカナ・漢字も学んでいます。カタカナは得意ですね。日本語は精神的に心の平和を得られる言語だと思います。言葉も平和で、国も平和。そういう気持ちが世界中に対して大事だし、これからもっと日本と深く関わっていきたいですね。日本語はスピリチュアルな言葉だと感じます。

●私は通常、英語が第1言語の人には英語、日本人には日本語でインタビューしていますが、英語圏の人に日本語でインタビューするのは、マーティ・フリードマンに続いてあなたが2人目です。あなたは他にどんな言葉を話しますか?

英語、日本語、アイスランド語...あとスペイン語も少しだけど話すことが出来ます。アイスランドは島国で、日本と似ているところがいくつもあります。音楽や芸術を大事にする気質が共通していますね。私はアイスランド人ではないけど数年住んでいて、大事な位置を占める国です。『DarWin 2: A Frozen War』(2020)と『DarWin 3: Unplugged』(2021)はアイスランドで作りました。あとファースト・アルバム『Origin of the Species』(2018)から「Escape the Maze」のビデオもアイスランドで作りました。人間の未来を描いた、SFっぽい黙示録的な内容で、自分にとって重要なビデオです。もちろんアイスランドは北極圏にあって、日本とは異なるところも多いけど、私に合っている気がします。

●日本映画や音楽など、具体的に参考にした作品はありましたか?

いや、全然ありませんでした。ただ日本という国は文化も深く、いろいろ独特な国なので、子供の頃から魅力を感じていました。西洋人の家族に生まれ育って、日本と関係があったわけではなかったけど、とにかく好きだったんです。自分の中に日本人の部分があると感じていました。DarWinの音楽に日本からの影響があるかは、自分では判りませんが...。

●日本に住んでいたことはありますか?

かなり前に、日本のいくつかの町に住んでいたことがあります。子供の頃からずっと、グローバルな人になりたいと考えていました。いろんな国に住んで、その国の人と友達になったり...自分が音楽をやっているのも、そんな考えがあるんです。どこの国の人でも困難や面倒に遭うことがある。そんなときに戻っていける場所として、音楽は大事なんです。現代はインターネットによって情報が多すぎたり、AIの進歩とかがあるけど、だからこそ音楽の役割は大きくなっている。例えばメタリカやエルトン・ジョンが好きだったら「えー、あなたエルトン好きなの?私も好きなの」と繋がることが出来る。それはとても大事なことだと考えています。

Simon Philips / courtesy of P-VINE Records
Simon Philips / courtesy of P-VINE Records

<ヘヴィだけどみんながハッピーになれる、ポジティヴな音楽をやっていきたい>

●DarWinのこれまでのアルバムではあなたとサイモン、そしてマットの3人が核となるメンバーで、今回『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』ではそれにモヒニ・デイが加わりましたが、これからもこの編成で活動を続けますか?それとも作品ごとに異なったラインアップで活動していくでしょうか?

モヒニと一緒にやるようになったのは比較的最近、2022年3月頃なんです。その前から素晴らしいプレイヤーだということは知っていたけど、インドに住んでいるのだと思って、声をかけずにいたんです。でもアメリカやヨーロッパでも活動しているというので、サイモンを介して会ってみることにしました。モヒニとはすぐ友達になって、ここ2年間ぐらい毎日のように話しています。彼女とは音楽的なコミュニケーションもすごく良くて、DarWinの次のアルバム『DarWin 5』(仮題)でも一緒にやっています。もうレコーディングはしていて、あとミックスすれば完成ですね。モヒニは今ではDarWinの重要なメンバーだし、ギタリストのグレッグ・ハウもそうです。

●『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』のCDブックレットに「次のアルバムを準備中」と書いてありますが、それは『DarWin 5』のことですか?

はい、その通りです。現在のDarWinのラインアップはスケジュールを調整するのが難しくて...3週間、4週間、全員のスケジュールを抑えられるとしたらどうするか?もちろんツアーもやりたいんだけど、私もサイモンもアルバムを作るのが好きだし、それよりも多くの音源を作りたいですね。

●これまでDarWinとしてライヴを行ったことはありますか?

まだないんです。『DarWin 2: A Frozen War』を出した後にツアーをやろうか?と話し合ったけど、そのときはコロナ禍で出来なくなって、スケジュールを組めないまま流れてしまいました。それからまたアルバムを作り始めたし、ライヴはこれからかなあ?...という感じです。ツアーをすることになったら、最初に日本でプレイしたいです。大きな都市はもちろん、九州や北海道などの、いろんな町を回りたいですね。

●あなたはDarWin以前のバンドなどでライヴはやっていましたか?

いや、全然やっていないです。若い頃はやったこともあるけど、DarWinを始めてからはやっていないし、緊張でプレイ出来ないかも知れない(笑)。でもステージ用にレーザー・スーツも準備しているし、サイモンやマット、モヒニ、グレッグがいてくれればきっと大丈夫でしょう!レーザー・スーツは9ヶ月ぐらいかけて、いろんなテクノロジーや布地の専門家と協力しながら作ったものなんです。ものすごく暑いんですよ。ライヴでずっと着ていたら倒れるから、3曲ぐらいで着るようにします。

●ぜひ『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』の曲をライヴで聴きたいです!

日本の音楽ファンに受け入れてもらえることは、DarWinにとって大きな意味を持つことです。日本ではいろんな国のさまざまな音楽が聴かれていて、リスナーの評価が厳しいと感じています。そんな彼らが私たちの音楽から何かを感じてくれたら嬉しいですね。

●サイモンもモヒニ、マットもセッション・プレイヤーとして数多くのアーティストと活動していますが、あなたも変名などで他のアーティストと共演をしていますか?

いや、DarWinが正真正銘のデビューです。声がかかれば、誰とでも一緒にやりたいですね。実は新作の「ザ・サン」はサイモンのアルバムのために書いたものだったんです。結局DarWinとしてレコーディングすることになったけど、一時は自分のアルバムを作るのをもう止めようかと考えたこともあって...『Origin Of The Species』があまり成功しなかったから、他のアーティストに曲を提供していこうかと思っていたんです。でも「ザ・サン」を書いて、サイモンやマットも「頑張ってみようよ」と支えてくれたことで、まだ自分でもやれると思って、このアルバムでレコーディングすることにしました。それからまた突然新しい創造力が湧いてきて、すごく不思議に感じています。

●DarWinの音楽を通じて、どんなメッセージを伝えていきたいですか?

最近1970年代・1980年代の音楽に興味を持つようになったんです。マイケル・マクドナルドやアンブロージア、ケニー・ロギンズとかね。子供の頃はまったく興味がなかったけど、最近になってアース、ウィンド&ファイアとかクール&ザ・ギャングを聴くと、音楽の“楽しさ”を思い出させてくれるんです。「セプテンバー」なんてハッピーになれますね。最近のヒップホップは、ストリートの現実が...とか、シリアスになり過ぎている気がします。もちろん昔だっていろんな問題はあったけれど、音楽はハッピーにしてくれたと思います。現代、世界中に悩み、苦しんでいる人がいる。彼らが気持ち良くなってくれるような音楽を作ろうと考えました。アルバム最後の「What Do We Know」という幸福や希望を描いた歌ですね。「Be That Man」なんかはメタリカみたくヘヴィですけど、みんながハッピーになれる、ポジティヴな音楽をやっていきたいです。

【新作アルバム】
DarWin(ダーウィン)
『ファイヴ・ステップス・オン・ザ・サン』
P-VINE Records / 2024年6月7日発売
https://p-vine.lnk.to/hmlo9Y

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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