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手のひらや足の裏の水疱に悩む方へ:掌蹠膿疱症の最新治療法

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
Ideogramにて筆者作成

【掌蹠膿疱症とは?症状と原因を詳しく解説】

皆さんは、手のひらや足の裏に小さな水疱ができる病気をご存知ですか?これは「掌蹠膿疱症」と呼ばれる慢性の皮膚疾患です。日本では100人に1人程度の割合で発症すると言われています。

掌蹠膿疱症の特徴は、手のひらや足の裏に無菌性の膿疱(うみを含んだ水疱)が繰り返し現れることです。膿疱は数日で乾燥してかさぶたになりますが、その後また新しい膿疱ができるというサイクルを繰り返します。

症状が進行すると、皮膚が赤く腫れ、厚くなったり、ひび割れたりすることもあります。特に手や足を使う仕事をされている方は、日常生活に大きな影響を受けることがあります。

原因については、まだ完全には解明されていません。しかし、喫煙や金属アレルギー、ストレスなどが関係していると考えられています。最近の研究では、免疫系の異常や遺伝的な要因も指摘されています。

掌蹠膿疱症は、見た目の問題だけでなく、痛みや痒みを伴うことも多く、患者さんのQOL(生活の質)を著しく低下させる可能性がある重要な疾患です。早期発見・早期治療が大切ですので、気になる症状がある方は迷わず皮膚科を受診することをおすすめします。

【従来の治療法と新しい治療法の比較】

掌蹠膿疱症の治療は、症状の程度によって段階的に行われます。

まず、軽症の場合は強力なステロイド外用薬や保湿剤などの塗り薬を使用します。これらは炎症を抑え、症状を和らげる効果があります。

中等症から重症の場合は、内服薬や光線療法が選択されます。内服薬としては、ビタミンA誘導体のエトレチナートやシクロスポリンなどの免疫抑制剤が用いられます。光線療法では、PUVA療法(ソラレンという薬と紫外線Aを組み合わせた治療)やナローバンドUVB療法などが行われてきました。

しかし、これらの従来の治療法では効果が不十分な場合や、副作用のために継続が難しい患者さんもいました。

そこで注目されているのが、生物学的製剤と呼ばれる新しいタイプの薬です。これらは、炎症に関わる特定のタンパク質だけを狙い撃ちする抗体医薬品です。

例えば、グセルクマブという薬は、IL-23という炎症を引き起こすタンパク質を抑える働きがあります。日本での臨床試験では、16週間の治療で約60%の患者さんに50%以上の症状改善が見られました。

また、ブロダルマブという薬も注目されています。これはIL-17という別の炎症タンパク質を抑える薬で、16週間の治療で約54%の患者さんに50%以上の症状改善が見られました。

これらの新薬は、従来の治療法に比べて効果が高く、副作用も比較的少ないとされています。ただし、感染症のリスクが高まる可能性があるため、使用には注意が必要です。

【最新の研究成果と今後の展望】

掌蹠膿疱症の治療法は日々進化しています。最近の研究では、JAK阻害剤という新しいタイプの薬が注目を集めています。

JAK阻害剤は、炎症を引き起こす複数の経路を同時に抑える効果があります。日本ではまだ承認されていませんが、海外ではトファシチニブやバリシチニブなどの薬が、掌蹠膿疱症に対しても効果があることが報告されています。

例えば、トファシチニブを使用した患者さんの多くで、1ヶ月以内に症状がほぼ消失したという報告があります。ただし、JAK阻害剤には感染症や血栓症のリスクがあるため、慎重に使用する必要があります。

光線療法の分野でも進歩が見られます。エキシマレーザーという新しいタイプのレーザー治療が、従来のPUVA療法よりも効果的であることが示されています。特に、通常の6倍の強度で照射すると、95%の患者さんで75%以上の症状改善が見られたという報告があります。

また、アプレミラストという経口薬も有望です。この薬は、炎症を抑える酵素の働きを高める効果があります。16週間の治療で、約78%の患者さんに50%以上の症状改善が見られました。

今後は、これらの新しい治療法の長期的な効果や安全性を確認する研究が進められると予想されます。また、個々の患者さんの症状や体質に合わせて、最適な治療法を選択する「個別化医療」の実現も期待されています。

掌蹠膿疱症は難治性の病気ですが、治療法の進歩により、多くの患者さんに希望をもたらすことができるようになってきました。症状でお悩みの方は、ぜひ皮膚科専門医に相談してみてください。最新の治療法を含めた、適切な治療法を見つけることができるはずです。

参考文献:

1. Branyiczky MK, Towheed S, Torres T, Vender R. A systematic review of recent randomized controlled trials for palmoplantar pustulosis. J Dermatolog Treat. 2024;35(1):2414048. doi: 10.1080/09546634.2024.2414048

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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