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「ONE PIECE」「キン肉マン」「北斗の拳」… 人気作の再アニメ化発表 続く理由は

河村鳴紘サブカル専門ライター
新アニメ「北斗の拳」の公式サイト

 テレビでは追いきれないほど多くの作品が放送され、映画でも高い興収がニュースになるなど、近年アニメが絶好調です。そして「北斗の拳」や「キン肉マン」などかつての人気アニメが、新たに制作されると発表。「ONE PIECE」に至っては、アニメが放送中にもかかわらず、別のスタジオで原作に沿って第1話から新たに制作、ネットフリックスで配信されることも話題になりました。なぜ人気アニメが、再び新たにアニメ化される発表が続いているのでしょうか。

◇アニメのタイトル数「高止まり」

 人気アニメを再び新たに作り直す企画は、以前からありました。「ドラゴンボール」や「HUNTER×HUNTER」「ジョジョの奇妙な冒険」「キャプテン翼」「宇宙戦艦ヤマト」「鋼の錬金術師」「銀河英雄伝説」など挙げていけばキリがありません。とはいえ、近年はその流れが強いのですが、そこには三つの理由が考えられます。

 まず、ここ10年でアニメの作品数が増加していることで、その中でインパクトを出せるということ。日本動画協会の報告書「アニメ産業レポート2022」によると、テレビアニメの年間の新規タイトル数は200作品以上で、ほぼ常態化しています。新型コロナウイルスの感染拡大で作品数が落ちたものの、継続しているアニメ作品を含めると300作品超で「高止まり」です。またアニメ映画のタイトル数も増加傾向にあります。

 そしてアニメのオリジナルものは、宮崎駿監督や新海誠監督などの知名度のあるクリエーターの作品を除けば、総じて苦戦傾向にあり、今は手を出しづらいのです。人気のマンガや小説は総じて手を付けられているわけで、これという原作がない。そこで、かつての人気作を、今の技術で再度アニメ化する流れになっているのではないでしょうか。制作側も自分たちが子供のころに熱狂した作品を、今の時代に合わせて自らの手でよみがえらせることに「喜び」を感じることもあるでしょう。かつての名作は知名度は申し分なく、投資する側としても企画にゴーサインを出しやすいのです。

◇ネット配信と海外市場がカギ

 二つ目は、アニメビジネスの変化です。今やDVDやブルーレイ・ディスクの販売は落ち込んでおり、ネット配信と海外市場がカギを握ります。国内のアニメ配信だけでも、この10年で売上高は約10倍に増加しています。国内ではなく、海外で人気となるケースもあります。日本でそこそこの人気なのにシリーズを重ねる作品は、海外での人気があってこそです。

2022年に米ニューヨークで開催されたアニメイベント「Anime NYC」
2022年に米ニューヨークで開催されたアニメイベント「Anime NYC」写真:ロイター/アフロ

 そしてアニメの1話あたりの製作費ですが、かつては「1500万円」という数値がよく挙げられていましたが、今や関係者らに聞く限りでは制作費がアップしているといい、「作品にもよるが、今は3000万円以上」という額が出てきます。ビッグタイトルでは瞬間的にその倍以上のコストを投じるケースもあるそうです。

 つまりそれだけのコストをかけても、今や、ネット配信などの収益で、回収できる見通しがあるということ。反面、コストがアップするならリスクヘッジは必要で、失敗の可能性を減らしてできるだけ回避したい……となるわけです。そのため、最初から人気が一定数は確保できる人気作の新アニメ化は魅力的なのです

◇日本の少子高齢化

 三つ目は、それらの作品が一定の成果を出しつつ、他の妙案がないことでしょう。昨年は、アニメ映画「THE FIRST SLAM DUNK」が興収150億円以上を記録する大成功を収め、あらためてかつての人気作のパワーと可能性を証明しました。さらに、アジアなどの海外でもヒットした点も、今のアニメビジネスには心強いでしょう。

 今や、エンタメビジネスは、人気コンテンツの強化に余念がありません。大手出版社は近年、有力作品の数年先を見越して、コンテンツの顧客層を広げて相乗効果が狙える施策を実施して成果を出しています。アニメ化・ゲーム化だけでなく、練られたグッズの発売、企画展、周年イベントなどが絶え間なく展開され、世界展開も織り込みます。その結果、強いコンテンツはより強くなるのです。そこには知名度のある作品(IP)を徹底的に有効活用する考えがあり、人気作の新アニメ化もその路線に沿っているわけです。

 そして日本だけのビジネスが厳しいのは、加速する少子高齢化です。人口が減るということはファンも減るということで、将来性を考えるともはやアニメのビジネスは、海外ありきにならざるを得ません。その先は、海外に受け入れられることが優先される……という流れになるのは、誰もが思うところでしょう。その先は、アニメ市場の二極化がより進むという声もあるのです。

 もちろん従来のような、一部の層をターゲットにしたアニメも、ある程度は生き残るでしょうが、「イス」の奪い合いは確実に起きるわけでして、ビジネス的には厳しくならざるを得ません。作品の出来・評価の前に、投資のリスクに相応しいリターンがあるかを問われてしまうと……。最終的に、アニメファンが望まない「企画の見送り」ことも起きうるのではないでしょうか。

 現在のアニメで、豊富な作品が存在するのは「多様化」とも言えますが、繰り返しになりますがアニメとてビジネスです。制作コストの増加、作品数の多さに対する制作スタジオ不足を考えると、いつ淘汰(とうた)が起きてもおかしくないといいう声をきくこともあります。とはいえ、人気作の再アニメ化は現状、ビジネス面での目立った弱点がなく、関係者は「今後も増えるだろう」と口をそろえています。今後が気になるところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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