アマ交流試合で馬場が初先発。横山、小豆畑、西田も実戦復帰《阪神ファーム》
阪神タイガースのファームは今、ウエスタン・リーグの首位にいます。4月末に3位だった阪神は5月1日から首位のソフトバンクと対戦しました。初戦を2対1でものにし、この時点でゲーム差なしの2位に浮上すると雨天中止を挟んで3日は4対3の勝利!これで4連勝となり、単独首位に立ったわけです。
4日以降は公式戦がなかった阪神でしたが、その間に他の4チームは1勝1敗1分け、もしくは1勝1敗に中止1つと、うまい具合に揃って五分の成績だったため順位の変動はありません。首位が阪神で17勝14敗3分け、0.5ゲーム差の2位がオリックスで15勝13敗4分け、さらに0.5ゲーム差の3位はソフトバンクで16勝15敗1分け。そして8日から2位・オリックスとの直接対決が待っています。
さて、ゴールデンウィークの最後を締めくくる土日は、鳴尾浜に社会人のクラブチームを迎えて交流試合が行われました。5日が奈良の大和高田クラブ、6日は滋賀のOBC高島です。どちらも、それぞれ『第89回都市対抗野球大会』の県1次予選を勝ち抜いたばかり。京都のミキハウスを加えた3チームで、近畿2次予選へ進出する1枠をかけた京滋奈1次予選が10日に開催されます。そこへ向けての練習試合ということですね。
打ち合いを制して何とか勝ちました
まず5日の大和高田クラブ戦の詳細をご紹介しましょう。大和高田クラブは雨天中止もあったため前日の4日に都市対抗奈良県1次予選の代表決定戦が終わったばかりです。ずれこまずに代表が決まったおかげで、5日の交流試合も予定通り行われました。奈良県では圧倒的な強さと伝統を誇る大和高田クラブだけに、阪神もちょっと苦戦しています。
この日はドラフト1位ルーキーの馬場皐輔投手が初先発し、夫人の出産に立ち会って戻ってきたマテオ投手が登板するとの情報を受け、多くのお客様でにぎわった鳴尾浜。他にも横山雄哉投手、小豆畑眞也選手、西田直斗選手が実戦復帰となりました。
《交流試合》
阪神- 大和高田クラブ (鳴尾浜)
大高 000 101 500 = 7
阪神 011 300 13X = 9
※特別ルール
◆バッテリー
【阪神】馬場-マテオ-歳内-横山-藤谷 / 岡崎-小豆畑(5回~)
【大高】本野(2回1/2)-吉田行(2回)-米倉(1回1/3)-山本竜(1回)-山田(1回) / 恩庄-大谷(4回途中~)
◆本塁打 阪神:岡崎ソロ(本野)
◆三塁打 大高:山本柊
◆二塁打 大高:竹島2
阪神:森越、北條、陽川
◆盗塁 大高:恩庄
阪神:江越、島田2、熊谷、緒方
◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)
1]右:江越 (4-1-2 / 2-1 / 1 / 0)
2]指:森越 (1-1-1 / 0-1 / 0 / 0)
〃三:西田 (3-1-1 / 0-0 / 0 / 0)
3]遊:北條 (4-2-0 / 0-1 / 0 / 2)
4]中指:板山 (4-1-0 / 1-1 / 0 / 0)
5]一:中谷 (1-0-0 / 1-1 / 0 / 0)
〃中:緒方 (1-0-0 / 0-2 / 1 / 0)
6]三一:陽川 (4-1-3 / 0-1 / 0 / 0)
7]捕:岡崎 (2-2-1 / 0-0 / 0 / 0)
〃捕:小豆畑 (2-1-0 / 0-1 / 0 / 0)
8]左:島田 (5-1-1 / 0-0 / 2 / 0)
9]二:熊谷 (3-0-0 / 0-1 / 1 / 0)
◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ
馬場 3回 43球 (3-4-0 / 0-0) 149
マテオ 1回 19球 (3-2-1 / 1-1) 150
歳内 1回 10球 (0-1-0 / 0-0) 143
横山 1回 17球 (1-0-0 / 1-0) 136
藤谷 3回 42球 (6-1-2 / 5-5) 142
<試合経過>※敬称略
まず馬場は1回、三者連続三振の立ち上がり!2回は内野安打と中前打、犠打で1死二、三塁としますが後続を断って0点。3回も先頭にヒットと盗塁を許すなど2死三塁としながらも得点を与えず、予定の3イニングを3安打無失点で終えました。
その間に打線は2回1死から岡崎がレフトへホームランを放って先制!3回には先頭の江越が四球を選んで二盗、続く森越の左翼線タイムリー二塁打で1点追加。
4回はマテオが登板。いきなり先頭に初球を打たれ、次も初球ですが一ゴロで1死二塁、次にも初球を打たれて1死一、三塁。7番・山本柊に2球目を中前タイムリーと、わずか5球で1点を失いました。そのあと四球を与えたものの連続三振。1点差となります。
しかしその裏、阪神は先頭の岡崎が今度はセカンド内野安打で出て、島田の遊ゴロで走者が入れ替わり、その島田がすかさず二盗。熊谷は四球を選んで、今度は島田と熊谷のダブルスチール成功!1死二、三塁として江越が左前2点タイムリーを放ちます。送球の間に二塁へ進んだ江越は、続く西田の右前タイムリーで生還!この回3点を加え、5対1と4点リードです。
5回は小豆畑と歳内のバッテリーが、2番からを三者凡退に切って取り、6回は横山が登板。先頭を遊ゴロ、と思ったら北條が田植え状態になって、1死後にまた遊ゴロ。今度は前へ落とし、拾って併殺をと焦ったのか…また手につかず。この2つのエラーで1死一、二塁となり、8番・竹島の右翼線タイムリー二塁打を浴びました。
7回は藤谷。先頭からヒット、四球、犠打、四球で1死満塁となり、空振り三振で2死を取ったものの、そこから2点タイムリー、2点タイムリー三塁打、タイムリー二塁打。3連続タイムリーで計5点を奪われ、7対5と逆転を許します。
その裏、先頭の北條が左前打するも1死後に盗塁死で2死ランナーなし。ところが緒方が四球を選んで二盗を決め、陽川も四球。小豆畑の左前打で2死満塁として、島田が右前タイムリー!これで差は1点になりました。8回は2死から連打を許しながら0点に抑えた藤谷。
打線は8回裏も2死から、北條が右翼線二塁打を放ち、板山と緒方は連続四球を選んで、また満塁のチャンス。陽川は初球を見逃した後、2球目の変化球(116キロ)をとらえて左中間へ!満塁の走者を一掃するタイムリー二塁打で、9対7と逆転しました。9回は藤谷がわずか5球で三者凡退!試合終了です。
矢野監督、高橋コーチの投手評
試合後の話は、矢野燿大監督から。まず馬場投手についての談話です。「いいボールもあったけどね。もうちょいかな。立ち上がりは、力感のわりにいいボールが多かった感じはした。どちらかというと変化球を投げたがる傾向があるけど、先発になると真っすぐが必要。真っすぐの質にこだわっていけたら」
横山投手には「やっとね。投げられた。なかなか思うように進められなかったけど一歩前進。実戦で投げて、自身の現状を確認できるだろう」とのことでした。
高橋建投手コーチは馬場投手について「初回はよかったけど、それ以降は何だか"くたびれた感"が出ていたねえ。あの初回のパフォーマンスを続けてくれたらもう1軍で勝負できるんじゃないか?と思ってしまったけど(笑)。でもいい球の質を見させてもらいました。3回投げられたので、次は5回。これでひと安心ですね」と話しています。
復帰登板となった横山投手に関しても「対外試合での登板を久しくやっていない中、投げられてホッとしました。でも、あす以降が気になりますね。ブランクがあったので今後の経過が大事でしょう」と一歩前進に安堵の表情でした。
また藤谷洸介投手が、気持ちをすぐに切り替えたのか2イニング目以降はよかったですねと言うと「あれを最初からできればいいのにね」と苦笑いしつつ「体ひとつ大きいというアドバンテージがあるんだから、それが魅力でプロに来たんだから、生かせるようにしてほしい。生かしてあげたい」と続けた高橋コーチです。
それぞれに前進した投手陣
続いて選手のコメントをご紹介します。まず、これが“プロ初先発”となった馬場投手。3連続三振で上々の立ち上がりでしたね。「三者凡退とれたのはよかったかなと。でも先頭を抑えるのをテーマにしていて、2回と3回は出してしまった。それが自分を苦しくしてしまうところ。結果的にゼロで抑えられたのはよかったですけど、先頭を出さないように心がけていきたい」
真っすぐの感覚は「これから、どんどん投げていく中でわかってくると思います」とのことで「ストレートにこだわって、それはガンじゃなく、球の走り、キレ、バッターの手元でホップする。そういうところにこだわっていきたい」と馬場投手は言っていました。
マテオ投手は「久しぶりだったけど悪くない。疲れてはいるが、いい感じで投げられた。感覚を取り戻せたと思う」と振り返り、こどもの日の登板だったことを聞かれると「いいこどもの日になれば。こどもを思って投げた。向こうでは4月にそういう日があるよ」と答えています。
左肩の具合が思わしくなく、実戦から遠ざかっていた横山投手。安芸キャンプ中の2月18日に行われた練習試合で1イニングを投げて以来の登板となり「マウンドに上がって、すごくバッターが近く感じました」という第一声です。そして「自分がマウンドに立っているなっていうのは…楽しかった。投げること以前に、立ててよかったなと思いました」と。
エラーが重なって結果的に失点してしまったものの「エラーは誰でもするし、それは全然。逆に最後はさばいてくれたから」と北條選手への言葉もありました。投球内容に関しては、まだこれからということでしょう。とにかく前へ一歩ですね。
決勝打の陽川選手と重盗コンビ
変わって野手陣。8回に逆転の3点タイムリー三塁打で試合を決めた陽川選手について矢野監督は「陽川にも全員にも言ったんだけど、結果的にはナイスバッティングだったが、じゃあ1軍でどう?と注文をつけたい。真っすぐでどんどん押してくるピッチャーじゃなかったのに、初球のスライダーを見逃している。1軍では、出てきたセットアッパーが2球続けて、そんな甘い球を投げてくれないからね。1球で仕留めないと」と話しています。
練習を終えて引き揚げてきた陽川選手は「何もないですよ。何もしていないですし」とあまり話したくなさそうな様子。ようやく「カーブ、でしょう」と打った球を振り返り「初球も甘かったので打ちたかったんですけど…」と反省。相手の制球が定まっていなかったことには「そういうのは別に。自分のタイミングを取ったりすればいいので。それより(初球は)納得いく見逃し方じゃなかった」と、やはりそこが悔やまれるようです。
次に鮮やかなダブルスチールを見せた俊足ルーキーコンビです。というか鮮やかすぎて一瞬、何が起こったかわからなかったくらい自然な動きでしたね。先に話を聞けたのは一塁走者だった熊谷敬宥選手で「サインが出ることもあるけど、きょうは違います。島田が走ったので僕も行きました。何も言わないからあわてて」と言っていました。「普通はアイコンタクトとかするじゃないですか~。勝手に行ったんですよ(笑)」
そして、立て続けに盗塁を決めた島田海吏選手は「きょうは相手のクセをしっかり盗んで走れました。それが収穫です」と納得の表情。ではダブルスチールの三盗も?「はい、自信を持っていきました。熊谷もしっかりついてきてくれて」。アイコンタクトもなかったとか。「彼はスペシャリストなので大丈夫です」。なるほど、必ず走ってくれるだろうという信頼感ですね。いつか1軍でまた見たいと、夢が広がるシーンでした。
ここから巻き返す!小豆畑&西田
最後は復帰組の2人。安芸キャンプ終盤に左太もも裏の筋挫傷と診断された小豆畑選手は先月末のウエスタン・広島戦(甲子園)から本隊に完全合流、遠征を挟んで今回の練習試合は出場予定に入っていたものです。試合後、少しホッとしたような声で「疲れました」とひとこと。「試合の中で頭を使ったので。当然ですが、しばらくゲームの中にいなかったから」。確かに考えることは多いでしょうね。マスクをかぶるとなれば余計に。
「とりあえず復帰できたので、ここから一日一日ですね。無事にやれたのでよかった!」という喜びも束の間で「でも2か月休んだのは大きい。精神的にも体力的にも、なるべく差をつめられるように頑張ります」と気を引き締める小豆畑選手です。
また西田選手は、3月7日の教育リーグ・中日戦で右手親指を負傷(側副靱帯損傷)して以来の実戦。「早く出たいと思っていました。完璧に治している時間はないと…。試合に出たかったので、楽しかったです!」。復帰戦の初打席で、しかも初球を打ってタイムリーですが「まだプロ相手の打席に立っていないのでわからないですけど、結果を残さないと火曜日(8日・オリックス戦)から出られないと思って」と必死のアピールだったのでしょう。
ちょうど2ヶ月での復帰には「もっと時間がかかると言われたけど、わりと早かったかも」と言いながら、やはり完治を待っている時間はないと「ある程度の痛みがなくなったらやりたいと思っていた」と西田選手。そして「指の痛みを確かめるのではなく、普通に結果を出そうと」臨んだ5日の復帰戦です。そして「指は大丈夫です。痛くない。痛いとは言わない」とキッパリ。決意がその口元に滲んでいました。
<掲載写真は筆者撮影>