なぜ久保建英はソシエダで苦戦しているのか?主力の流出…育成と求められる結果の狭間。
苦しいシーズンスタートに、なっている。
レアル・ソシエダはリーガエスパニョーラ第6節、アウェーでバジャドリーと対戦した。試合はスコアレスドローに終わり、ソシエダは16位に沈んでいる。
■主力の退団
ソシエダは今夏、ミケル・メリーノを移籍金3200万ユーロ(約51億円)でアーセナルに、ロビン・ル・ノルマンを移籍金3450万ユーロ(約54億円)でアトレティコ・マドリーに売却した。また、ロベルト・ナバーロ、アレックス・ソラ、ロベルト・ロペスといった選手たちもチームを離れている。
とりわけ、メリーノとル・ノルマンの移籍は大きかった。
中盤でボールを刈り取り、なおかつ攻撃時に起点になる。2列目から飛び出してゴールを狙い、セットプレーでは高い打点のヘディングでネットを揺らす。そういったタスクをこなしていたのがメリーノだ。
またル・ノルマンはイゴール・スベルディアと盤石のCBコンビを組み、ソシエダの躍進を後方から支えていた。デュエルや空中戦の強さ、またメリーノ同様にセットプレーのターゲットマンとして対戦相手の脅威になり、替えの利かない選手になっていた。
この夏、ドイツで開催されたEURO2024で、スペイン代表は優勝を果たした。その大会に、アレックス・レミーロ、マルティン・スビメンディ、ミケル・オジャルサバル、メリーノ、ル・ノルマンとソシエダの5選手がメンバーとして名を連ねていた。そのうち、2選手が一挙にいなくなり、不在感を感じない方が無理だという話である。
■敢行された補強と未来
一方、ソシエダは今夏、オリー・オスカールソン、ルカ・スシッチ、セルヒオ・ゴメス、ハビ・ロペスらを獲得。4550万ユーロ(約72億円)を補強に投じて、チームの強化を図った。
2024年夏の移籍市場におけるソシエダの補強には特徴がある。ウェスト・ハムからレンタル加入したネイフ・アゲエル(28歳)を除いて、J・ロペス(22歳)、スシッチ(22歳)、S・ゴメス(24歳)、オスカールソン(20歳)と全員が若い選手なのだ。
元々、ソシエダは育成に定評があるチームである。スビメンディ、オジャルサバルがカンテラ(下部組織)出身選手であることを筆頭に、ベニャト・トゥリエンテス、アンデル・バレネチェア、ヨン・パチェコ、ウルコ・ゴンサレス・デ・サラテ、アンデル・オラサガスティ、ヨン・アランブル、パブロ・マリンらが出場機会を伸ばし始めている。
そういった背景が久保建英にも影響を及ぼしている。
状況を整理しよう。久保のソシエダ移籍一年目、チームにはダビド・シルバがいた。久保は【4−4−2】で2トップの一角に組み込まれ、トップ下で攻撃を司るD・シルバや他の選手たちと連携しながら、ゴールやアシストを狙っていけた。
移籍二年目。D・シルバの電撃引退があったものの、まだチームにはメリーノがいた。メリーノ、ブライス・メンデス、スビメンディが中盤に鎮座し、【4−3−3】で右WGに久保を配置するシステムは十分に機能していた。
そして、移籍三年目の今季、久保はソシエダで右WGやトップ下でプレーしている。ただ、実際のところ、イマノル・アルグアシル監督が久保に求めているのは「ゴール」だろう。決定力不足に喘ぐチーム状況で、久保やオジャルサバルがそこを打開しなければ、勝利への道筋が付けられない。
無論、簡単ではない。それは時に「無」から「有」を生み出す行為になる。だが戦術がない中で、試合を壊していけるかは、久保の今後の成長、またソシエダの浮沈の鍵を握るはずだ。
「例えば、レアル・マドリー戦。マドリーのスターティングメンバーは、良い選手が揃っていた。彼らは、一定期間、一緒にプレーしてきた選手たちだ。それとは反対に、我々は、若い選手が多く、初めて一緒にプレーする選手までいた。それでも、あれだけの試合ができたというのは、プラス材料だ」
「現在のスカッドのポテンシャル、将来性を顧みれば、このチームが上位に行くのは疑っていない。しかし、それを考え過ぎてしまうとプレッシャーになる。これは以前から言っていたことだ。残り3試合になったところで、何が目標になるかを考えたい」
これはイマノル監督の言葉だ。
ソシエダに、未来はある。先述のように、若い選手を補強した。育成に強く、カンテラーノたちが出てきている。
だが、下手を打てば、それは現実を犠牲にすることを意味する。このジレンマが、今季のソシエダの序盤戦の苦戦につながっているのである。