名探偵コナンに登場する「爆発」、実際はどれくらいの威力がある? 爆破体験ツアーに参加して味わってみた
2022年4月に公開され、劇場版シリーズの興収2位の大ヒット作となった『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』。
そのリバイバル上映が、ハロウィンシーズンに合わせ10月28日よりスタートする。
ところでコナンの劇場版といえば、なんといっても「爆発」である。シリーズ内では、ビル、船、町中など実にさまざまな場所での大きな爆発が描かれてきたが、実際の爆発とはどんなものなのだろうか。
今回は「爆破の聖地」として名高い栃木県の岩船山で、「爆破体験ツアー」というう画期的なツアーを実施されている株式会社SET UP JAPAN代表取締役の佐山輝さんにお話を伺った。
爆破音の迫力がありすぎて取材用の写真が撮れない
インタビューに先駆けて、まずは一度爆破を実際に見に行ってみることにした。
「爆発体験」と言われると山奥でやっていそうなイメージがあるが、意外と東京からだと電車で1時間ほど。最寄りの駅からも徒歩で15分ほどの位置にある。
この意外なアクセスの良さも、岩船山が「爆破の聖地」になった理由のひとつだという。
会場はかなり広く、ここで一度に10組ぐらいが爆発を取り囲むようにして撮影を行う。
訪れるのは特撮好きや「自分の推しが特撮に出た」という方が多いという。
他に、結婚式の前撮りや家族写真を撮りに来る参加者も多いとのことだった。
爆破担当者の方に爆弾を見せてもらったところ、直径4〜5cmほどで驚くほど小さい。演出・撮影用のため小規模ということもあるが、そもそも爆弾というのは圧力を込める必要があるので、そこまで大きくはならないのだという。
起動スイッチは別で存在する。ボタンで電流を流して爆発させる仕組みなので、ちょっと信じがたいが電流さえ流さなければ手で持っても安全だという。(※ただし取り扱いには資格を取得する必要がある)
それではいよいよ爆発タイムだ。爆弾から15メートルほど離れ、「3…2…1…」という合図とともに爆発する。
無事に爆発した。「本当に爆発した」「熱い」「煙がすごい」などいろいろな感想があるが、そのすべてを上書きしたのが「音の迫力がすごい」という感想である。
実際、爆発ツアーをやるための最大の障害が「騒音と振動」だという。結局この日は取材として6回ほど爆破音を聞いたが、そのたびに飛び上がるほどびっくりした。
この写真は、取材用の写真を撮ろうとしたが、音に驚いてそれどころではなかったときの様子である。
コナンの爆発演出は1回およそ100万円ほどかかる
無事に爆発を体験してから、運営の佐山さんにお話を伺った。
ーーそもそも、なぜ岩船山で爆破体験ツアーを始められたのでしょうか?
地方創生の取り組みをしたいと思って始めたのがこの爆発ツアーです。
岩船山はもともと採石場だったところなので、爆発する場所に向いているんですよ。
ーー爆発に向いている場所というのがあるんですね!
採石場って、ダイナマイトなどを使って岩肌を爆発することが多いんです。
だから近隣の方も、振動や音に理解があって条件が整いやすいんですよ。
ーー実際に爆発を体験してみると、音の大きさに驚きます。
実は、音なしの爆破というのもできるんですよ。
でも、体験してみるとわかるんですけど「あれ?」という感じになってしまうんです。都心で爆発のシーンを撮影するときは音がない方がいいんですけどね。
ーー爆発にもいろんな種類があるんですね。岩船山の爆発では、どういう爆弾を使われているのでしょうか?
セメント爆弾とナパーム爆弾です。いわゆる爆発っぽい炎が出るのがナパーム爆弾、煙のような見た目なのがセメント爆弾です。
ーーなるほど!では本題の『名探偵コナン』についてお伺いしていきたいのですが、まずはコナンに限らず爆発シーンで多い「爆発する瞬間に、走ったり飛び出したりして逃げ切る」というのが実際に可能なのかお聞きしたいです。
無理だと思います。
ーー無理ですか。
コナンを始めとしたフィクション作品に出てくる爆発は、規模が大きすぎるんですね。
建物が吹き飛ぶほどの爆発となると人は絶対に大けがを負ってしまうし、少なくとも鼓膜破損などはあると思います。
岩船爆破体験ツアーでも、爆破するときは必ず15メートル以上は離れてもらうようにしています。
爆発のあとの煙を吸うのもあまりよくないですしね。
ーー安全のためには距離が必要なんですね! 爆発のシーンで多いのが「空中で爆弾が爆発して、地上やビルにいるメンバーは助かる」というものですが、これは実際可能なのでしょうか?
撮影用の爆発しか扱っていないので確実なことは言えませんが、距離があれば、ある程度は安全だと思います。
ーー爆風などの影響もありそうですが、大丈夫なのでしょうか。
(コナンに出てくるほど)大きな爆風を現実で起こすのはけっこう難しいと思いますよ。
岩船山でも一応爆風はありますが、何かを吹き飛ばすのは難しいです。
ーーコナンに出てくる爆発はオレンジのもの、ピンクのもの、灰色のものと色彩が豊かですが、実際の爆発はどのような色が多いのでしょうか?
セメント爆弾を使えば、どんな色でも出すことができます。
絵の具のように色を組み合わせると、だいたいの色は作れるんです。
ーー花火にいろんな色があるようなイメージですね!
ただ、色が黒くなればなるほど(爆弾の中身の)質量が重くなってしまうんですよ。
撮影する場合は、きれいに広がっていく爆発が求められるので「白色の爆発が一番いい」と言われていますね。
ーー色によって爆発の仕方が変わるんですね!最後に、『名探偵コナン』の爆発シーンを完全に再現した場合、お値段はいくらぐらいになるのでしょうか。
ビルや建物を壊すレベルの爆発は実現が難しいですが、コナンみたいな撮影・演出をしたいということなら1爆破につきおよそ100万円くらいでできると思います(現状復帰・消化作業は除く)
ーーなるほど!ありがとうございました。
取材の最後に、佐山さんは「今度は車を爆破するんです」「中古のBMWに爆弾を仕掛けるんですよ」とにこやかに教えてくれた。日頃の生活に刺激が足りていない方は、ぜひ岩船山に出かけてほしい。
■岩船山について
岩船山採石場跡地の崖の音響効果を利用し、体験爆発ツアーや『クリフステージ』 として野外コンサートが実施されている。また、切り立った岩場の景観が、映画やテレビの撮影現場として頻繁に利用されていることでも知られる。
岩船山爆発体験ツアーURL:https://setup-japan.jp/