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規制緩和から1年 ルール無視の危険な電動キックボード、取り締まりを強化へ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

 電動キックボードの規制緩和から1年となる中、ラジオ番組でキャラクター「ツヨメロちゃん」に扮した兄弟漫才・中川家の剛がリスナーからいま叫びたい一言を聞かれ、「ループ!」と絶叫した。シェア電動キックボードの最大手「LUUP」のことだ。利用者が車道の真ん中を走ったり、運転しながら携帯電話を見たり、歩道を走行してぶつかりそうになったりするなど、邪魔で危険だと憤慨しているという。

パリでは導入5年でサービス終了

 「LUUP」のように車体の大きさや構造などの基準を満たし、最高時速20km以下といった条件をクリアした電動キックボードは、昨年7月1日から「特定原付」に指定されることとなった。利用は16歳以上に限られるものの、運転免許なしで乗れるし、ヘルメットの着用も任意だ。

 しかし、街なかでは平然と交通ルールを無視する危ない利用者が目立っている。「LUUP」もこうした状況を憂慮しており、利用者が運転中に起こした交通違反に応じて点数を加算し、段階的にアカウントの停止や永久凍結の措置をとっているという。

 一方、フランスのパリでは排ガス規制に有効だとして2018年にいち早くシェア電動キックボードが導入されたものの、事故が多発し、住民投票で89%もの反対を受けたこともあって、わずか5年でサービスの終了に至っている。

警察は取り締まりを強化

 「特定原付」の電動キックボードは、道路交通法などの法令で次のようなルールを遵守しなければならないとされている。違反者には罰則もある。

・車道の左側端を通行する
・最高時速6km以下に設定できるなどさらに厳しい基準を満たしている車体で、道路標識などで許可されている場所であれば、例外的に歩道の通行も可能だが、歩道中央から車道寄りないし自転車レーンを走り、歩行者の妨げとなるときは必ず一時停止する
・車道で停車車両の前方に割り込んだり、その前を横切ったりするのはNG
・車両進入禁止場所の通行や一方通行道路の逆行、横断禁止場所での横断、転回禁止場所での転回はNG
・車道通行中は車両用の信号表示に従い、交差点での右折時には二段階右折
・横断歩道で横断している歩行者がいたら横断歩道や停止線の手前で一時停止するほか、一時停止場所でも必ず一時停止する
・携帯電話の使用など「ながら運転」や飲酒運転、2人乗り、駐禁場所での放置駐車はNG
・ナンバープレートと自賠責保険が必須

 警察はこうしたルールや危険性の周知といった啓蒙活動を行うとともに、取り締まりを強化する方針だ。現に規制緩和後、交通違反による検挙件数は今年5月末までで2万件超に上った。通行区分違反と信号無視が突出して多く、飲酒運転も目立つ。

 驚くのは、警視庁が7月5日夜半から6日未明にかけ、都内で一斉検問を行ったところ、飲酒運転で検挙された12人のうち実に5人が電動キックボードの利用者だったことだ。彼らによる交通事故の2割が飲酒運転を原因とするものだという。悪質な違反者には、今後も積極的に罰則を適用していく必要があるだろう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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