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阪神6位・富田 蓮の快投から世界一に!!――第4回U-23ワールドカップ

横尾弘一野球ジャーナリスト
U-23日本代表のエースとして金メダルを手にした富田 蓮(写真=彭善豪)。

 10月20日のドラフト会議で阪神からドラフト6位指名された左腕の富田 蓮(三菱自動車岡崎)をはじめ、社会人の若手選手で編成されたU-23日本代表は、第4回U-23ワールドカップで見事に優勝を果たした。

 6チームずつ2組に分かれてリーグ戦を実施したオープニング・ラウンドでは、ホストのチャイニーズ・タイペイに敗れて4勝1敗。それでも、グループAの2位でスーパー・ラウンドに進むと、富田が6回を4安打8奪三振で1失点に抑え、オーストラリアを2対1で下す。さらに、混戦のグループBで5戦全勝した韓国にも2対1で競り勝って首位に立ち、勝ったほうが決勝進出というメキシコ戦も4対2でものにする。

 そうして迎えた決勝は、ともに通算7勝1敗の韓国との対戦だ。もちろん、先発のマウンドは富田である。ドラフト当日のオーストラリア戦前には、「試合かドラフトか、どちらの緊張かわからないくらい緊張しています」と苦笑していたものの、いざマウンドに立てば緩急自在の好投でエースらしさを見せた。ドラフト会議は試合後間もなく始まったが、富田はドーピング検査のクジに当たってしまい、宿舎に戻るチームとは別行動になる。そうして、検査中に指名を知り、宿舎でチームメイトから祝福された。

阪神6位の富田 蓮は、台湾でドーピング検査中に指名される

「世界一を手にして阪神入りを」

 そう決意した富田は、「何としても金メダルを持って帰国したい」と満を持して決戦のマウンドに向かった。

 2年夏の岐阜県大会準優勝が最高で、甲子園には届かなかった大垣商高から三菱自動車岡崎へ入社して3年目、ドラフト指名が解禁になった今季の富田は、投手陣の軸としてキレのあるボールを投げ込んでいるという印象だった。だが、都市対抗東海二次予選を勝ち抜くことができず、プロ球団のスカウトにアピールする場を失ったかと思われた。

世界の舞台で急成長し、阪神の先発ローテを目指す

 それでも、U-23日本代表に選出されると、渡台直前に実施されたテストマッチから先発の一番手として起用され、テンポのいい投球で信頼を得る。そして、10月14日のオープニング・ラウンド第1戦で先発を任され、ドイツを相手に3回を無安打4奪三振でチームを波に乗せる。

ドラフト候補の左腕が好投してドイツに快勝――第4回U-23ワールドカップ

 今後の課題と思われた安定感ある投球を、ドラフト直前に世界の舞台で披露するとは。富田の急成長は見事だった。

 決勝で韓国の先発を務めた李祥榮は、2019年のドラフト1巡指名でLGツインズ入りした左腕。昨シーズンはプロ初勝利を挙げ、将来を見据えて今年から兵役に就いている(尚武という軍隊のチームで二軍リーグに参加している)。193cm・88kgと恵まれた体格で、175cm・79kgの富田よりふた回り大きく見えるが、マウンドでのパフォーマンスは富田が上だった。

 試合前から霧雨が降っていたこともあり、富田は立ち上がりから制球を重視した投球を展開。1回表を11球で3者凡退に打ち取ると、その裏の日本は二死一塁から四番の相羽寛太(ヤマハ)がライト線に鋭く打ち返す。一塁走者の平野友都(西部ガス)は一気に本塁を突くも、間一髪タッチアウトで先制はならず。だが、富田は2回表も四番の宋承桓(斗山ベアーズ)を空振り三振に打ち取るなど、テンポよく3つのアウトを取る。

 この試合は小刻みな継投で勝利を目指すため、富田は2回でお役御免。ただ、富田が作ったいい流れに乗り、3回裏には2死球でもらったチャンスに丸山壮史(ENEOS)が会心の3ラン本塁打を放ち、そのリードを5人のリレーで守り抜いた。

 三菱自動車岡崎では中野拓夢の後輩でもある富田は、「まずは一軍を目指し、先発ローテーションに入れるように頑張りたい」と決意を語る。世界一を手にした左腕の加入は、阪神にとっても吉兆ではないか。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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