シアトルで120年来の大雨 その原因「大気の河」とは
マイクロソフト、アマゾン、スターバックス…。世界の名だたる大企業の本社が立ち並ぶアメリカ西海岸・シアトルは、雨が多いことでも知られています。
秋から春先にかけて連日のように雨が降り、緑も豊富なことから、シアトルのあるワシントン州は「エバーグリーン州」とニックネームがつけられているほどです。
このようにただですら雨の多いシアトルですが、今年はさらに多くの雨が降っています。
120年来の大雨
気象局によると今年2月と3月の総降水量は約400ミリに達し、観測が始まった120年来で最も多い記録となりました。また、雨季の始まった去年の10月から今月までの降水量は1,100mmにおよび、史上4番目の記録となっています。
大雨が原因で下水施設が壊れ、汚水がそのまま湾に流れこんだり、気温低下によって花の開花が遅れるなど影響が出ています。
ワシントン州周辺でも天気が荒れていて、オレゴン州では1年分の降水がたった5.5ヶ月で降り、土砂崩れが相次いでいます。
またカリフォルニアでは記録的な大雨や大雪によって、5年に渡って続いた大干ばつが一気に改善されました。しかし一方で、農地が泥地化し、細菌が増殖するといった問題も発生しています。
大雨の理由
記録的な雨の理由は、「大気の河(Atmospheric River)」がしばしば西海岸に上陸したことにあります。
「大気の河」とは熱帯地方から流れ込む、長さ数千キロ、幅2~300キロにわたる水蒸気の帯のことです。ハワイのほうから流れ込むので、「パイナップル・エクスプレス」とも呼ばれます。
流れ込む水量は世界最大の河川であるアマゾン川のそれよりも多く、低気圧とともにアメリカやカナダの西海岸に大雨をもたらしては、洪水の原因となります。
上の図は去年10月から今年3月にかけて、アメリカ西部に流れ込んだ「大気の河」を描いたものです。紫や赤色の線が特に強いもので、特にワシントン州・オレゴン州といった北西部に上陸していたのが分かります。
コーヒー文化に影響を与えた冬の曇天
ところでシアトルと言えば、スターバックスやタリーズコーヒーといった有名コーヒー店の本拠地であり、コーヒーの大消費地帯です。実はシアトルでコーヒー文化が広がったのも、連日の雨によって気分が滅入ってしまいやすいことから、人々がカフェイン豊富で温かい飲み物を欲したからだとも言われています。