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阪神6位の富田 蓮は、台湾でドーピング検査中に指名される

横尾弘一野球ジャーナリスト
ドーピング検査を終え、宿舎に戻った阪神6位の富田 蓮投手(写真提供=李淑芳)。

 台湾で第4回U-23ワールドカップに出場しているU-23日本代表は、23名の社会人選手で編成された。その中には、大卒2年目の早生まれが4名、高卒4年目の丸山竜治捕手(Honda熊本)、高卒3年目のサウスポー・富田 蓮(三菱自動車岡崎)と、ドラフト指名が解禁になっている6名も含まれていた。

 中でも富田は、今季は春先からエース格として先発を担い、キレのあるボールで結果を残していた。当然、ドラフト候補としてプロ球団からもマークされたが、都市対抗東海二次予選では惜しくも敗退。第一代表のヤマハに補強されたものの一回戦で敗れて登板がなく、アピールするチャンスを失った。

 9月の日本選手権東海最終予選でもチームを勝たせることができなかったが、U-23日本代表に選出される。チームに合流すると、経験を買われて先発の軸に指名され、東京ガスとのテストマッチでも好投して渡台。10月13日に大会が開幕すると、翌14日のドイツとのオープニング・ラウンド第1戦で先発を任され、3回を無安打、4奪三振1四球とまずまずの内容で勝利に貢献する。

ドラフト候補の左腕が好投してドイツに快勝――第4回U-23ワールドカップ

 そして、17日には2勝1敗で並ぶコロンビアとの第4戦でも先発。スーパー・ラウンド進出のかかった大事な試合でも緩急を駆使した投球が冴え、メジャー・リーグ傘下で腕を磨くコロンビアの打線を5回3安打、8奪三振1四球で1失点(自責点はゼロ)に抑えた。

 さらに、ドラフト会議当日の10月20日は、中2日でスーパー・ラウンド第1戦に先発。オーストラリアを相手に、左右のコーナーいっぱいを突く投球で5回まで2安打無失点と安定した投球を続ける。6回に連打から1点を失うも、その回を投げ切って2対1で勝利。富田自身も大会2勝目を挙げると、クジ引きでドーピング検査に当たり、3名のチームメイトとともに会場の天母棒球場に残される。そうして、まさにドーピング検査中だった午後5時53分(現地時間)に、阪神が6位で指名する。

「阪神には、三菱自動車岡崎でも一緒だった中野拓夢さんがいるので心強いですし、目指していたプロの扉を開くことができて本当に嬉しい」

 岡田彰布監督が再び就任し、優勝を狙うチームに加わる若き左腕は、23日にも先発登板が予想される。その試合が、世界一をかけた決勝だったら言うことはない。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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